画家の沈黙の部分

 ブックオフ長泉店で文庫を三冊。京極夏彦『死ねばいいのに』講談社文庫2012年初版、桜木紫乃『水平線』文春文庫2012年初版、クラフト・エヴィング商會『らくだこぶ書房│21世紀古書目録』ちくま文庫2012年初版帯付、計315円。

 東京の古本屋書肆盛林堂から『大阪圭吉作品集成』盛林堂ミステリアス文庫が届く。今月出たけど、初版300部が早売り切れ。

 瀧口修造『画家の沈黙の部分』みすず書房1969年初版を読んだ。昨日話題の『瀧口修造の詩的実験1927〜1937』と同じ版型、同様の装丁。二冊並ぶと愉しい。新刊で買ったのだけれど、なかなか読み進められなかった。機が熟した。

《 ここに十二人の外国の作家についての文章が、書かれた年のあとさきにかかわりなく集められた。 》 「後記」

《 クレーの芸術は宿命的にアイロニーと諷刺の世界に生れついている。 》 「クレーの怒り」

《 私はむしろ子供の世界を火のように盗んできた有邪気な芸術家であったのだと理解したい。 》 同

《 またタブローと素描との、人工的な差別を、可能なかぎり取り除いた功績はクレーのものだ。 》 「パウル・クレー論 クレーはここにいる」

《 物を描く線から脱けだして、蛛蜘のように、空間に編みだす線。蛛蜘は、けっして〈蛛蜘の巣〉というものをつくろうとはしていないのだ。 》 同( クモは蜘蛛と書くが、この本では蛛蜘と記されている。 )

《 線は切るのではない。線は歩み、動くことによって、空間をつくるのである。空間をもった線。 》 同

 これらのエッセイで、惹かれるけれども複雑不可解なクレー絵画への理解の道筋が仄見えてきた。クレーだけで十分だった。

《 アポリネールがジャリのアパートをはじめて訪ねたときの逸話がある。 》 「ユビュ図像学入門」

《 暖炉にはフェリシアン・ロップスから貰ったという日本製の石の大きな男根が飾ってあった。しかしある日、訪れた某女流作家にショックをあたえて以来、布がかけてある。その作家はジャリに聞いたそうである。「これは型取り(ムラージュ)ですか?」ジャリは答えた。「いや、縮図です」と。 》 同

 小説家の寮美千子さんから平城京跡を守る署名のお願いが来る。賛同、署名をメール送信。歴史的景観に日本人は鈍感過ぎると思う。歳月を経て形成されてきた歴史的景観に下手に手をつけると、取り返しのつかないことになる。源兵衛川でさえ、二十年たっても、まだ病み上がりの状態だ。丈夫な川にいつ戻るか予想がつかない。

 ネットの拾いもの。

《 中央線。iPadで雑誌を読むおじいちゃん。なかなかヤルなと見てたら、めくる時、指を舐めた。
  そこはデジタル情報革命の外側。 》

《 日本の「地水火風」は、地震・大水・噴火・台風。 》 椹木野衣