貸本小説

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。松浦理英子『犬身』朝日新聞社2007年初版、『ことばの贈物』岩波文庫別冊 1992年16刷、計210円。前者は贈呈用。後者、紫式部源氏物語』の一文が身に沁む。

≪さかさまに行(ゆ)かぬ年月よ。老いは、え逃れぬわざなり。≫

 午前中は、源兵衛川の、水辺を未だに歩けない二百メートルほどの区域に飛び石や八ツ橋を設置する市役所の設計案について、グラウンドワーク三島、地元町内会、市役所など三十人ほどが集まり、ブロックを川の中に積んで、実際を想定した実験をする。途中までは川幅が広いので、歩くにも生態系にも問題はないようだけれど、下流半分は川幅が狭くて水流も速く、危ないなあ、と誰もが感じる。これを参考に市役所が原案を作成する。お昼開館。

 末永昭二『貸本小説』アスペクト2001年初版より。

≪マンガがあるんだったら、小説本があってもおかしくない。「貸本小説」とは、なじみのない言葉だが、たしかに貸本向けの小説本は存在した。≫7頁

≪正確な数字は残っていないが、昭和三○年代初めの貸本全盛期には、全国で二万から三万軒の貸本店が営業していたという。(引用者:略)これだけの店舗があれば、そこに商品を供給する専門の市場が成り立つというわけだ。その商品が貸本マンガであり、貸本小説だった。≫7頁

≪貸本小説や貸本マンガから何か高邁な思想を読み取るのは読者の自由だが、基本的には、作者も読者も「読んで楽しんで忘れる」ものだと考えていた。≫8頁

≪貸本小説は、それを読むことによって人間性を高めなければならない、教養にしなければならないという窮屈な考えから解放された読み物である。だから徹底的にナンセンスにもできるし、読者を楽しませるためならどんなことでもやる。 ≫9頁

 「昭和のウラ大衆文学の爆笑ワールド!」惹句が踊る帯から。

≪ヘソにホクロのある兄を探すギョーザ娘が7人の恋人を手玉に取る『純情青ひげ娘』/源氏に敗れた平家が、カニに変身して壇ノ浦の海底でロカビリーパーティを開く『壇ノ浦○番地』/女になりたい男と、男になりたい女が皇居前でストリーキングする『シスター君とブラザー娘』/自分の父親が300余歳であることを信じてもらうために、息子が300年分の日記の出版交渉をする『快男児街を行く』/前半はホームドラマ、後半はなぜか女子大生が渋谷で市街戦を始める『我が家の妖精』他。≫

≪重いテーマの問題作だけが名作ではない。「いつまでも作品世界に浸っていたい」と思える作品もまた名作なのである。 ≫194-195頁

 それが水木しげるの初期の漫画だ。