縛りと素描

 鹿島茂「セーラー服とエッフェル塔」文春文庫の「SMと米俵」によるとSMにおける縛りには二つの流れがあるという。

 一 団鬼六、美濃村晃一の流れ 着物の帯に発するソフトな縛りの落花狼藉。縄のロマンチスト
 二 辻村隆の流れ         行李結びを原点とする亀甲縛り。縄のリアリスト

 まあ、どうでもいいけど、鹿島茂は米俵(行李)の縛りから「くだらない仮説」を書いている。
「それは、縛ることで、本来はアモルフ(不定型)な米(女体)にきっちりとしたかたちを与え、モノとして客体化するという関係である。」
 デッサン(素描)の定義みたいだ。

 昨日帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。宮部みゆき「蒲生邸事件」毎日新聞社1996年初版、小島貞二郎編「艶笑小咄傑作選」ちくま文庫2001年初版、計210円。
 午後のお散歩でブックオフ長泉店へ(ここしか行くところがない)。気になる文庫本はあるけど見送り。
 お散歩していると、トマソン物件がないか、ついつい細かな部分に視線が向かう。昨日は知人の車に同乗して近辺の水辺を案内したけど、源兵衛川のとっておきの物件に美術家の彼はやはり気づいた。まずは畑の物置小屋。黒いブリキ板の壁と窓の部分の青い網は一枚の現代絵画だ。中央部が少し凹んだトタン屋根は、コンピュータでは不可能な美しい曲線を描いている。彼は感心しきり。感受性の鋭い人はこの物件にすぐ反応する。その近くには白い陶器製の便座が水路のすぐ脇に鎮座している。以前はあっただろう屋根壁は見事になく、青天井の便座。ブロックするものは何もなし。水路と便座の間は20センチあるかないか。すっごくシュールなトマソン物件だ。
 美術館の一軒隣の倉庫にもこれはこれは! という物件がある。これは皆さん気づかない。教えられてこれは面白いと感心する。しかしなあ、一番面白いのはアンタ、と言われるのが困る。