「 ホーニヒベルガー博士の秘密 」

 エリアーデ『ホーニヒベルガー博士の秘密』福武文庫1990年初版を読んだ。 表題作と「セランポーレの夜」を収録。表題作は、ルーマニアブカレスト の邸宅で亡夫の遺した執筆の解読を依頼された男の不可思議な体験談。書庫 には膨大な貴重本が壁一面、天井までを覆っている。亡夫はインドのヨガの 修行に心身を捧げ、ついに身を隠してチベット方面にあると言われる幻の地 「シャンバラ=アガルタ=見えざる地」へ行ったらしい。

《 しかし、見回すと私の影がなかった。(略)あらゆる努力にもかかわらず 私は見えるようになることができず、もとに戻れたのは真夜なか、ベッドの 上で目覚めてぐったりしているときだった。 》

 そんな記述のあるノートを三日後に返却に行くと。

《 老女中が出迎え、奥様はお病気です、お嬢様はパリへお立ちになりました と言った。 》

 翌年(一九三五年)、再訪すると、二か月前のことを誰も知らないと言う。

《 三方の壁を囲んでいた木造の書棚はなくなっていた。呆然として私は 扉を閉めた。 》

《 「でも、先生、蔵書が散逸してから二十年になりますのよ……」 》

 時空の奇妙なねじれ。それにもまして興味深かったのは、「シャンバラ」。 ジェームズ・ヒルトンの『失われた地平線』新潮文庫の理想郷はシャングリ・ ラ。

《 摩訶不思議なチベットの理想郷を描いたユートピア奇譚 》 帯文

 『失われた地平線』は1933年、『ホーニヒベルガー博士の秘密』は1940年の 刊行。

 「セランポーレの夜」(1940年)は、インド、カルカッタ近郊の森で三人の ヨーロッパ人が体験した摩訶不思議な出来事が綴られている。これまた時空の 飛躍。

 ネットのうなずき。

《 こんなこと言い始めたら、どこまででも拡大解釈できるから、 3要件なんてのは、全く意味がない、てことがはっきりしましたよね。⇒ 東京新聞:集団的自衛権 経済打撃でも武力行使 集中審議で首相:政治 (TOKYO Web) 》 松井計
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014071502000129.html

《 ✕芸術家だから逮捕されるべきではない

  〇公権力が表現を取り締まるべきではない  》

 ネットの見聞。

《 むかし郷ひろみが、歌手にならなかったら何になっていたかと いう質問に、社長と答えた。「どこの社長ですか」「会社の社長です」 「なんの会社ですか」「だから会社です」。国会の安倍の答弁を聴いて いてふと思い出した。 》 藤岡真