黄昏たゆたい美術館

 朝からチャンチキにぎやか。ときおり昭和の歌がマイクからがなり声で放出されるのには閉口。負けじと寺久保エレナYou Tube から選んでかける。

《 私は今までに音楽に何回も救われました。落ち込んでいる時も音楽を聴いて立ち直り勇気をもらいました。 》 寺久保エレナ

 山車の上の囃子手には女性がけっこういる。結い上げた髪で体でリズムを刻んで演じる様は、まことにカッコよく粋に見える。いいねえ。見上げたもんだぜ。おひねりを投げたくなる。まあ、顰蹙を買うだけだが。

 柄刀一『黄昏たゆたい美術館  絵画修復士 御蔵瞬介の推理』実業之日本社2008年初版を読んだ。五篇収録。『時を巡る肖像』の続編。前作を読んでいなくても十分楽しめる。今回はファン・エイクユトリロ、ファン・ゴッホ信貴山縁起絵巻等にまつわる謎と事件が解き明かされる。美術好きにはこたえられない仕組み。特に中篇の長さの「『ひまわり』の黄色い囁き」が力のこもった作。ファン・ゴッホゴーギャンが共同生活をしていた時にゴーギャンが描いたと思しき絵が発見された。果たして本物か? その鑑定の最中に女性研究者が突然自殺してしまう。絵画の真贋の解明と不可解な自殺の解明が二重進行で進む。そしてファン・ゴッホの死の真相までもが追及されてゆく。手の込んだミステリだ。他の作もそうだが、美術解読とミステリを堪能した。

 「ユトリロの、死衣と産衣」ではこんなくだり。

《 『姑獲鳥(うぶめ)の夏』というのは、京極夏彦が著した衝撃的なミステリー小説であるらしい。二十ヶ月もの間妊娠し続けている女の謎を中心に据えている。 》

 この短篇はそれを踏まえて同じ謎=二十ヶ月を扱っている。謎の解明は当然違っているが。大胆不敵な試みだ。

 「神殺しのファン・エイク」のくだり。

《 腕に光学器械の能力が宿ったかのように、エイクは写真並みに細密なる傑作を生み出し続けた。もちろん視覚情報の丸写しなどではなく、画家としての表現力や熱情がその画面には脈打っている。 》

 日本の写実絵画の多くが、写真そのままだけの絵。ドキッとさせる絵には出合ったことがあるかなあ。

 表題作「黄昏たゆたい美術館」は、なだらかな起伏のある草原に立つ私設の個人美術館”山ノ端貝殻美術館”を舞台にした短篇。K美術館と重ね合わせて読んでしまう。

 ネットの見聞。

《 <原発>自民小委、新設見送り要求…首相に提言書提出へ。そもそも新設立地に応じる自治体があるんだろうか。そんなもの受け入れたら首長は立処にリコールされるだろうし。 》 藤岡真

《 もともと、温暖化騒動は1988年にアメリカの上院で持ち上がったものだが、言い出しっぺのアメリカがさっぱりCO2削減に手を着けない(すでに24年も経つのに)ということの矛盾の説明ができなくなっていている。 》 武田邦彦

 ネットの拾いもの。

《 電車に高校生2人が乗ってきて、男「『風立ちぬ』知ってる?」女「見たーい」男「主役が肺ガンの彼女の横で煙草吸いまくるから死ぬらしいよ」女「ヤバくない?」男「今、それで偉い人に叩かれてるし」女「ジブリ、昔と変わったよねー」って話してたから、俺が見たのと違う映画だろう。 》

《 映画かなんかで女の子を誘拐した犯人が運転中に携帯で脅迫電話をかけるシーンで苦情がきたってことがあったらしい。曰く道交法違反だと。誘拐はいーのかよと突っ込まれたら黙ったらしいが。タバコに限らず表現規制派の理屈はよくわからん。 》