やなせたかし死去/『日本史を読む』

 朝、「子どもたちの愉快な芸術祭」アート長光寺 Vol.1の葉書を報道へ投函。個人へはもう少し後に。

 午後、高知県やなせたかし記念館からやなせ本寄贈の礼状が届く。後日他の本も寄贈の予定。
 8日に取り上げた『アンパンマンの遺書』のやなせたかし氏が13日に亡くなっていた。戒名「清浄院殿画誉道嵩大居士」。合掌。

《  私の心は
   ちいさくて
   あなたのことを
   かんがえる
   その愛だけで
   いっぱい
   です        》 『愛の詩集』サンリオ出版1976年13刷より

 丸谷才一山崎正和『日本史を読む』中公文庫2001年初版を読んだ。丸谷、山崎の対談形式による日本史のとらえ直し。「恋と密教の古代」から「近代日本 技術と美に憑かれた人びと」まで八章。これはじつに面白い。目から鱗が落ちること多々、感興をそそる。

《 丸谷 これによって崇徳天皇が父帝・鳥羽天皇の子ではなく、祖父・白河上皇の子であることが、九百年後に厳密に実證されてしまった。
  後に鳥羽天皇もこの事情に気がついて、顕仁皇子のことを「叔父子(おじご)」と呼んだそうです。后が産んだから自分の子ではあるが、他方においては祖父の子であるから叔父に当たる、というまことに苦いユーモアですね。 》 63頁

《 山崎 一つ大きな特色は、先ほどの白河院の性的放縦をご指摘になったけれども、女性のほうも結構放縦だということなんですね。女性がこんなに性的自由を許されていて、また実に奔放にそれを隠しげもなく楽しみ、みずから歌にして平気で公表するというような文化は、まず日本の十世紀をもって嚆矢とするでしょうね。 》 74頁

《 山崎 それからこれは多分、広い文化的洞察を必要とするんだろうけれども、少なくとも江戸末期から明治初期にかけて、日本人には売春ということに、ほとんど罪の意識がない。あるいは、穢れの感覚もない。 》 179頁

《 丸谷 それから、いったいに水商売の女の人を差別的に扱わないのは、先ほども山崎さんおっしゃったけれども、日本文化の伝統なんですね。 》 284頁

《 山崎 おそらくキリスト教というのは大きく括り過ぎで、そのなかのピューリタン系の倫理意識が、人間文化を著しく歪めた。そして後に、英米系の政治勢力が世界を支配したので、売春はただただ悪いということになったのかもしれない。
  いまわれわれが売春を考えると、必ず男の性欲が非難されるわけですけれども、「いき」の文化というのは九鬼周造が言うように、性欲が基本にあっても、むしろそれを自己抑制すること。いわば欲望を満足させる過程のなかにさまざまなルールをつくり、ゲームをつくり出していく、その中に生まれてくるものだったんですね。文化は、もちろんいろいろな人間の汚れた欲望によって成り立っています。それをどういうふうに浄化するか、そのための装置が文化というものの本質じゃないだろうか。 》 290頁

《 丸谷 ただし、明治時代は元勲たちはとりあえず花柳界を利用したわけね。これが大正時代に入ると、藝者の文化は爛熟を極めて、大正時代を支配していた政治家、財界人のほとんどすべてが藝者さんを奥さんにしているとか、お妾にしているとかいうことになっていますね。 》 291頁

《 丸谷 ヒストリカル・イフを言うことは禁止されていますが、あれはおかしい。補助線を引いて過去をかえりみることは効果的な手口ですよ。そうでなくても日本人の学問は想像力が貧困なのに、それが頑固な史的必然論一点張りのせいで、いよいよ堅苦しくなっています。 》 294頁

 《 ピューリタン系の倫理意識が、人間文化を著しく歪めた。 》に深くうなずく。<明日へつづく。

 ネットの見聞。

《 現在、全国にあるショッピングモール(ショッピングセンター)の数は実に3096にのぼる(2012年12月末)。ショッピングモールが存在しない県はゼロ。 》

 ネットのうなずき。

《 大学入試の二次試験、ペーパーテストから人物重視(面接試験)。おれなんざまっさきに落とされるな。まあ、一次で落ちてるだろうが。 》

《 台風来るなら来い。俺は休む。 》