「チリ交列伝」

 青富士。晩夏。

 昨日訃報を知った伊藤昭久『チリ交列伝』ちくま文庫2005年初版を読んだ。 副題「古新聞・古雑誌、そして古本」。これは面白い。出久根達郎の解説の結び。

《 本書はそのタイトルの如く、ひと筋縄ではいかぬ、まことに複雑な 内容の一奇書であり、後世に残すべき風俗資料の好著であると、 声を大にして言う。 》

 同感。「第一部 チリ交列伝」は、やたらに面白い人物列伝だが、 「6 チリ交・夫婦」は元やくざ(テッポウダマ)と元水商売の夫婦。 映画を地でいくようで、じつに印象深い。ある問題が収束して。

《 「あの時は仁侠映画をみているようだった」とタカちゃんがいった。 》

《 「月岡さんには過ぎた女房ってところですかね」とイマイチがいった。
  「そんなところだ」と所長が応えた。
  「一緒になれたのは出雲の神様の手違いだったんでしょうかね」とイマイチ。
  「神様だって寝惚けることはあるさ」と所長。事務のおばちゃんがククッと 笑った。 》

 長光寺のイベントは、境内で長大な和紙に住職が手本を見せた仏の線描を、 数十人の親子が濃淡三段階の墨汁で好みの筆で好きなように描くというもの。 一メートル余の大きな仏顔もあれば、十センチ足らずのもある。これは愉快。 広場で乾かせて、それぞれが好きな部分を切り取ってもらって持ち帰った。 天候にも恵まれて好評裡にお開き。

 ブックオフ長泉店で二冊。近藤史人『藤田嗣治 「異邦人の生涯」』講談社 2003年5刷帯付、山口雅也『垂里冴子のお見合いと推理 vol.3』講談社文庫 2013年初版、計216円。

 ネットのうなずき。

《 「中国が攻めてくるー!」とか「機雷が爆発したら日本に原油が来なくなるー!」 とか妄言を言うのは勝手だけど、まずは汚染水を止めて、原発事故を収束させて、 使用済み核燃料の安全な処分方法を開発して、それからにしてくれ。天ぷら野郎の 集団的自衛権原発事故という現実からの逃避にしか見えない。 》

 ネットの見聞。

《 学問というのは、勝手に思いついたことを話したり書いたりするものではない という考え方が徹底していた。 》 上久保誠人
 http://diamond.jp/articles/57998?page=5

《 「現実を単純化している」という批判は誰が言うことにもだいたいあてはまる。 「単純化されて見落とされた重要なもの」を示さない「現実を単純化している」は 誰かのいうことにケチつけたい人の常套句です。覚えておくといいよ。 》  増田聡