「活字狂想曲」

 朝本屋から注文の本が届いたとの電話。「あとでうかがいます」とにこやかに返事したが、強風に嫌気が差し延期。近くのスーパーだけ食料の買出しで行く。昼のNHKニュースで三島の鰻の蒲焼まつりを放送していた。同じ内容を静岡ローカルでも見せられる。つづく「ひるブラ」は沼津港からの生中継。深海魚など。三島、沼津、今週末は人が来そう。

 昨日の『あなたは古本がやめられる』で、
《 これは、個人的に唯一繰り返し拾い読みしている倉阪本。今の時代にこそ相応しい「元気の出る」窓際ブンガク。読みそびれておられる方はこの機会に是非。悶死必至、爆笑保証の1冊。 》 120頁
 倉阪鬼一郎『活字狂想曲 怪奇作家の長すぎた会社の日々』時事通信社1999年初版を読んでみた。印刷会社の版下文字校正係で糊口をしのいでいた十一年間の出来事。大笑と苦笑、失笑が交互に急襲、困った困った。これはオモシロイ〜!

《 校正者に要求されるのは一にもニにも根気だが、なかには「ただ根気だけ」という因果な仕事がある。いくつか紹介しよう 》
《 1. 約款・規約(保険・クレジットカード等)  (引用者:略)言うまでもなく、校正は地獄である。》
《 2. 時刻表  多くは語るまい。間違えると大問題になるから息を抜けないところがつらい。 》
《 3. 理系の学術論文。種村季弘によると、数式というのは解こうとするから嫌になるのであって、眺めているび分には面白いのだそうだ。しかし、眺めている分には面白いのであって、校正するとやはり嫌になるのである。 》
《 4. フランス語・ドイツ語(入試)  英語ならいい。意味がわからないものを校正するのはつらい。 》
《 5. アラビア語(石油会社の中近東向けカレンダー)  ついに究極のものが出てしまった。(引用者:略)左手でにゅるにゅゆる、右手でにゅるにゅる……一週間やったら間違いなく人格が崩壊するだろう。 》 56-57頁

《 最期に唐突だが、私は「勤老感謝の日」を見逃すという弁解の余地のないチョンボをやったことがある。 》 84頁

 浅羽通明の懇切丁寧な解説が、この異様に面白い「漫文」の無類の価値を解き明かしている。

《 宮本常一民俗学者による『日本残酷物語』の継承者は、意外なところから現れたのである。 》

 『日本残酷物語』は昔、平凡社から全五巻で出版された。本棚には、五十年近い昔古本屋で購入した『日本残酷物語 第二部 忘れられた土地』平凡社1960年再版がある。今は平凡社ライブラリーで読める。

 読みたい本が目白押し。再刊を知り再読したくなったグスタフ・マイリンク『ゴーレム』、フラン・オブライエン『第三の警官』、アルフレート・クービン『対極』といった小説から、積読本のチャールズ・ディケンズエドウィン・ドルードの謎』(小池滋・訳)講談社などなど。

《 こうして『エドウィン・ドルードの謎』は永遠に未完成となったが、本書の訳者・小池滋氏は「ディケンズが生涯をかけて追究した人間悪が最高潮の段階に達した」重要作として評価する。 》 藤原編集室
《 本書を『海外ミステリ名作100選』(早川書房)に選んだH・R・F・キーティングも「この作品は未完成ではあるが、にもかかわらずすばらしい成功を収めている。犯罪小説(クライム・ノヴェル)という芸術ジャンルにおける偉大な成果である」と賛辞を寄せた。 》 藤原編集室

 ディケンズはいずれ読んでみたいと、『荒涼館』筑摩書房、『オリバー・ツイスト』角川文庫、『大いなる遺産』新潮文庫、『デイヴィッド・コパーフィールド』岩波文庫、『クリスマス・ブックス』ちくま文庫を持っているけど、はあ、いつ読めるやら。楽しい煩悩。