シャルル・ボオドレールの名詩集「悪の華」について齋藤磯雄は「詩話・近代ふらんす秀詩鈔」で書いている。
「『悪の華』の詩篇の盡きぬ魅力の一つは、単純な外見のもとに限りなく複雑な内容を秘めている点にある、といへよう。」
「悪の華」収録の名詩「 Harmonie du soir 」(夕暮れの諧調)は、齋藤磯雄をはじめ多くの人に訳されている。最初の二行の翻訳。
齋藤磯雄訳「夕(ゆうべ)の調(しらべ)」
時は来りぬ見よ今し瑞枝(みずえ)の先にふるへつつ
花ことごとく薫(くゆ)りたち揺(ゆら)ぐ香燼にさも似たり。
鈴木信太郎訳「夕の諧調」
ゆふされば 今 花々は 梢に搖れて
香燼のやうに 花の香が 風に薫じて、
高畠正明訳「夕べの調和」
その時刻(とき)はいま。幹の上でふるえながら
花は香りを放っている、まるで香炉のように。
安藤元雄訳「夕暮のハーモニー」
いま 時が来る 茎の先に身をふるわせて
花それぞれが香炉とばかり揺れてはくゆり、
阿部良雄訳「夕べの諧調(ハーモニー)」
今や時はおとずれて、おのおの茎の上に震えつつ、
どの花も、香炉さながら、薫じ立ちのぼる。
手持ちの本から引用。はてさて、どの翻訳が私には合っているかな。悩ましい。気分転換に雨の中、ブックオフ長泉店へ行くが、きょうも坊主。トホホ。