アフリカの日々/アフリカ農場

 昨日の続き。友だちの車で沼津港そばのブックオフへ。佐々木俊介「模像殺人事件」東京創元社2004年初版、イサク・ディネーセン「バベットの晩餐会ちくま文庫1992年初版、計210円。後者の訳者枡田啓介「あとがき」。

「カレン・ブリクセンの作品が今後また翻訳されることがあるとしたら、そのときはカレン・ブリクセン作のデンマーク語からの翻訳であってほしいと願っている。『バベットの晩餐会』のデンマーク語版と英語版ほど大きな違いのある作品がまだほかにもあるのだし、代表作『アフリカの日々』を初め、どの作品にも、両者の版には単なる表現上の相違というだけではすまされない部分が随所に見られ、なかには作中人物の人間関係に相違があるものさえあるという事実を、とりあえず指摘しておきたい。」

 カレン・ブリクセンはデンマーク人。デンマーク語と英語で作品を発表。デンマーク語ではカレン・ブリクセンを、英語ではイサク・ディネーセンという男性名を使った。1962年没。百目鬼恭三郎「続 風の書評」ダイヤモンド社1983年に I・ディネーセン/横山貞子・訳「アフリカの日々」晶文社の評。

「ゴング高原の描写は、(決して名訳とはいえないにもかかわらず)世の常の小説の描写、つまり芝居の書割以上の何物でもない風景とはまるでちがう。」「これが真の文学の面白さというものだろう。」

本棚からカーレン・ブリクセン/渡辺洋美・訳「アフリカ農場」工作舎1983年初版を取り出す。これはデンマーク語版と英語版双方を参照した翻訳。訳者は「ページ数の都合で四分の一を省くことになり」「しかしそのことは訳者に大きな悔いを残した。 一九八三年四月」と書いている。週刊「読書人」だと思う切り抜きがある。由良君美「読書日録」、「9月G日」の項。

「カーレン・ブリクセン、渡辺洋美訳『アフリカ農場』(工作舎)を読む。英米では筆名の<イサーク・ディネーセン> で知られるこの素晴らしいデンマークの作家は、日本でも幾つかの重訳があったが、どうも訳が気に入らないものが多く、気にかかっていた。この訳を読んで、我が意を得た思い。(引用者:略)この訳者は面識がないが、ブリクセンを本当に理解できる資質にめぐまれた人であることが分る。/英語とデンマーク語の両方を駆使して、この二重言語作家の心のアラベスクを慎重な抄訳で再現しようとしている。/<下手糞な全訳より、卓抜な抄訳を>という意味の発言を『翻訳の世界』の次号のための座談会で、してきたばかりであったから、この訳書には感心した。」