りんご箱

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。マシュー・パール「ダンテ・クラブ(上・下)」新潮文庫2007年初版、計 210円。借りた単行本で読んで面白かったので。今朝、開館前に再び二冊。グレアム・グリーンヒューマン・ファクター」ハヤカワepi文庫2006年初版、ローリー・リン・ドラモンド「あなたに不利な証拠として」ハヤカワ文庫2008年、計 210円。前者は単行本で読んでいるけど、どこが面白いのかわからなかった。この新訳ではどうだろう。後者は新書版で持っているけど、文庫本の活字のほうが読みやすい印象。

 きょうは昨日やり残した壁のピン穴の補填(穴ふさぎ)やイーゼルなどの備品の収納をする。紅茶で休憩。汚れの無い空間、それもまた一つの美の空間かも。その一階展示室奥の壁面には片付けられた七箱のリンゴ箱が無造作に置かれている。その無造作な置き方が……なんとも美しいのだ。イタリアの画家モランディを連想させるリンゴ箱のリアリティ。これはお隣の、今は駐車場になっている食料品店さんの裏側に捨て置かれていたものを、内野まゆみさんが「いい箱だから」と私にただでもらわせたもの。長年の雨に打たれて汚れていたのを、水をじゃんじゃんかけて汚れを洗い流し、乾燥させたもの。板木の古びた風合いが詫びの風情をかもし出している。でしゃばらないけれども、そこにあるだけですんごい存在感をはっと感じる。この前の水樹ノアさんの展覧会でも使われ、土曜日にあるライヴでも台に使われる予定。リンゴを保存運搬する役目を終えてトマソン寸前だったものが全く違った用途で美しく黄泉がえる。参ったなあ。

 紅茶で休憩。サンバの大ベテラン、ネルソン・カヴァキーニョの歌「 最後の審判」を聴く。心地よい午後のひととき。……なあんてことはない。男性来館者。いつも通るけど気になっていて、きょうやっと来られたと。二階の味戸ケイコさんと北一明氏の常設作品を観て的確な感想を述べられる。