『ブルーノ・ラトゥールの取説』二(閑人亭日録)

 久保明教(あきのり)『ブルーノ・ラトゥールの取説』月曜社2019年2刷、「第一章 テクノロジーとは何か」を読む。

《 ラトゥールにおけるANT〔Actor network theory〕 とは、言ってしまえば、私たちが生きるこの世界そのものが「原理的に還元不可能な諸要素の原理的に制限のない 結びつき」であるという仮定に基づいて可能になるあらゆる思考の旗印として活用されてきたものに他ならない。 》 58頁

《 ANTは、「技術」や「自然」や「社会」を確固たる実体として見なすことをやめ、原理的に還元不可能な諸要素の原理的に制限のない結びつき(アクターネットワーク) から出発することで、「まだ残されているあらゆるもの」に目を向けるための方法論である。「自然」や「技術」や「社会」を前提にしない発想が、いかにしてそれらの 相互作用を描けるというのか。ANTは非人間を一人前のアクターとして扱う。その理解は誤りではないが、人間も非人間も仲介役としてではなく、媒介項として扱われる ことがより重要である。 》 63頁

《 「生成」という観点から考えれば、人工知能のような先端技術と皮靴のようなありふれた技術のあいだには原理的な区別はできないことになる。私たちは、それと 結びつくことによって自らがどう変化するか全く予想できないまま自らと結びつきつつあるものを「先端技術」と呼び、すでに自らそれと密接に結びついてしまったために その他者性を忘却してしまったものを「技術」と呼んでいるにすぎない。両者には、生成のプロセスの進行具合に応じた連続的な違いしかなく、そのプロセスは私たちが 制御できるものではない。 》 71頁

《 社会構成主義と自律説の対立は、私たちにとってどちらも妥当だと思われる二つの語り口の矛盾として捉えることができる。一つは「私たち人間が認識できないものは この世界に存在せず、私たちが世界を認識する仕方は社会や文化に規定される」というものであり、もう一つは「私たち人間の認識とは無関係にこの世界に存在するものが あり、科学はそれを捉える最良の手段だ」というものである。 》 75頁

《 鋭く対立する二つの考え方は、だが、いずれも論理的・倫理的に説得的なものだと感じられるだろう。自然と社会、科学と文化、理系と文系の区別によって通常は 感受されにくい両者の矛盾が顕在化したのが二〇世紀末の科学技術社会学という場だったのであり、ラトゥールの議論は、この二つの考え方を同時に否定することで両者の 矛盾を乗り越え、新たな論理と倫理をつくりあげる道筋を探るものなのである。 》 80頁

 ぞくぞくする展開。

 ネット、うろうろ。

《 クラブが開かなさすぎて海外のDJ配信がエクストリームスポーツみたいになってるのすき 》 鴨居
https://twitter.com/Kamoi03/status/1345631981300666368

《 テレビでライブ会見やってるけど

  我が家の茶の間

  「..........」
  「..........」
  「あとで早回しでいいな」
  「うん」

  ブチッ(テレビ消す) 》 buu
https://twitter.com/buu34/status/1345914710693068800

《 つくづく。「今これが現状です、そこでこういう対策を打ちます、そうすることでこのような成果が期待できます」という程度の、 極シンプルな行動宣言すらできぬ総理であることよ。 》 Watching_Big_Bro
https://twitter.com/Watchin_Big_Bro/status/1345918222403440641

《 首相の余りにも乏しい記者会見の機会に、メディアは絶対に、緊急事態宣言と同時に、補償をどうするのか、検査・保護・隔離へと戦略転換するのか、 ワクチンのスケジュールがどうなっているのかを質問し、その場ですべて「具体的に」答えさせるべき。それをせずに逃げさせるなら報道機関の意味はない。 》  平野啓一郎
https://twitter.com/hiranok/status/1345910195726159878

《 どこかひとつぐらい、コロナ報道特番やるかと思ったが、朝から晩まで吉本等々のお笑いばかりだ。何人死のうがこれは変わらないだろう。 これからはみな"お笑い"の中で死んで行くんだろな。 》 ポンピィ
https://twitter.com/pom_pom_pee/status/1345689633884053506

《 〈研究者の海外流出の背景その1〉国立大学と国立研究機関の基盤的経費(運営費交付金)の連年削減。例えば国立感染症研究所の研究者一人あたりの研究費は 年間40万円で室長すら任期付に。アベノマスク予算は国立感染症研究所全体の基盤的研究費の23年分と同じ。日本政府の研究費負担は主要国で最低です 》  井上伸@雑誌KOKKO
https://twitter.com/inoueshin0/status/1345690893387403264

《 ・軍服のある廃校
  北海道の雪原まっただ中に残る廃校。戦後すぐに満州から引き揚げた人々が、原野を開拓して起こした分校が始まり。昭和中期に閉校になった後は開拓記念館として 農機具や満州時代の品を展示していたが、長い年月放置され、展示品も廊下も崩れ去りつつある。記憶はこうして消えていく。 》 道民の人
https://twitter.com/North_ern2/status/1345316948196823040

『ブルーノ・ラトゥールの取説』(閑人亭日録)

 久保明教(あきのり)『ブルーノ・ラトゥールの取説』月曜社2019年2刷、「序論」を読む。

《 そもそも「知る」とはどういうことだろうか。 》 9頁

《 したがって、知ることは、原理的には、知る者が世界を外側から観察して世界と厳密に対応する言明を与えることとして把握される。
  こうした、対象と表象、世界と言語が対応していることが正しく知ることだとする常識的な発想を「対応説」と呼ぶとしよう。それは科学や学問の価値を一般に保証 してきたものである。 》 10頁

《 しかしながら、対応説には根本的な難点がある。急がずに考えればわかることだが、私たちは世界の外側になどいない。〔中略〕外側から世界を知ることは、 内側において世界を生きていることに避けがたく結びついている。 》 11頁

《 だが、第三の発想もありうる。私たちはこの世界の内側に生きているからこそ、世界に関する適切な知識を獲得できるのであり、その一つが外在的な知識とみなされてきたものである。そう考えれば、外在は内在に内属することになる。対応説的な発想が染みついた私たちにとって、それ以外の仕方で知識の妥当性を考えることは極めて 難しい。とはいえ、世界への内在を前提として外在的とされる知識を捉え直すことも可能である。 》 13頁

《 社会構築主義において「構築」とは作りものであること、本当の事実ではないことを意味する。これに対して、第三の発想において、「構築」とは事実を生みだす唯一の 適切な回路である。ただし、構築される事実が「より良い/悪い」ものであるかを判断する基準は世界の外側に置かれない。 》 15頁

《 世界は固定されておらず、その一部でしかないゆえに表象もまた固定されていない。「知る」ということは、世界と厳密に対応する言明を与えることではない。それは、 世界の内側において他の存在者と様々な関係を取り結ぶことそれ自体であり、対応説的な正しさはその派生的な効果の一つにすぎない。 》 15頁

《 このように考えると、より良く「知る」ことが問われる場は、世界と表象の対応ではなく、世界の内側にある諸要素の関係性に移ることになる。「知る」とは様々な 要素を関係づけることであり、その良し悪しもまた関係づけの只中において生じる。 》 18頁

《 第一の発想が近代という前提を固持するモダニズムであり、第二の発想が近代という前提を保持しながらその刷新を探求するポストモダニズムであるとすれば、第三の発想は近代という前提を放棄して世界を捉える「ノンモダニズム」を構成する。では、世界の内側を生き、様々なことを知り、様々な関係性のなかで行為している「私たち」とは何ものだろうか? 》 19頁

《 簡単にいえばラトゥールはうさんくさい。 》 21頁

《 その取り扱いには注意が必要である。極めて難解ではないが、極めて誤解しやすい。 》 29頁

 ネット、うろうろ。

《 『ラトゥールの取説』で久保明教氏が、ラトゥールは近代を巡って色々な逆説を突きつけてくるけどフーコーレヴィ=ストロースみたいにマルクス主義みたいな 過去の人類の学問体系と本気で格闘してオルタナティブを提示するというようなことをやれていなくて、そこが物足りないという意味のことを 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1345362204606877697

《 述べていた。それは同意なんだけど、そこは頑張って補完して思考して作るべきなんだよな。 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1345362205596794886

 こんな同時性があるとは。

《 西欧式のアートをいくら文字面で教育しても、着床はしないと思われる。
  もし本当に日本が芸術大国に変容しようとするならば、行うべきは、芸術への税の変更である。決して、クールジャパンのように税金をクソ企業に逆流させて、 文化創造でございと悦に入ってはほしくないのだが。 》 takashi murakami
https://twitter.com/takashipom/status/1345137604111450112

《 自分が見た、80年代の日本画のバブル期に起きていた、当時の現代美術バブル、それはセゾングループを背景にしたりしていた事象と、 今のアート購買への狂騒は似ていたりもする。儲かるならなんでも似たようなモノをリリースすれば良い的な。 》 takashi murakami
https://twitter.com/takashipom/status/1345140561687183361

《 アートが他のサブカルと違うのは取引が情報ではなく物であると言う部分で、残った物が未来永劫価値の有無を問われ続けると言う事なのだ。 》  takashi murakami
https://twitter.com/takashipom/status/1345140753194860544

《 確かに今日のテレビはなんの事実も危機感も伝えてない。おわってるし、どうなるかもうわかりません 》 倉持仁
https://twitter.com/UCiS7MEgWj6L7cV/status/1345391405611405313

《 日本とは無能が船頭をし沈みつつある二流国であり、そんな泥舟国家の情報だけ追っていると再帰的無能感に陥り自分まで無能になるので、 意識的に若い国の情報を摂取してリフレッシュするのが必要だ、という思いが日増しに強くなる 》 樋口恭介
https://twitter.com/rrr_kgknk/status/1345355121354444800

《 俺がやってるのは社会批判ではなく、政治権力(およびその奴隷)批判な。社会はこっち。彼らはしばしば、社会から預かっている権力を盾に、 社会に対して批判的に動くという、自己矛盾を呈する。なんなら迫害にすら及ぶ。 》 津原泰水
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1345486686927556609

《 妹にあげた 》 タツエツダイコウ
https://twitter.com/Tatsu_Zinc/status/1345341499718832134

初詣(閑人亭日録)

 昼前、三嶋大社へ初詣。例年に較べすごく少ない参拝者。晴れ着の女性を見かけない。ほとんど待つことなくお賽銭箱前へ。帰り道、三島プラザホテルのギャラリーで 催されている岡部稔写真展へ寄る。一点、おお、と感心する図抜けた作品があった。赤丸が付いている。岡部さんの話では、ネットに画像を上げたところ注文が来たという。 すごい目利きだ。
 http://blog.mishimaph.co.jp/2020/12/22/8654/

 ネット、うろうろ。

《 大五郎のクソデカボトル生産休止でショックを受けたオフィーリア。
  埼玉の柳瀬川へ身を投げて優雅に背泳ぎしながら業務スーパー三芳店へと向かう。 》 差詰そうたろうR-18
https://twitter.com/sasizume_S/status/1344859382731796482

《 伯耆大山、大神山神社奥宮末社、下山神社 》 浮き輪
https://twitter.com/junsuikaidan/status/1344978265312694276

《 精神論で頑張った結果、乏しい予算で小惑星サンプルを回収する。っていう成功例を達成してしまったので、「ゴマの油と農民は搾れば搾るほど出る」の発想が蘇って、 ますますケチりそうで気になってる。 》 ロージナ茶会 / 旭霜
  https://twitter.com/RodinaTP/status/1345148922830807040

《 【定期配信&拡散希望
  日本の税収推移(1987~2020)
  消費税の税収パワーがわかる件。
  #消費税は法人税さげただけ 》 グラフ兄さん 【日本の将来を憂える者】
https://twitter.com/Graph_Niisan_JP/status/1344901985049300992

《  不眠症の正月ほど寂しいものはないわよ。 》 古書現世
https://twitter.com/wamezo/status/1345062735281700864

『清原啓子作品集』(閑人亭日録)

 シモーヌ・ヴェイユ重力と恩寵』を読み始めた当初から銅版画家の清原啓子を連想した。シモーヌ・ヴェイユは1943年8月24日34歳で没。清原啓子は1987年7月25日31歳で 没。
 銅版画家 清原啓子の宇宙八王子市夢美術館 | 東京都
  https://www.museum.or.jp/report/566
 彼女の意識の集中の傾け方というか方向性が、シモーヌ・ヴェイユに近しい気がする。または同質性を感じる。それ以上は探求しない(できない)。
 手元には没後遺族の手で出版された『清原啓子作品集〈普及版〉』美術出版社1988年刊がある。巻末に収録の池田満寿夫「清原啓子の宿命」結び近く。

《 極度な緊張感の集中が彼女の神経をはてしない神経の海へ追いやる。構図のバランスと神経のバランスがぎりぎりのところで連結していたが、ついにある日それが切断 されてしまったのだ。31歳の若さで急性心不全が突然襲う。彼女は死をもってしか自分の構築した魔界から逃れられなかったのかもしれない。 》

 このじつに緻密な作品を私はまだ、直接見る機会がない。印刷で見る清原啓子の銅版画は息が詰まる。息詰まるのではなく。作品からは出口なしの悲痛な叫び(?)が 聞こえてくるよう。なので版画を手元に置こうとは思わない。
 清原啓子と同じように精緻極まる奥野淑子の木口木版画は、ふっと息が抜ける出口が控えている。奥野さんから聞いたが、彼女は清原啓子と違って下絵を描かない。 ぶっつけ本番で木口に彫刻刀のビュランで直接彫り込んでいく。作品からは生命の瑞々しい息吹が直に届く。

《 昨夕届いた木版画家奥野淑子の木口木版画を飽かず見ている。昔案内葉書で注目し、彼女の初めての個展、銀座のはずれの貸画廊へ開廊直後に訪問。彼女は寝坊して 遅れた。彼女はまだ二十代。私が最初の買い手。後から来訪した年配の紳士は彼女に「いちばん高いのを買う」と。ほう。彼は美術雑誌の告知で知ったらしい。 あの小さい画像で・・・。これからいい作品ができるかわからない、買う、という発言を耳にした。スゲエ紳士がいるものだ。昨夕届いた木口木版画は後年の作。初見。 表現力が一際増している。ネットにも載っていない未知の作品。ぐっと惹きつけられる。
 去年自宅へ来訪した美術雑誌の編集者が彼女の作品を見て驚嘆。彼女に電話をつないだ。彼女の作品について腰を据えて論じた人はいない。白砂勝敏さんと同じく、 芸術家ならぬ迎術家の一人だ。
  http://web.thn.jp/kbi/okuno.htm 》 「『本が崩れる』(閑人亭日録)」2019-07-24
 https://k-bijutukan.hatenablog.com/entry/2019/07/24/193334

 「迎術家」は、横尾忠則の言葉。

 ネット、うろうろ。

《 あけおめ! 》 マキエマキ@自撮り熟女
https://twitter.com/makiemaki50/status/1344790424636985345

《 明けまして、何がめでたい 》 綿野恵太
https://twitter.com/edoyaneko800/status/1344814690224885760

《 2020年6月2日,「東京アラート」が発動され,都庁やレインボーブリッジが赤に染まった。その日の新規感染者数は
  34人 》 Haruhiko Okumura
https://twitter.com/h_okumura/status/1344535615111454721

《 「若者はコロナを甘く見ないでほしい」って緑のタヌキの小池さん。あなたは甘くどころかコロナを舐めきっていたでしょうが。五輪に未練で対策が遅れたのは 火を見るより明らかですぜ。でも次々と手を打ってるフリはしますな。テレビに出てフリをするだけで評価が上がるんだからさぞいい正月でしょうね。 》 立川談四楼
https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1344856767574855681

《 なんかダメだな、これ。なんだろう、この国民を見てない感。

  令和3年1月1日 菅内閣総理大臣 令和3年 年頭所感 | 令和3年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ 》 ささきりょう
https://twitter.com/ssk_ryo/status/1344661688969293825

《 「打ち勝った証」の前提、消える。本当はコロナ収束後に始まる筈だったGoToと同じ失敗を、今度は世界規模でやらかすそうです。なぜこんな人が首相なのでしょう?

  国民の大半、選んだ覚えが無いわけですが。 》 津原泰水
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1344871313945415681

《 現在コロナ禍で病床が逼迫しているのは周知の事実だが、菅義偉政権は来年度予算案に「病床削減」に200億円近くの補助金を計上している。昨年、共産党など野党が コロナ対策に回せと主張した同じ名目の予算は84億円。この状況で「全額国庫負担の病床削減」を強行する政権はコロナを遥かに上回る脅威だ。 》 異邦人
https://twitter.com/Narodovlastiye/status/1344913184021336064

《 今年の目標は「正直、親切、愉快」です。一番だいじなのは「正直」。このことは長く研究者をやってきて骨身にしみました。自説を展開している途中で「あ、これ違う」 と正直に認めることができないと研究者になれません。「正直」に思考していると、どんどん話が複雑になります。 》 内田樹
https://twitter.com/levinassien/status/1344826922128195584

《 合気道でもそうです。脳は「単純な動き、制御しやすい動き」を選好し、皮膚は自然に「より複雑で、より中枢的に制御しにくい動き」を選ぼうとします。 もちろん皮膚が選ぼうとする動きの方が自然なんです。皮膚に決定権を委譲するのが「正直」。 》 内田樹
https://twitter.com/levinassien/status/1344831867606863873

《 ウナギには細かいヤスリのような歯があり、噛み付いたあと自らの体を回転させて食いちぎるそうで、魚に飲み込まれたあと、腹から脱出することはあるそうだが、 鳥の胃袋を食い破って脱出する瞬間を写真にとらえたのは初めてだという。 》 住友陽文
https://twitter.com/akisumitomo/status/1344215601611345922

『重力と恩寵』八(閑人亭日録)

 シモーヌ・ヴェイユ重力と恩寵ちくま学芸文庫1999年5刷、最後の部分を読んだ。

《 記号(シーニュ)と記号内容(シニフィエ)との関連が失われてしまった。記号と記号とをとり代えるにすぎぬ遊びごとが、増えている。遊びそれ自体として、 また遊びのための遊びとして増えてきている。そして、複雑さが増し加わるにつれて、記号のための記号をつくり出さねばならなくなっている……。
   ※
  現代の世界にはさまざまな特徴がみられるが、なかでも、努力と努力の結果との関連を具体的に考えられなくなっている点を忘れないでおきたい。あまりにも中間に 立つものが多すぎるのである。このほかのあらゆる場合と同じで、ここでもこの関連が、なんらかの思考の中に存在しているのでなく、ひとつのもの、すなわち金銭の中に 存在するにすぎないのである。
   ※
  集団的な思考は、思考としては存在することができず、もの(記号、機械など……)の中へ移って行ってしまう。そこから、次のような逆説が生じる。ものが思考して、 人間はものの状態にまで押しやられてしまうという逆説が。 》 「代数」 249-250頁

《 資本主義は、集団としての人間に、自然からの解放をなしとげさせた。ところが、この集団は、前に自然が演じていた抑圧の役割を受けついで、こんどはそれを個人に 対してふるうようになった。 》 「代数」 252頁

《 ものと直接向かいあうことは、精神を自由にする。人間と向かいあうことは、堕落のもとである。 》 「社会的烙印を……」 254頁

《 権力の座にある人間たちを、つねに危険なものとみなすこと。自分を軽視せずにすむ限度内で、できるかぎりかれらを避けるようにすること。 》 「代数」 256頁

《 社会的なものについて考察を深めるのは、この世から隠遁するのと同じぐらいに有益な方法である。だから、わたしがあんなにも長い間、政治の周辺をうろついて いたのは、あやまっていなかったのだ。 》 「大怪獣」 262頁

《 愛国心。完全な愛以外の愛ならば持ってはならない。国家は、完全な愛の対象となることができない。だが、国ならば、永遠の伝統をにないつづける場所として、 愛の対象となることができる。どんな国でもそうなることができる。 》 「大怪獣」 267-268頁

《 神の教育という比喩を用いることによって、個人の運命は諸民族の運命の中に解消されてしまう。救いにおいては、ただ個人の運命だけが重く見られなくてはならないと いうのに。
  キリスト教は、歴史の中に調和を求めようとした。ヘーゲルマルクスの思想は、はやくもここに芽を出しているのである。歴史を一定の方向に向かって連続するものと みる歴史観は、キリスト教的なものである。
  こんなにまで徹底的にまちがった考え方は、そんなに例がないのではないかと、わたしには思われる。 》 「イスラエル」 275-276頁

《 公平さの光に照らされていない権威なら、そんな権威をもつ人間に従属するのは、悪夢に等しいことである。 》 「社会の調和」 282頁

《 おまえは、何もかもが失われてしまったこんな時代よりももっとよい時代に生まれるなんてことは、とてもできないのだ。 》 「社会の調和」 289頁

《 肉体労働の非常な苦痛は、ただ生存するというためにだけこんなにも長時間の努力をつくさねばならないという点にある。 》 「労働の神秘」 293頁

 シモーヌ・ヴェイユ重力と恩寵』読了。きょう読んだところが最も食い込んできた。それまでは神、信仰など自分とは考えがずいぶん異なり縁遠かった。
 表題の重力がいまいちわからなかったが、巻末の「解題」ギュスターヴ・ティボンで語られていた。

《 神が創造の行為それ自体によってしりぞいて行ったあと、この世界にはたらく主要な法則は、重力の法則であり、それは、存在のどの段階においても類比するものが見出される。重力とは何よりもとくに〈神から遠ざかる〉力である。重力は、被造物おのおのを押しやって、自己保存または自己拡大を可能とするすべてのものを 求めさせようとする。トゥーキュディデースの言葉を用いるならば、自分にできるかぎりのあらゆる権力を行使させようとする。 》 319-320頁

《 シモーヌ・ヴェイユを理解しようと思うなら、彼女が語ったのと同じ高みに立たなければならない。 》 346頁

 大晦日。「昔は」と回顧して「よかった」と言う人をよく見かける。「昔? 良くなかなった。今が一番」と言う私がいる。今年は一番良かった。 新型コロナ禍は時代の大転換期の狼煙だと思う、私は。

 ネット、うろうろ。

《 富士山女子駅伝終了後に姿を見せた雪化粧の富士山です! 》 Taitan
https://twitter.com/taitan21/status/1344176028248199168

《 12月30日。三島市は朝方曇りでしたが、強風で雲がふきとんで。午後には富士山がくっきり。 》 Koichi Kawakami, 川上浩一
https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1344233246465249280

《 しかしおせちは12時間前に冷蔵庫に移して解凍せよとある……冷蔵庫に移す……この量を? 明日の夜までに冷蔵庫に空きを作れということか。仕方ない、 まずは冷やしてあるビールをのm 》 大矢博子
https://twitter.com/ohyeah1101/status/1344179933547954176

《 絵柄的には明らかに日野日出志フォロワーの「鬼滅の刃」が国民的ヒット作になっているの、意外でもあるし、痛快でもあるな。 》 日下三蔵
https://twitter.com/sanzokusaka/status/1344256227874803720

《 オードリー・タンは重要なのはプログラミング的な思考を学ぶことだという。それは彼によると「一つの問題をいくつかの小さなステップに分解し、 多くの人たちが共同で解決する」という思考なのだという。こういう表現は、問題をまず小さな部分に分解して思考せよという、『方法序説』のデカルトの考えを 》  清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1344187866373484547

《 想起させるが、違っているのは一つ一つの「小さなステップ」ごとに「多くの人たち」の共同の関与があり、そこではオープンソースの知も動員されるし、 その対象からそれらの人たちへのフィードバックもある。媒介項に繰り返し戻りつつ複数のアプローチが作用するという意味で、アクターネットワーク的な 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1344187868453879808

《 構造がこうしたプログラミング的思考のうちでは働いており、そうして「小さなステップ」も順次取り替えられていく。その意味では、デカルト的と言うよりも ライプニッツ的な発想であるとも言える。 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1344187869707915264

《 生活保護を受けることが恥ずかしいのではなく
  生活保護をしなければ生きていけない人を出してる政治をしてることが恥ずかしいことなのです。
  自民党公明党は、自らの政治を恥ずべきです
  あなた達の政治は、「失敗」してるのです 》 ヤン・ウェンリー提督
https://twitter.com/yangwenli920820/status/1344172707642929154

《 もーいーくつ寝ーるーとー 大 流 行
  お正月にはー 初詣ー コロナを 広げて 遊びましょうー
  はーやーくー 来いこーい 大 崩 壊 》

《 幻の名演は日常の中でふと現れたりするものだと思うんだけど
  お父さんと一緒にギター屋さんについてきた少年の歌うブルースの声量と貫禄がすごすぎるんだよな
  サングラスの店長がSTOP!って言うから声が大きすぎて止めさせるのかと思ったら「最高だから友だちに見せる」ってカメラ用意させてるの最高笑 》 Applepopz_ ロックンロール忘備録
https://twitter.com/Applepopz/status/1344250631721254913

『重力と恩寵』七(閑人亭日録)

 シモーヌ・ヴェイユ重力と恩寵ちくま学芸文庫1999年5刷を少し読む。

《 信仰とは、知性が愛の光を受けるという体験である。 》 「知性と恩寵」 210頁

《 知性の領域では、謙遜の徳とは、注意力にほかならない。 》 「知性と恩寵」 210頁

《 真の謙遜は、自分が人間として、さらに広くいえば被造物として、無であることを知ることである。
  知性がそこでは、大きい役割を果たす。普遍的なものを頭においておく必要がある。 》 「知性と恩寵」 211頁

《 知性ほどに真の謙遜に近いものは何ひとつない。知性を実際に働かせているときには、自分の知性を誇るなどということはありえない。 》 「知性と恩寵」 212頁

《 世界は、いくつもの意味を含んだひとつの文章である。人は、苦労をしながら、意味をひとつひとつつかまえていくのだ。 》 「知性と恩寵」 213頁

《 知性は、奥義の中へはいりこむことは決してできない。だが、知性は、そして知性だけが、奥義を表現する言葉の適切さについて判断をくだすことができる。 》  「知性と恩寵」 214頁

《 ガリレオ。近代科学は、無限定な直線運動をその原理とし、もはや循環運動を原理にしなくなったために、神への架け橋であることはもはやできなくなった。 》  「知性と恩寵」 216頁

《 人が不正になるのは、正義に反した行いにふみきろうとする意志によることもあれば、正義についてのまちがった〈読み〉方によることもある。だが、まずはいつも、 あとの場合の方が多い。 》 「読み」 219-220頁

《 まちがった〈読み〉方の原因。世論、さまざまの情念。 》 「読み」 220頁

《 〈読み〉の重ねあわせ。感覚の背後に必然を〈読む〉こと。必然の背後に秩序を〈読む〉こと。秩序の背後に神を〈読む〉こと。 》 「読み」 221頁

《 権力(そして権力の合いかぎである、金銭)は、単なる手段にすぎない。まさにそのために、理解のできなかったすべての人たちにとって、それが最高の目標になるのだ。  》 「中間的なもの」 237頁

《 美しいものとは、人がじっと注視できるものである。何時間ものあいだ、見つめていることのできる一基の彫像、一枚の絵。 》 「美」 242頁

《 どんな芸術作品にも、その作者というものがある。しかしながら、その作品が完全なものであるときには、何かしら本質的に作者の名をかくしてしまうようなものを そなえている。 》 「美」 243頁

《 美しいものは、官能に訴えかけるもので、そこには人を遠くへおしやりあきらめさせるような力が含まれている。心のもっとも奥深くでのあきらめ、想像力すらも 捨てさせてしまうようなものが、その中にはある。これがほかの対象なら、どんなものでも食べてしまいたいと思う。美しいものは、欲望の対象とはなるが、食べようとは 思わない。わたしたちは、それがそのままそうあってほしいと望むのだ。 》 「美」 243頁

《 見つめることと待つこと、それが美しいものにふさわしい態度である。自分で考えつくことができ、欲求することができ、願望することができるかぎり、美しいものは 出現しない。だからこそ、すべて美の中には、除き去ることができない矛盾、苦、欠如が見いだされる。 》 「美」 244頁

《 神の芸術があるように、悪魔の芸術もあるのである。ネロが好んだのは、おそらくこういう悪魔の芸術であったのだろう。現代の芸術の大部分は、悪魔のものである。  》 「美」 245頁

 昼食後、源兵衛川上流部、蓮馨寺横の茶碗のカケラ、ガラス片などを拾う。重くなって終了。一汗。今年はこれでお終い。今年拾った回数、31回。

 ネット、うろうろ。

《 スピリチュアルなものが感じられる作品はある時代や信仰上の徹底した形式に基づくため、一見凡庸に見えるけど、よく見ると強烈な超越性やアレゴリーになっている。 他方そういう決然とした意志がないと「伝統」「神話」そして知的劣等さの裏返しとしての「自然科学的知」に見えるものをまぶすしかない。 》 Ikuo Gonoï
https://twitter.com/gonoi/status/1343844512934719488

《 なお隈研吾氏と同様の手触りを現代美術では杉本博司氏に感じる。故丹下や磯崎さんほど強い思想性も安藤忠雄氏のような個性も、オペラシティとドコモタワーを 設計した林雄嗣さんほどの徹底した没個性(に一見見える宗教的荘厳さ)もない。だから彼らは安易に日本の「伝統」や「神話」に寄せるしかない。 》 Ikuo Gonoï
https://twitter.com/gonoi/status/1343842465720111104

《 キャラ絵は根本的に近代的な自我の発揮ではなくて「万人の形式」にのっとった作品なのだから、「個性がない」とか「どれも同じ」とかいう見解はその通りだけど 間違っている。それは、ラーメン屋を見て醤油ラーメンや味噌ラーメンばっかりだと言っているのと変わらない。 》 松下哲也
https://twitter.com/pinetree1981/status/1343855699898454016

《 たとえば西洋の近世以降の伝統的な形式の絵画を美術館で見てみると、巨匠とヘボ絵描きの絵に差があるのは確かだけれども、ヘボ絵描きの絵も一応商品として 納品できるレベルの作品には仕上がっているわけじゃん。あれは形式を踏襲することが重要な種類の芸術で、その場合作家のことは二の次だからだ。 》 松下哲也
https://twitter.com/pinetree1981/status/1343857492967636992

《 年末年始のボランティアによる食料配布も、もう恒例行事になってしまった。
  この国は、やむにやまれず今を凌ごうとして民が始めたことを当たり前のようにあてにする。便乗して、国がやってるかのように宣伝さえしてしまう図々しさ。
  ほんとこんな政府要らない。今年で終わりにしたい。 》 köttur-lover2㍍2㍍
https://twitter.com/kottur_lover22/status/1344047417398763520

《 国民は自力でコロナウィルスを封じ込めて経済も回してください、俺たちは会食で忙しいから呼ぶな、なんて政府、要りますかね? 》 köttur-lover2㍍2㍍
https://twitter.com/kottur_lover22/status/1344062877196451840

《 >我々は今回も無罪を主張しない。
  >我々は民主主義が自殺して行く様を、たゞ眺めてゐる丈でよいのである。

  逮捕勾留されて一ヶ月と一週間目に淡々とこう書く。政治犯の鑑だ。 》 大野左紀子
https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1343914905460559874

《 オードリー・タンまじすごい。デジタル民主主義のプラットフォームに請願を書き込んで問題意識をシェアして二ヶ月以上に5000人の賛同者が現れたら政府が対応する 義務を負うという仕組みを立ち上げたり、インターネット初期の頃に夢見られてだんだん我々が幻滅して諦めてしまったことを現実に実装してる 》 清水高志
https://twitter.com/omnivalence/status/1343907591492042753

『重力と恩寵』六(閑人亭日録)

 シモーヌ・ヴェイユ重力と恩寵ちくま学芸文庫1999年5刷を少し読む。

《 だが、このあわれみを自然の中でじかに確かめてみるとなると、何も見ず、何も聞かず、何ものにも心動かさぬ者にならないかぎりは、そんなことができるとは思えぬ はずである。だから、自然の中に神のあわれみの証拠を見出そうとしたユダヤ教徒イスラム教徒は、情け知らずなのである。そして、キリスト教徒もそうであったことが 多くあった。 》 「愛すべき者は不在である」 184頁

《 わたしは自分がつまらぬ存在にすぎぬことをよしとしなければならぬ。もしわたしが重要な存在であるならば、それはどんなにかおそろしいことだろう。 》  「愛すべき者は不在である」 185頁

《 聖体拝領は、よい人たちにはさいわいとなるが、わるい者にはわざわいとなる。その結果として、地獄に堕ちるはずの者も天国にいるのだが、その者にとっては、 天国は地獄である。 》 「愛すべき者は不在である」 186頁

《 宗教が、慰めの泉であるかぎりは、真の信仰の障害になる。この意味では、無神論は清めるものである。わたしは、自分自身の中の神のためにつくられていない部分から すれば、無神論者であらねばならない。自分自身の中の超自然的な部分がまだ目ざめていないような人たちのあいだでは、無神論者の方が正しく、信仰者の方がまちがって いる。 》 「清めるものとしての無神論」 190頁

《 自分の追及している目的の前で後退すること。遠回りすることだけが、効果をあげる。まず最初に後退しなかったならば、なにもなしとげられない。
  ぶどうの房を引っぱったりすれば、ぶどうの粒はみな地面に落っこちてしまう。 》 「注意と意思」 194頁

《 比喩や象徴などを理解する方法。それらを解釈しようとくわだてないこと。光が溢れ出てくるまで、じっと見つめつづけること。
  一般的に、知性を訓練する方法は、見つめることである。 》 「注意と意思」 199頁

 夕刻、故つりたくにこさんの夫、高橋直行氏から電話。カナダで7月に出版された作品集『The Sky is Blue with a Single Cloud』が、アメリカの書評誌のコミック& グラフィック部門で、150点の候補から7位になった、と。これはうれしい。
 https://drawnandquarterly.com/sky-blue-single-cloud

 ネット、うろうろ。

《 冬休みの読書ガイドに! 2020年の傑作ミステリーはこれだ!【国内編】 <編集者座談会> 》 本の話
https://books.bunshun.jp/articles/-/6010

《 医師会、看護協会が本気で国を動かす気なら、年明けに東京五輪の中止勧告と、開催強行なら人員派遣の拒否を宣言すべきです。

  内閣総辞職ビームくらいの破壊力はあると思います。 》 Hashimoto
https://twitter.com/r_hashimoto/status/1343404114412126210

《 読売見出しで引導渡す28日読売「菅内閣支持急落45%」「コロナ指導力”発揮せず77%”」「内閣支持率下落幅最大、発足3か月29ポイント麻生内閣と並ぶ」 「菅内閣への逆風強まる」読売が見限ったら、後、誰が応援するのだ。見渡せば誰もいない。 》 孫崎 享
https://twitter.com/magosaki_ukeru/status/1343770022469009409

《 コロナとか日本とか関係なくても、オリンピックとテレビと広告代理店は21世紀のうちに滅びるんじゃないかな。「それらマス・コミュニケーションの産物かつ 担い手は、いかにも20世紀のものだった」と語られつつ。 》 会田誠
https://twitter.com/makotoaida/status/1343729676485709824

《 まもなく発走の大井競馬第2レース、すごいレース名だな。 》 古書現世
https://twitter.com/wamezo/status/1343730425831702528

《 東京都、火曜日として過去最多の856人。これで「人口10万人あたり〜」は39.9人に。

  参考までに、過去ワーストは沖縄県の42.67人(8/10)。県独自の緊急事態宣言を出していた時期です。 》 細野雄紀 | JX通信社
https://twitter.com/healthyboy5/status/1343829917461430272

《 こういう指標に右往左往するようになるとよくないとよくわかります 》 T-T
https://twitter.com/tcy79/status/1343779139082338304