再読『内田魯庵山脈』六(閑人亭日録)

 山口昌男内田魯庵山脈 〈失われた日本人〉発掘』晶文社2001年初版、「II 魯庵の星座」、「18 地方を結ぶ「いもづる」ネットワーク」を読んだ。

《  この号の「趣味往来」にはにぎにぎしく同人の投書を掲載している。(中略)

  二年や三年で趣味の真味が判つたら、片腹どころか、両腹が痛い。(中略)自分も日本銀行を実家に持ちたいと、思ふ時もあるが、金で買はれぬ味ひのあるのを 知るには、矢張り貧乏がいヽらしい。 》 293頁上段

《 日本社会はタテ社会型と理論化する向きもあるが、この『いもづる』を見ていると、ヨコ型の可能性が示されて興趣尽きることがない。行き詰まりにきている日本社会の 未来図を見る想いがする。 》 296頁上段

 「19 「いもづる」に集まった人びと」を読んだ。

《 斎藤(昌三)もまた「”見えない知”の文化の演出家にして巨匠」というべきであったような気がする。淡島寒月も見える人だけに見える巨匠であり、魯庵もまた、 半面を可視的な世界に向け、他の半面を不可視の世界に身を預けたために、後の世の文学研究者にはほとんど見えない巨匠になってしまった。 》 316頁下段

《 この「いもづる」に集まった知がなぜ不可視になったか。それは一つに、このネットワークが、しいて学問・芸術を装わなかったからであった。例えばこの頃までに 柳田民俗学は、大学の学問にはなっていなかったが、地方の知識層を組織してしごくまじめな集団を組織することに成功しつつあった。「いもづる」に集まった人々は、 既に、似たようなことについて触れても、民族誌をこつこつとまとめあげている人にはただの好事家としか映らなかった。従って戦後の民俗学の興隆期にもまるで 顧みられなかった。 》 322頁上段~下段

 講談社文芸文庫を眺めて、ああ、これ読みたいなあと見ていたら、内田魯庵魯庵日記』1998年初版。解説は山口昌男。すっかり忘れている。

 昨日リンクしたヤフオクゴジラ映画ポスターの落札価格、2,410,000円。正月一番の微苦笑。
  https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/b436783866
 午後、年賀状を寄越した福岡在住の絵描き久原大河君に久々の電話(初めてかな)。昔と変わらず弱音を吐くので励ます。ネットを見て、と言うのでヤフー検索。 なんとトップページに拙文いや、拙者の推薦文「才難は、この若者に降りかかった」。
  http://web.thn.jp/kbi/taiga.htm
 まったくノーテンキな文章だ。でも、今でも通用するようだ。井川遥グンゼの大きなポスターは我が家に秘蔵してあるし(書いちゃ秘蔵じゃないわ)。 「井川遥 グンゼ ポスター」で検索したら、トップに出てきた。知人の店でただでもらった。

 ネット、うろうろ。

《 みなさん、元日はどう過ごしましたか。僕は昔好きだった女の子が前澤友作氏から100万円もらおうとしているのを見つけました。 》 すなば
  https://twitter.com/comebackmypoem/status/1212533928143151104

《 雑に言うと、「アカデミズムは新しい芸術を生み出さなかった」「前衛は常に新しく価値のある芸術である」などの議論に対して「その前提は疑ってみる必要が あるんじゃないっすか?」とやる人が出始めたのがおおむね80年代ごろで、今ではその素朴な進歩史観の妥当性がかなり疑われているという段階です。 》 松下哲也
  https://twitter.com/pinetree1981/status/1212562610303819776

《  「(招待客の名簿は)個人情報ですから、残っていることで流出する危険性がある」
  こんなことを一国の首相が言うのは、明らかに問題。
  「名簿一つも適切に管理できず流出させてしまう危険があるというのか、その行政機関に、私たちは膨大な個人情報を預けてるんだぞ、ふざけるな」と怒るべき。 》  上西充子
  https://twitter.com/mu0283/status/1212529562577334272

《 「安倍総理個人を守るために、政府そのものが壊れている。こういう事態を決して許すわけにはいきません」 》 上西充子
  https://twitter.com/mu0283/status/1212664270980292608

《  田村智子議員
  マスコミの中にも「いつまでやってるんだ」と言ってくる人が出てきた。しかし私は問いたい「貴方は、今のように目の前で民主主義が崩れているのを、 それでいいんだと終わらせることができるのか」と。 》 emil
  https://twitter.com/emil418/status/1212653460325163008

《 杉良太郎さんの炊き出しに関する名フレーズ「売名ですが、それが何か?」は有名だが、今回加わったフレーズがある。「私はこれまで、 これだけのことをやってきました。あなた、私がやってきたことを全部やってから、同じ質問をしてくれますか?」だ。記者は二の句が継げなかったという。 有言実行の人! 》 立川談四楼
  https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1212569999497281536

《  仮面ライダーストロング・ゼロ

  酒気帯びで免停 》 猟奇の鉄人
  https://twitter.com/kashibaTIM/status/1212617521146126337

再読『内田魯庵山脈』五(閑人亭日録)

 山口昌男内田魯庵山脈 〈失われた日本人〉発掘』晶文社2001年初版、「15 本と物への執着の話──沼波瓊音(ぬなみ けいおん)」を読んだ。

《 この文章で取り上げられているもう一方の人物岩本素白は、(中略)近世随筆文学の大家であるということは知っていたが、それ以上のことは知らなかった。(中略) こんな凄い文章を書く人物を前に一年もの間、世間話しかしなかった自分は何て馬鹿だったのか悔やまれてならなかった。 》 242-243頁

 本棚には二冊。『東海道品川宿ウェッジ文庫2007年2刷と『白湯のような話』ちくま文庫2014年初版。読みたい本が増えてゆく。

 「16 「天下未出の珍書」をめぐって──井上通泰」を読んだ。先の章でも出ていた未知の漢字、操觚(そうこ)。詩文を作ること。文筆に従事すること。操觚界 (そうこかい)とは、文筆に従事する人々の社会。明治時代にはこんな漢字が普通に使われていた。253頁上段。

 「17 図書の通人の交わり──市島春城」を読んだ。ここで引用されている内田魯庵の文章には知らない漢字がいくつも。

  有繋=さすが。272頁下段。「流石」は知っていたが。
  壮泉四十の銭范=中国古代の貨幣のようだ。272頁下段。銭”范”は銭”笵”が正しいみたい。
  華冑=かちゅう。高い身分の家柄。272頁下段。
  恭謙=きょうけん。慎み深く、へりくだること。272頁下段。
  較もすれば=ややもすれば。273頁上段。

  頴才=えいさい。すぐれてかしこい。273頁下段。
  心窃に=こころひそかに。273頁下段。
  巨擘=きょはく。同類の中で特にすぐれた人。277頁下段。

 「I 魯庵の水脈」を読了。「II 魯庵の星座」へつづく。

 左のスピーカーから音が出ない。接続部を抜き差ししたが、音は出ない。まさかと思い、LPレコードをかける。おお、鮮明な音。てことはCDプレイヤーが故障。 七年ほど使ってきた。最近再生が時々おかしかった。寿命か。そのおかげでレコードをかける。気持ちよい音だ。
 きょうは街に人だかり。駐車場は満車。
 昔貼っていたリンク先をクリック。多くが消失。亡くなったらしい人も。ネット遺産あるいは廃墟。光陰矢の如し。往時茫々。

 ネット、うろうろ。

《 当時物!【東宝 水爆大怪獣映画 ゴジラ 立看 ポスター】原作 香山滋 監督 本多猪四郎  》 ヤフーオークション
  https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/b436783866

《 2020年代はこれ系の照明が増えることに期待。青空だけでなく夕空や月明りも人工的に再現して、採光が乏しい部屋の居住性が高まれば不動産価格にも インパクトありそう 』 小口貴宏 / EngadgetJP
  https://twitter.com/TKoguchi787/status/1212349170217959425

《 元アル中の素朴な所感だが、これはアル中の顔。 》 津原泰水=やすみ
  https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1212477566977576960

《 全ての汚職はアベに繋がる 》

再読『内田魯庵山脈』四(閑人亭日録)

 山口昌男内田魯庵山脈 〈失われた日本人〉発掘』晶文社2001年初版、「12 労働運動と銀座・箱館屋の頃──横山源之助」「13 ヤマトノフになった日本人── 橘耕斎」「14 現代と背馳せよ──大槻磐渓・如電・文彦」を読んだ。

 年明け最初の鑑賞は北一明の耀変油滴花生。雄渾重厚なこれは著作のどこにも掲載されていないが、代表作の一つだと思う。四十年余前の作品。鮮烈。
 午後から夜、windows10への以移行を手助けを借りて実行。えらく時間を食う。ブログの更新も遅れる。ふう。

 ネット、うろうろ。

《 また画像を忘れていた 》 N・Mika
  https://twitter.com/1027historial/status/1211251568365826048

《 ここから今年はtrichotomy論に進んで大分考えが発展した。一方で近藤和敬氏なども内在の哲学で著書をまとめたし、今年は思想系の書物はかなり彩り豊かだった ようにも感じる。ただ主客二元論やその相関性と、内在/外在の議論は、先にその二種のバイナリーを結びつけてしまうとポストモダンと同じになる 》 清水高志
  https://twitter.com/omnivalence/status/1211835299292008453

 続く展開がじつに興味深い。が、当然ながら理解まではゆかない。

《 【TLダジャレ】いきなりフケーキ。カルロス・GONE。回文 鱚も烏賊も貝も好き。調子がクルーニー。未読菩薩。2党を追う者1党も得ず。イメルダ昭恵。 歴史美容整形主義者。高飛車唯我独尊老人。不答弁書。官邸忖度過去官僚。患忘超汗。山口敬之氏は無罪と閣議決定。秋元司議員は野党と閣議決定。呼吸税。 》  立川談四楼
  https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1211851541621047296

《  桜問題を報じたメディアの多くが結局官邸には飼いならされたということですね。幹部達はなぜそこまでして会食に付き合ってしまうのか? このままでは現場記者にやる気があっても世間からは共犯扱いされてしまう。
  その点東京新聞毎日新聞は見事。他社も負けじと忖度の呪縛から逃れてほしいですね。 》 凡人エリック
  https://twitter.com/No_Zey_2020/status/1211657601454243840

《 大晦日ゴーンゴーンと除夜の鐘 》 寮美千子
  https://twitter.com/ryomichico/status/1211950456093593600

《 今年の課題図書はトーマス.マン『魔の山』に決定 》 「風間サチコの窓外の黒化粧」
  http://kazamasachiko.com/?p=9040

  再読したくなった。

《 芸術は、“社会”と対話する、というものではない。芸術は“生命“と対話をするものだ。というのが、28歳で初めて芸術についての本を書いてから、 今に至るまで一貫している自分の考え。今年も、その想いを強くした。 》 布施英利(ふせ ひでと)
  https://twitter.com/fusehideto/status/1211858742930591745

《 日本の造形文化の伝統はアートと相性が悪いかもしれない / 松下哲也 》 note
  https://note.com/pinetree1981/n/n00aa2aa8949c

《  賄賂を中国からもらうのは
  売国ではないという
  閣議決定がそろそろ出るのかな 》

再読『内田魯庵山脈』三(閑人亭日録)

 山口昌男内田魯庵山脈 〈失われた日本人〉発掘』晶文社2001年初版、「9 江戸百科全書派の美校教授──竹内久一」を読んだ。「10 三村竹清の日記」を読んだ。

《 本章の記述はあくまでも魯庵の同時代を見る眼という視点、そして魯庵の眼の中に飛び込んできた同時代人を射程に収めるという執筆の意図は崩さないつもりである。  》 171頁上段

 「11 古本屋の二階で」を読んだ。

《 文行堂は上野松坂屋より一丁ほど離れたところに現存する。(中略)横尾雄之助は、新聞記者が在職中一、二冊本を出版しただけで停年後に大学教授に簡単になれる 今日の風潮の中でならば、楽に教授たるべき人材であった。しかし魯庵同様それを特に望む人物でもなかったことは確かである。 》 188頁下段

《 これは腹立たしいことだが、(久保田)米僊、米斎と二代続いた画家、大文化史家の死後、蔵書がばら売りにされる、当時も今も変わらぬ日本の芸術文化政策の貧困さ、 行政の貧しさである。 》 189頁上段

 1985年11月、新聞記事で小説家小泉喜美子さんの訃報に接した。実家へ赴き、小泉さんからの手紙などを見せて、ご母堂の案内で小泉さんの終の棲家のマンションへ。 形見分けとして残っていた蔵書から七冊をいただいた。森茉莉『父の帽子』筑摩書房1979年第5刷、窪田般彌『幻想の海辺』河出書房新社1972年初版そしてハヤカワ・ ポケット・ミステリを五冊。『318 囁く死体/W・P・マッギヴァーン』1957年、『349 魔性の眼/ボアロー ナルスジャック』1957年、『807 逃げる男のバラード/ シェリイ・スミス』1963年、『880 わが王国は霊柩車/クレイグ・ライス』1965年、『1314 すりかわった女/ボアロー ナルスジャック』1978年。

《 趣味家としての魯庵はあらゆる分野において完成していた。蒐集というものは「人に先んじて、誰も気のつかない時に地みちに蒐めなくては」駄目だと話したことがある 。 》 196頁上段

 うんうん。

 東京新聞第一面の記事は「満男もつらいよ」「「寅さん」第1作の初代 50歳に」。記事から。

《 第一作で赤ん坊の満男を演じたのは下町の和菓子店の男の子だった。 》

 その男の子(赤ん坊)のその後。

《 高校卒業後、「ソニーに入りたい」という夢をかなえて充実したサラリーマン生活を送った。しかし数年後、父徳保(とくやす)さんが六十三歳で他界。明治五年創業の 店の歴史を絶やすまいと、実家を継いだ。くしくも寅さんの実家「くるまや」と同じく団子が名物の和菓子店だった。 》

 六十九歳の私は人生をちょっと振り返った。大学を卒業し、一年間だけという約束で自宅へ帰った。その半年後の1973年10月1日朝、父は心筋梗塞で五十三歳で急逝。 十人ほどの女性店員を抱え、東京で仲間とマーケティングの会社を興すことを断念。一週間後に店を再開。仲間は「お前はこの店をやるような人間じゃない」と忠告され、 ひどく落ち込む。私自身よくわかっている。しかし、やるしかない。父は十八年間店を営んだ。私は凝った和菓子を作る技術など持ち合わせない。 商品を絞って団子、大福、季節のおはぎ、柏餅とラーメン(!)に。それからいなり寿司やおにぎりなど、客の需要を感知して商品に。一般には「団子とラーメンの店」。 不本意で店を継いだので、父の十八年間を越えること、売上げを右肩上がりにして閉店することを心に決め、それを実現。ここが潮時と直感して1997年1月15日閉店。 二十年経っても「美味しかった」と懐かしまれる。1997年6月1日、隣町の駿東郡清水町伏見に買った土地にK美術館を建設、開館。「団子屋が骨董屋を始めた」などと 言われた。
 その間の1980年、自宅兼店舗を改築。1981年、お墓を改築。男がなすべきことはやったと思った。次の目標を、味戸ケイコさんの常設美術館を建てることに決める。 文通だけの味戸さんに十五年後に美術館を建てたいと手紙で伝える。予定から二年遅れて開館。ここが潮時、2012年12月25日閉館。
  http://web.thn.jp/kbi/
 そして母の介護。2019年7月7日、母他界。一人の大晦日を迎える。
 昼、インスタントラーメンに先だって白砂勝敏さんから恵まれた自家製の燻製肉を乗せる。美味。桜で十時間燻製とのこと。
 晩、夕方友だちからいただいた生蕎麦を茹でる。

 ネット、うろうろ。

《 よく行く和食屋Aの隣には、いつも行列ができている店Bがあって、Bさんいわく「個人的に美味しいと思うものはこれじゃないけど、お客さんが食べたい味に ひたすら合わせてきた。Aさんは自分が美味しいと思うものをお客さんに出すから儲からないんだよ」とのこと。僕はこれからもAさんタイプで。 》 道尾秀介
  https://twitter.com/michioshusuke/status/1211606736576008193

 私の店はB。

《  独学が得意な人の特徴はたぶん、

  ・自発的な好奇心を原動力に動ける
  ・文章を読める
  ・「理解できない」という自分の状況に耐えて学習を続けられる。結果をすぐ求めない

  といったところで、頭の良さに関して必要な素質は「文章を読める」ことだけかなと 》 Cubbit
  https://twitter.com/cubbit2/status/1211194241428254720

《 吉永小百合さんは言う。「しらんぷりしてていい問題ではない。どうしても基地が必要と言うなら、沖縄の痛みを他の県(本土)も引き受けないといけない。 それが嫌だったら、沖縄にもつらい思いをさせてはいけない」と。真っ当な意見だと思う。そして辺野古の海を讃え、「(埋め立て)は本当に悲しい」とも。 》 立川談四楼
  https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1211491197140647937

《 村上隆ドラえもんの作品、ハイブランドのコラボものグッズみたいだと思った。 》 千葉雅也
  https://twitter.com/masayachiba/status/1211601274283552770

《 2020年が来なくなってから一週間が過ぎようとしている。現在、12月37日である。なぜこうなったのかわからないが、どうも全世界がバグってしまって 新年が来なくなってしまったらしい。人々の「ずっと2019年でいたい」みたいな願いが時空を歪ませたのか? われわれは永遠の年末に閉じ込められた 》 まくるめ
  https://twitter.com/MAMAAAAU/status/1211604575636975616

《 「今年は最悪だったな」って、この人たち見ても言える? 》 BuzzFeed
  https://www.buzzfeed.com/jp/philippjahner/scheisstag-1

再読『内田魯庵山脈』二(閑人亭日録)

 山口昌男内田魯庵山脈 〈失われた日本人〉発掘』晶文社2001年初版、「5 蒐集家の筆頭──林若樹」を読んだ。

《 ここで魯庵は(林)若樹を、柳田国男のように、金持ちの道楽息子が骨董品や書籍を土蔵に秘め匿し持って、ときどき取り出してひけらかすというようには見ない。 若樹の蒐集家としての実力、眼識に敬意を払い、そのうえで、その抜群のデザイン感覚を愛(め)でているのである。 》 84頁下段

 『定本 柳田國男集 昭和52年 筑摩書房 月報揃 全31巻別巻5揃』がヤフオクに出ている。
  https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/m381484642

 85頁下段に内田魯庵『獏の舌』からの引用があるので、『獏の舌』ウェッジ文庫2009年初版にあたる。86頁に当該文章。解説で坪内祐三は書いている。

《 それに触れるにはもはや紙数がつきたし、私の解説なんかよりも山口昌男の名著『内田魯庵山脈』(晶文社)を繙いてもらいたい。より深く味わうことができるから。 そして、知識の持つ無用の用の凄さを体感するだろう。 》

 「6 人類学の祖にして趣味の人──坪井正五郎」を読んだ。

《 (弥生時代というのは坪井の命名によるものである) 》 112頁下段

 「7 精神の系譜(ジェネアロジー)を捏造する──フレデリック・スタール」を読んだ。

《 あるいはもし魯庵と会う機会を与えられて、北部ナイジェリアの山中での経験を話すことができたら喜んでくれたのではなかろうかと思う。そうでなくても、私は 坪井正五郎のほかに淡島寒月魯庵に人類学のトーテム的祖先の姿を勝手に見ようと心掛けているのだから、このような精神のジェネアロジー(系譜)を捏造することも 許されようというものであろう。そうでなくても、この程度の遊び心と精神の自由を欠いては魯庵の面白さはわからないと断言・助言しておこう。 》 135頁上段

 「8 神田の玩具博士──清水晴風」を読んだ。

《 魯庵はここで、境界を越える達人としての清水晴風を論じているのである。明治以後のスノビズムの玄人の概念に対して、素人の側から、境界を突破する試みとしての 自らの生き方を対置したといえる。自分が魅かれるものに対して徹底的に付き合うという態度を晴風は貫き、その姿に多くの人が感銘を受けていたのである。 エスタブリッシュとかメジャーの観念は晴風にはまるでなかった。こういう人は我々のまわりからほとんど消えてしまった。 》 139頁上段

《  我々が想い出すのは、林若樹が根岸武香のあと事実上の会長であったが、ついに会長にはならず、合議制で通したという事実である。そして晴風世話人で通したと いうことである。
  そういう点では晴風は、「消えた日本人」の一人であったのかという気がする。つまり本書は近代化の中で消えた粋で知的な日本人の研究ということになるのかも しれない。 》 145頁上段~下段

《 魯庵は一人の人物の死とともに文化および時代にとって不可欠の部分が少しずつ失われていくことを惜しんだのであった。魯庵が感じ取ったのは、時代によっては 一人の人物の死による、その人物が背負っていた代わりのきかない何ものかの消失であった。 》 152頁上段

 朝から野暮用で外出。小雨の街中はひっそり閑。師走の風情はスーパーの正月飾りのみ。不景気だねえ。
 昼、白砂勝敏さんからメール。提案した個展の題を気に入ってくれた。やれやれ。
 午後、マンガ家、故つりたくにこさんのご主人から電話。遅れているけど、正月明けには今年イタリアで出版された彼女の本を持参できる、と。嬉しい知らせ。 平野雅彦氏の紹介記事とウィキペディア
  http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1388.html
  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A4%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%AB%E3%81%93

 ネット、うろうろ。

《 今改めて思うのは、「歳を取ると自由になる」ということ。 》 大野左紀子
  https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1211502094441598977

《 研究は生き物。あるいは糠床。世話をする感じ。でもいうことを聞かない。向こうの都合に合わせて動く必要がある。 》 千葉雅也
  https://twitter.com/masayachiba/status/1211459540895465474

《 女の体は人間の体 /自撮り熟女マキエマキ 》 note
  https://note.com/makiemaki/n/n0b833b7d4f43

《 広いパースペクティブの中でアートを見ていくべきです。どうしても現代美術の関係者・専門家って現代美術業界の判断基準で見ているわけじゃないですか。 「art for art sake」(アートのためのアート)っていうのは、それはそれで、少数のエリート意識に支えられ、強力な島宇宙をつくっている。でもそれだけでは 十分ではないんじゃないか。/ 南條史生が振り返る、森美術館館長としての13年と日本のアートシーン。「それでも現代美術しかない」 》 美術手帖   https://bijutsutecho.com/magazine/interview/21054#.XgXU59RFXSw.twitter

《  「万葉集限定」と言えば聞こえはいいが、実際は「元号は中国古典由来という長く続いた伝統」を安倍晋三氏が国民に何の相談もなく「廃止」した、ということ。 伝統の破壊者。これのどこが「保守」なのか。

  日本由来に固執する態度は、逆に精神的な余裕の無さを浮き彫りにする。 》 山崎 雅弘
  https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1211239440904908800

《 何がイラつくって、我が国の内閣総理大臣がアホだということだ。 》 菅野完の従兄弟の同級生のお兄ちゃんの彼女の先輩の友達
  https://twitter.com/noiepoie/status/1211543158749679616

《  2020年は、
  「あけましておめでとうございます」
  ならぬ
  「アベ辞めましておめでとうございます」と言えますように 》 夢吉
  https://twitter.com/ytokumo/status/1211407783305736193

《 「節子、それ相模湾やない。駿河湾や。」 》 ISHIBASHIH
  https://twitter.com/1484h/status/1211486735663677441

   

再読『内田魯庵山脈』(閑人亭日録)

 山口昌男内田魯庵山脈 〈失われた日本人〉発掘』晶文社2001年初版の再読を始める。「あとがき」から。

《 魯庵がこれらの時代をそれぞれの主題に立ち向かいながら生き、しかもどの時代にも取り込まれることなく自己を実現していった様態を描きたいと思ったのである。 そうした意味で、本書は『「挫折」の昭和史』『「敗者」の精神史』岩波書店と共に、「日本近代史の見えない部分」を描く三部作ともいうべき最後の一冊であるといえる。  》 596頁

 「I 魯庵の水脈」、「1 その始まり」を読んだ。

《 我々の意図するのは、教科書的な意味での日本の近代とやや外れたところに存在した知の原郷というものを訊ねあてることにある。 》 19頁下段

 「2 明治の逸人──西沢仙湖」を読んだ。

《 仙湖と好一対で京から出てきた久保田米僊も根岸派の一人であったから、米僊、(幸堂)得知(こうどう・とくち)、仙湖の三人は極めて近い存在であった。更に、 根岸派に加わらなかったが鶯亭金升は根岸の住人だった。金升は既に触れたように、仙湖を東京に連れてきた人物である。この四人は、今から見ると、消えてしまって 見えなくなっている時代の共通項のようなもので繋がれていたのである。ネットワークを知るのが重要なのは、そうした繋がりを知ることによって、一人一人の人物について の同時代ならびに後代の記述には残されていない事実というものを他の人物の側から投影して浮かび上がらせることができるからである。 》 41頁上段~下段

《 こうした横の繋がりの糸はあちこちに張りめぐらされ、それが遊び、道楽という共通項の上に載っていた。 》 42頁上段

《 従って斎藤昌三は、仙湖を明治文化史研究上の重要人物として捉えようとする。政治家、財界人、軍人、大学教授ら位の高い勲章を貰う人ばかりでなく、道楽に 身を任せて晩年を過ごしたような人物の中にも、時代が鋭く反映されることを斎藤昌三は説いているのである。 》 44頁下段

《 文化の中にはこのような反世界が仕掛けられており、そこに至る脱け道が用意されている。多くの場合、それは苔や黴に蔽われて、人が気づかないように偽装されている 。日本近代の場合、それは藩閥政治の仕掛けた「公(おおやけ)」からやや遠い所に点在していた。 》 49頁下段

 「3 野のアカデミー──集古会」を読んだ。

《 考えてみれば集古会はそのような同好会であったといえる。大学の学問が、当然ながら専門化という過程をたどり、ヒエラルキー化、排除に基づく孤立化という道を たどってきたのは当然の事情であったといえる今日、もう一度始まりに立ち還って考えてみることもときには必要である。 》 59頁下段

《 どうも、私には、日本という歴史的状況の中で、これらすべては、藩閥政府の設定したヒエラルキーが学問の中に持ち込まれた、あるいは大学がそういうヒエラルルキー を前提にしてつくられた結果見えてしかたがないのである。 》 60頁上段

《 とどのつまり、藩閥政府が築き上げようとしている、権力を中央に集め、薩長を中心とした少数の集団が情報を集め、情報そのものも、それを管理する人間たちも、 役に立つ・立たぬの二元的価値を基に階層化しようとする統治機構が生み出すリアリティとは別の、知識・情報を自らの手で生み出し、それらを育て、自ら管理し、 頒ち合いながら作り上げる、今流行の言葉で言えばオルターナティヴ(もう一つの選択)の現実、リアリティともいえるものである。物に支配されるのではなく、物を 通して、自らの抱き持つ潜在的可能性を開発していくこと、それは「文」を通して可能性を開発していく文学の営みと少しも異なるものではない。 》 60-61頁

 「4 和綴の雑誌──『集古』」を読んだ。柳田国男がコテンコテンにやられている。

《 「和綴の本で」というのは『集古』の体裁のことで、ここに洋紙を使わないことについての侮蔑の眼差しがすでに読み取られる。今日私たちには恰好良いと思われること がすべて、柳田にはおぞましいことに思われたらしい。 》 74頁上段~下段

《 それはともかく、官製の西洋崇拝の風潮の中で、通・道楽・趣味といった一見実効性のない動機を戦略として使ってきた「町の学者」のスタイルに嫌悪の情を示したのは 、柳田の「田舎者」コンプレックスからくる態度であった。柳田の「田舎者」コンプレックスは複雑で、逆に田舎出身でも出世コースの頂点を極めれば、江戸前とか何とか 言いながら官製国家の末端にも繋がっていない連中より遥かに上だという優越感がちらついている。柳田には、官製近代日本のヒエラルキーでは遥かに下のはずの江戸の町の 輩が陽気に振る舞っているこの「座」的な雰囲気が、耐え難いものであったことは想像に難くない。こういう人物に限って、初めからヒエラルキーを受け入れて恭順の意を 表しつつ近づいてくる人々には慈愛の眼差しを向けるのである。 》 74-75頁

《 山とか水とか題を出して、これに関する古書・物を提出するのは、江戸の物産会の伝統に立つものであることは既に説いた。集められた品は逸品揃いであった。そのたび に集められた物や古書だけで博物学の博物館が一つずつ建つくらいのものであった。 》 75頁下段

《  おそらく、柳田は定期購読者にしても、あまり気を入れて『集古』を読んだことはないのではなかろうか。そうでなければ、集古会に既に述べたような暴言は 吐けなかったと思われる。(中略)人に賞められるために出すにしては毎月集まる件数は多すぎる。かりにこのような会を今日に持とうとしても、三十年かかって一回持てるか あるいは全く不可能といえる質の高さである。一つ一つ提出される品の背景にある品が属している文脈についての知識を参加者が共有しているなどということは、 今日から考えて夢のような出来事であったのである。 》 76頁下段

 畏るべし集古会。

 ネット、うろうろ。

《  27日に行われた、東電の「フクイチの廃炉に向けた中長期ロードマップの改定」に関する記者会見を視聴した。
  フクイチに関する年内の東電会見は全て終了。
  8月から、東電の会見回数と記者の参加回数をエクセルに入力して数えるようにした。
  8~12月の5ヶ月間の、記者の参加回数がまとまった。 》 春橋哲史(福島第一原発事故は継続中)
  https://twitter.com/haruhasiSF/status/1210764679028473859

《 →続き2
  10回(同23.8%):テレビ朝日
  11回(同26.2%):木野龍逸さん
  13回(同31%):毎日新聞
  17回(同40.5%):河北新報
  19回(同45.2%):IWJ
  21回(同50%):朝日新聞
  24回(同57.1%):東京新聞
  31回’(同73.8%):共同通信
  36回(同85.7%):おしどりマコケンさん
  →続く 》 春橋哲史(福島第一原発事故は継続中)
  https://twitter.com/haruhasiSF/status/1210766042630246401

《  アベノミクスの結果

  MUFG 10,000人
  みずほ 19,000人
  三井住友 5,000人
  損保J 4,000人
  7&i 4,000人
  そごう・西武 1,300人
  日産 12,500人
  東芝 7,000人
  NEC 3,000人
  富士通 2,850人
  シャープ 7,000人
  ソニー 2,000人
  ルネサス 1,000人
  パイオニア 3,000人

  …のリストラ予定

  さて儲かってるのは誰? 》 佐久間敦志
  https://twitter.com/sakumasandazo/status/1210218785824624647

《 スマホは暖かい 》 ゆきちゃん
  https://twitter.com/marinamiries/status/1210656878440505344

『東方綺譚』(閑人亭日録)

 マルグリット・ユルスナール『東方綺譚』白水社1980年初版を読んだ。奇譚という題名どおりの九篇の短篇からなる。酷薄なものが多い。必要なので読んだが、好みでは ない。帯には中村真一郎の推薦文。

《 『東方綺譚』はユルスナール女史の極めて才気に満ちた風変わりな短篇集である。私はそのなかで「源氏の君の最後の恋」という一篇に出会った。それは『源氏物語』 のなかで表題だけあって、内容が一行もない例の奇妙な「雲隠」の巻の奇想溢れる偽作なのである。 》

 その一編で目に留まった箇所。

《 失明して以来、触覚だけがこの世の美しさを感じとる唯一のてだてとなっていて、彼が隠棲しに来たこの地のせっかくの風光ももはや慰めとはならなかった。 それというのも川のせせらぎの音は女の声よりも単調であり、丘の曲線や雲の房(ふさ)なす髪は、目明きには見えるけれども、愛撫するには遠すぎるからであった。 》  95頁

《 ──わたしは死んでゆく、と彼は辛(つら)そうに言った。花や、虫や、星とともに頒(わか)つ運命を嘆きはせぬ。すべてが夢のようにうつろうこの世で、いつまでも 長生きするのは心憂いもの。事物も、人間も、心も、ほろびゆくのをわたしは嘆きはせぬ。 》 102頁

 先だって読んだ吉田篤弘『空ばかり見ていた』文春文庫に、『東方綺譚』からの遠い波動を感じる。

 昨日、味戸ケイコさんから新作絵本、堀田京子・作/味戸ケイコ・絵『ばばちゃんのひとり誕生日』コールサック社2019年初版帯付を恵まれる。礼状を投函。
  http://www.neowing.co.jp/product/NEOBK-2441208

 一作業終えた午後、裏の菩提寺へ挨拶に。帰りがけに脇を流れる源兵衛川のせららぎを眺める。勢いのよい流れ。岸辺の椿の花にメジロが数羽。

 ネット、うろうろ。

《 芸術作品で偶然の価値を学び“制御第一”の思考から自由になる /伊藤亜沙 》 東京工業大学
  https://educ.titech.ac.jp/ila/news/2019_12/058310.html

《 作家五十音順に丁寧に並ぶ、本棚のような文字列を追いかけて行くと、見慣れぬ本がたくさん含まれている。ソログーブ「小悪魔」とか「捧腹絶倒 富村邸のクリスマス」、「家庭小説 小さなハート」、「全世界探検 爆裂艦隊」…「ヴェニスの商人」が「人肉質入裁判」という身も蓋もないタイトルに。 /12/27昭和十四年と三十四年の古書目録。 》  古本屋ツアー・イン・ジャパン
  http://furuhonya-tour.seesaa.net/article/472836950.html

《 グループサウンズとか二年しか流行が続いていない。松竹ヌーベルバーグだとかダダイスト高橋新吉とか言ってもそんなもん。しかしそれ以前に戻るかといったら 戻らない。文化というのはそういうものだ。 》 清水高志
  https://twitter.com/omnivalence/status/1210783420197957632

《 「福島の処理水全量でも仏のラ・アーグの1年分のトリチウム放出にも満たない」のであれば、なぜ地上で後生大事に溜め込んでいるのか。さっさと全量を海に流せと 国と東電の尻を叩けばよいではないか。「この手の人達」相手に何をグダグダ言っているのか?オツムに何か湧いてんのか? 》 fusion
  https://twitter.com/__fusion/status/1210392945423044609

《 矢面に立っているのは官僚だが、説明責任があるのは安倍首相。マルチ商法ジャパンライフへの招待状問題については、「私が招待した」、「私は招待していない」、 どちらかを安倍首相が答えればよいだけ。それを答えずに、責任から逃げ、官僚を矢面に立たせているのは安倍首相。 》 上西充子
  https://twitter.com/mu0283/status/1210826471943495680

《 まだかまだか退陣特需 》 buu
  https://twitter.com/buu34/status/1210725273911480326