『第三の警官』

 アイルランドの作家フラン・オブライエン(1911-1965))『第三の警官』筑摩世界文学大系68巻1998年初版収録を読んだ。殺人を犯した語り手のその後の奇妙な物語。最初の一行。

《 フィリップ・メイザーズ老人を殺したのはぼくなのです。 》

 語り手はその後、不可思議な出来事に出くわし、えらい災難に見舞われる。

《 「総体ひっくるめた掛値なしの結果として、この教区のでこぼこ道で鉄製自転車を乗り廻すことに生涯の大半を費す人々については、原子交換の結果、本来の性格と自転車の性格との混交が認められる。この区域の住民のうち半分人間、半分自転車と目される人々の数を知ったらあんたも仰天するだろう」 》

《 この特質を事細かに述べることなどとても出来そうにありません。ぼくが何故あれほどに驚いたのか──その理由に思い当たるだけでも何時間もかけてとっくり考える必要がありました。既知のあらゆる事物に必須の本質的属性があれには欠如していたのです。外形あるいは形態のことを言っているのではありません。ぼくがここで問題にしてるのは形のあるなしとは全く関わりのないことですから。 》

《 これはぼくの独り合点の夢想であったのか、あるいはひどい幻覚にとらわれていたのかもしれない。どれもこれも腑に落ちないことばかりだ。 》

 『第三の警官』は、1940年に執筆され、没後の1967年に出版された。手紙に彼は書いている。

《 「私は新作を書き上げたばかりのところです。その唯一の取り柄は筋立てでして、それを如何に途方もなく仕立てあげるかが苦心のしどころでした。」 》

 訳者大澤正佳の解説から。

《 プルーストカフカキルケゴールに傾倒し、自国の先達にジョイスを持つこのこのアイルランド語の謹直な碩学、滑稽小説家、諷刺的コラムニストにして風格ある酒家たるフランにしてマイルズなるブライアン・オノーランは、一九六六年四月一日エイプリル・フールの当日にあっけなくこの世を去った。享年五十四歳であった。 》

 自転車でお買いものついでにブックオフ長泉店へ。エアコンの風で体を冷ます。『集英社版 世界の文学 19 シリトー』集英社1976年初版函付、森本哲郎『吾輩も猫である』PHP文芸文庫2011年初版、計210円。『集英社版 世界の文学』全38巻は、新刊で興味を惹かれた巻を買っていた。ベールイ、セリーヌブランショブロッホ、オブライエン、ガッダ、ノサック、ボルヘスカルペンティエール、コルターサル、ジョサ、ドノソそしてバースなど。新刊で買わなかった巻をブックオフで105円で買っている。あと数巻。ネットでは買えるけど、ここは105円で。

 ネットの見聞。

《 秘密保護法案:検討過程「真っ黒塗り」 情報公開請求に

  政府が立案を進めている特定秘密保護法案の検討過程について、毎日新聞が関係省庁に情報公開請求をしたところ、法案の内容に触れる部分は「不当に国民の間に混乱を生じさせる恐れがある」として、ほとんどが黒塗りだった。 》 毎日新聞 2013年10月03日

 ネットの拾いもの。

《 好きな作家の話題をふられて、無名時代から追ってる作家の名前言ったら、流行の後追いみたいに言われてスゲー腹立ってる。 》

《 9時に風呂に入るべきかどうか……9時湯の選択を強いられる。 》