「 詩の力 」

 吉本隆明『詩の力』新潮文庫2009年初版を読んだ。

《 戦後の現代詩を主軸にして詩歌の全般を取り上げて短い解釈を試みた。 》  「はじめに」

 作家と作品の本質的なところを簡明に明かしている。じつに深い読みだ。

《 俳句の発生を考えるには、短歌が壊れていく過程が問題になると思われる。 》  44頁

 と始まる「俳句という表現」に瞠目。室町〜江戸の短歌、俳句の流れが私にも 判りやすく書かれている。脱帽。他にも歌謡曲から小説まで本質的なものが明解に語られ、 そうか、と膝を打つ指摘に何度も出合う。二百頁に満たないが、とても充実した内容だ。

《 『暗い絵』など、今の読者にはあまり上手な小説とは思われないかもしれない。 》  124頁

《 同じことが戦後派の詩や短歌、俳句にもいえる。主観性を中心にした作品は どうしても多様性に欠けるため、今では単調なものに、主観を一行に書き流しただけの ように読めてしまうのだ。しかし、それらを戦後間もなくの世相の中に入れて見ると、 全く意味合いが違ってくる。 》 125頁

 野間宏『暗い絵』について丸谷才一鹿島茂三浦雅士『文学全集を立ちあげる』 文春文庫2010年初版から。

《三浦 それから、鹿島さんが図式的と言ったけどその通りで、「暗い絵」なんかも、 小説が図式的だけじゃなくて、そこで議論していることも図式的だから、二重、三重に 図式的でしょう。 》

 吉本隆明が危惧したとおりだ。

《 ところが、時を経るにつれて、そうした主観性の深刻さは薄らぎ、消えていって しまうのだ。そういう意味では、主観性の表現も今のところは、まだ勝ち残るものか どうか判断できないし、戦後派の作品は、同時代性を加味して読まれなければ損だ という気がする。 》 141頁

 他に陶芸、セザンヌなど考えさせられる指摘がいくつも。再読したくなる本だ。

 ネットの見聞。

《 この4月から、国民への大増税とは逆に、国家公務員と国会議員の“賃上げラッシュ” が始まった。国家公務員の給料は平均8%引き上げられ、行政職平均のモデルケースでは 月額約2万9000円、ボーナスを含めた年収では約51万円のアップだ。国会議員の歳費(給料) はもっと増え、5月分から月額約26万円アップ、年間421万円もの引き上げになる。 》
 http://news.livedoor.com/article/detail/8821470/

《 おれは「幻の百花双瞳」を読むために中公の歴史短篇集を揃えるぞ、ジョジョー。 》  米澤穂信

 陳舜臣『幻の百花双瞳』徳間文庫1987年初版は持っている。新保博久の解説。

《 さて百花双瞳だが、エッセイ集『美味方丈記』(七三年、現中公文庫)の中に 「まぼろしの百花双瞳」という一章がある。 》

《 百花双瞳は、だから架空の存在だけれども、小説ちゅうにかなり詳しく説明 されているので、らしきものを作ることは出来そうだ。 》

 『幻の百花双瞳』、まだ読んでない。

 ネットの拾いもの。

《 本能寺があるのなら理性寺もあるのでは?と検索したら杉並区にあった。 》

《 〈本能寺の変〉、直前の新資料…… 》
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140623-00000118-mai-soci