『死霊 七章《最後の審判》』五(閑人亭日録)

《 あっは、換言すれば、俺は虚とともにつねにおり、虚は俺とともにつねにいると先程いったが、おお、いいかな、しかしまた、「虚」は、俺が「虚から出現せしめた」ところの嘗てのお前達の「正」といまのお前達の「負」とやがて霊妙にくる「非」の宇宙の「すべてのすべて」にわたって、それら「とも」にもまたつねにいるのだ! 》 139頁

《 いいかな、お前達の「亡霊宇宙」が、強靭堅固な過酷な縛り手である核力、電磁力、変異力、重力という四つの枠から解き放たれただけなのに対して、つぎの「自在宇宙」は、あっは、あらゆる「すべてのすべて」の宇宙に欠くべからざる基本的な当然枠と見なされつづけてきたところの「時間」と「空間」の絶対枠からさえもまた決定的に解き放たれたところの宇宙なのだ! 》 140頁

《 ぷふい! 結するところ、「時空」こそは、いいかな、この俺によってのみ取り除かれねばならぬのだ。 》 140頁

《 いいかな、「虚から何ものをもついに創造し得なくなったとしたら」、あっは、この「すべてのすべて」の創造者たるこの俺にこそ、俺の唯一無二の伴侶たる「虚」のみが最終決定的な「最後の審判」をこそ下すことになるのだ。 141頁

 埴谷雄高『死霊 七章《最後の審判》』講談社 一九八四年一一月二六日 第一刷発行を読了。究極の・・・選択か