マッチ売りの少女

 16日(土)は、臨時休館します。

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。芦辺拓裁判員法廷』文春文庫2010年初版、野坂昭如滝田ゆう『怨歌劇場』講談社文庫1983年初版、計210円。後者は野坂昭如の短篇長編が滝田ゆう独自の、よれよれの線描で漫画化されている。「火垂るの墓」「マッチ売りの少女」など哀切極まりない。「マッチ売りの少女」は、水木しげるによって劇画になり、米倉斉加年(まさかね)の手で大人の絵草紙になっている。米倉は1977年に大和書房から出た本に書いている。

《 この「マッチ売りの少女」に出会わなかったら、私は絵本描きになっていなかったでしょう。野坂昭如さんに心から感謝します。》

 野坂昭如の小説には滝田ゆうの漫画が最も合っている。 滝田ゆう、昭和を生きた人だ。それにしても貸本マンガ「カックン親父」からこのよれよれの線描の発見。作家への大いなる飛躍だ。

 大田忠司『ミステリなふたり』幻冬舎2001年初版を読んだ。ツンデレな女刑事が担当する殺人事件の話を聞いて、年下の似顔絵描きの夫が犯人を言い当てる安楽椅子探偵物、十篇。軽く読めるが、内容は本格ミステリ。「法月倫太郎」ものや、北村薫の「覆面作家」シリーズと同じ趣向。こういう軽く読める本格ミステリは、私の好み。今のちょっと沈みがちな気分にはちょうどよい。続編が出ているようなので楽しみ。

 表題作「ミステリなふたり」にこんなくだり。

《 レッド・ヘリング、赤い鰊(にしん)。犯人が捜査を混乱させるために残しておく偽の手掛かりのこと。》

 長年の疑問が氷解。ドロシー・L・セイヤーズのミステリに『五匹の赤い鰊』創元推理文庫があるのだけれど、表題の意味が分からなかった。 red herring 。 red handed は「現行犯で」。「真っ赤な嘘」に通じるなあ。

 ネットの拾いもの。記憶違い。

 「背中を蹴飛ばしたい」  「蹴りたい背中綿矢りさ

 「そば屋再襲撃」  「パン屋再襲撃村上春樹

 「強い風が吹いてきた」  「風が強く吹いている」三浦しをん

 「三度目の正直」  「四度目の氷河期」荻原浩

 「畳」  「蒲団」田山花袋