牧村慶子展初日

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。河野多恵子『小説の秘密をめぐる十二章』文春文庫2005年初版、杉浦日向子『YASUJI東京』ちくま文庫2006年3刷、計210円。後者をさっそく読んだ。ヤスジといっても、爆裂ギャグの谷岡ヤスジではなく、明治前期の木版画家井上安治(1864-1889)をめぐる漫画。その一ページの男女の会話。

《 女 「やっぱり満開の桜の下には…。」

  男 「どじょうが埋まっている。」 》

 どじょうをセシウム土壌に埋めたくなるわ。アイム・ソーリ。

 井上安治は二十六歳の若さで病没。その葉書大の木版画には、得も言われぬ風情が漂っている。当館には「今戸有明楼」があるが、いい。愛着を覚える。夭折といえば、先だってまで神奈川県立近代美術館で催されて好評を博した藤牧義夫を連想する。

《 1935年9月 向島小野忠重を訪ね失踪。当時24歳。》

 木版画の贋作が出回っていたことでも話題になった。失踪について銅版画家北川健次が興味深いことを書いている。

《 「間違いなく藤牧は消されていますね」と語った。私も、そう思う。》

 物騒な話だ。失踪といえば、きょうから開催の牧村慶子さんは、私にすれば失踪状態だった。生きているのかさえ不明だったから。それが一年程前、偶然に連絡先が判明。願えばいつか叶う、と実感。昼、牧村さんから電話。体調の良いときに来館します、と。昨日は中堅彫刻家が来館、きょう最初の来館者はベテラン油彩画家。お二人ともじっくりと鑑賞の後、いいねえ、と褒める。ビックリ。いつもは辛辣な感想を述べるお二人が……。

 ネットの拾いもの。

《 明晩は満月だ。急激に寒くなって雪でも降れば、花見・月見・雪見の日本三大「見」が楽しめるのに。》

《 「眠」っていう字、バックパッカーに見えませんか。左から右へ歩いていくの。》