民謡最後の旅芸人 二代目津軽家すわ子

 二代目津軽家すわ子『民謡最後の旅芸人 津軽家すわ子』CBS・ソニー1979年を聴いた。当然LPレコード。帯の宣伝文。

《 今、半世紀の沈黙が破られた。長い苦楽の深淵から、すわ子の揺ぎない芸は、津軽の魂を叫ぶ! 》

 いやに強張った惹句だが、内容は1979年1月18日青森市民会館、19日弘前市民会館、20日五所川原市民会館での公演を録音したもの。津軽弁で観客の心を一瞬につかむ語りも入った、まさしく臨場感溢れるライヴ録音。解説から。

《 「津軽家すわ子一座」──六十六歳の座長と、その夫である太夫元の佐々木繁月(七一)の率いる”放浪芸人”である。 》 高田城

 スタジオ録音と違って市民会館での公開録音なので、肩肘張らない娯楽演芸のよさを心ゆくまで楽しめる。

《 いまなお昔からの旅回りをしている”民謡旅芸人”は、この一座だけ。貴重な存在である。 》

 十番まである「リンゴ数え唄」から歌詞のさわりを。

《 六 無理に入れたら痛むぞえ 手荒くしたなら傷がつく
    紙に包んで糠つめて 箱に入れられ初の旅
  八 やさしいお方に買い取られ 波路はるかに船の旅
    あすはハワイかアメリカか 自由民主の国に行く
    渡る世間に鬼はないぞエ
  十 とかく世の中色と金 これが浮世というものか
    拭いて磨いて艶出して ならんだリンゴが客を呼ぶ  》

《  青林檎与へしことを唯一の積極として別れ来にけり  河野祐子  》

《  星を嵌め凍る溝あり貰ひたる林檎を胸に匂はせて行く  角宮悦子  》

《  夜の錘としづまる林檎 人ゐざる部屋のりんごの重きくれなゐ  葛原妙子  》

 ネットの見聞。

《 『奇跡のリンゴ』はスティーブ・ジョブズの伝記映画ではありません。 》