『東瀛珠光 三』(閑人亭日録)

 正倉院御物で宮内省御蔵版『東瀛珠光 三』審美書院 明治四十一年十一月三十日發行収録、『第百七十 緑地彩色繪箱及粉地花形方几 其一 側面 其二 箱蓋正面』、「其二 箱蓋正面」の彩色木版を鑑賞。いつ見ても素晴らしい色彩、デザインセンスだ。一千年あまり前に制作されたとはとても思えない。今でも立派に通用する。今どきの斬新、鮮烈なデザインは、鮮度だけが重要なのだろう。ほとんどのものは「ああ、あったねえ」と回顧されるのみ。古臭くならないもの=作品を見い出すために古い美術本に掲載されている古典作品を鑑賞する。百年あまり前に選ばれた古典作品は、百年経つと評価は変わっているのか、どうか。明治後半の國華社と審美書院の美術本の作品を見ると、今もって新鮮な驚きを上げさせる多くの作品に出合う。眼福。温故知新。けれども明治後半以降の美術作品には、新鮮な驚きを与える作品がじつに少ない。西洋の流行、風潮に引き摺られている美術作品のなんと多いことか。それを憂うと、去年案出した「JOMON=縄文」の意図する、生(なま)の自然の中での生々しい(瑞々しい)経験がいかに重要かを痛感する。