湯浅猛個展初日・額縁

 午前十時過ぎに早、女性三人来館。それから切れ目無く来館者。久しぶりに賑やか華やか。閑静な美術館が一転パーティ会場のような明るい雰囲気。これもまたよし。閑古鳥がどこかへ行っちゃった。
 来館者の多くが、白い縁の額が絵に似合っていますね、と言う。多くの人が油彩画の額は金縁がいいと思っているようだ。しかし当世風な油彩画には金色の額は似合わないと、私は思う。金の額は主張し過ぎているように見える。今回湯浅氏が選んだ額は白を基調にしている。金縁の額による百号の油彩画は……彼の絵にはちょっと似合わない気がする。

 ゲオルク・ジンメルジンメル・コレクション」ちくま文庫収録「額縁──ひとつの美学的試み」1902年は、百年余り前の論考だけれども、その深い洞察は今なお有効で色褪せていない。
「額縁の美的地位は、国境監視人のように絵画の周りを一定の歩調でめぐるその形態のエネルギーによって定まると同時に、それに劣らず額縁にそなわったある種の無関心によって定まる。」

 毎日新聞昨日の朝刊コラム、伊藤和史「ノートから」の題は「古いものの新しさ」。
「歴史や文学研究に限らず、研究という営みに対しては、時代の下ったもの、つまり、より新しいものの方が優れているはずだとの思いこみがある。」
「しかし、生まれてくる成果は必ずしもそんなものだけに左右されはしないのだ。」