『死霊』(閑人亭日録)

 埴谷雄高『死霊』講談社一九七六年四月二十二日 第一刷発行を少し再読。「自序」にこんな文。

《 私はついにせめて一つの観念小説なりともでっち上げねばならぬと思い至った。やけのやんぱちである。けれども、その無謀な試みの如何に嬴弱なことであるだろう。 》 3頁

 ここで”嬴”(えい)に出合うとは。審美書院から明治四十一年に出版された美術本『東瀛珠光』で初めて知った漢字”瀛”。

 雨は止んだが寒い一日。意気込んだ読書もなんか気持ちが萎えて本を閉じる。こういう日もある(と納得させる)。薩摩芋(シルク・スイート)を買ってくる。土鍋に入れ、ガス台に載せてとろ火で焼き芋を作る。心が和む。