35年

 きょうは父の祥月命日。53歳心筋梗塞であっけなく。あの日は真夏の陽気だった。きょうは雨は上がったけれども、どんより雲っている。あれから35年。歳月茫々。私は57歳。父の歳をとうに越した。歳を感じるこのごろ。同時に未熟を痛感。大人になること、大人であることの難しさ。昨夜は自らの至らなさで大切な友だちに心配をさせてしまった。このガランとした展示室のような心。ああ、気分が晴れぬときもある。と、歎いてもいられぬ、来週から展示の画家湯浅猛氏が油彩画一枚を持ってこられる。打ち合わせ。
 それからトイレの壁の清掃。水周りは朝掃除したけれど、天井付近の壁の汚れが簡単に落ちることを女友だちに昨日教えられた。無心でお掃除する。モヤモヤが少し晴れてくる。

 北一明「陶芸入門」鶴書房1978年を読んだ。

「焼きものの美とは、端的にいえば、ほかの美術工芸では全く表現出来ないもの、焼きもののみによってしか表現できない美しさ(人間の手で創造しうる)こそが、本来焼きものの本当の美といえましょう。」70頁

「いかに形が小さくとも、密度の高い優れた作品は存在し、空間をも支配しることが可能なのです。」93頁

 北一明氏の茶碗一つだけを展示室の壁面の中央、あるいは展示室の中心に置いてみたい誘惑によくかられる。それだけの空間支配力がある、と思う。

 ブックオフ長泉店で二冊。恩田陸「象と耳鳴り」祥伝社1999年初版帯付、吉行淳之介「悩ましき土地」講談社文芸文庫1999年初版、計210円。