「 遊び時間 」

 冷え冷えと雨降る暗い木曜日。オイルヒーターを出して起動。周囲が本だらけなので 火の暖房器具は使えない。ゆっくり温まればよし。木の椅子に腰を落として本を読む。 温かさに眠くなる。いい遊び時間だ。

 丸谷才一『遊び時間』中公文庫1981年初版を途中まで読んだ。いいエッセイ集だ。

《 近代日本文学では、謙虚な作家はどうも損をする傾向がある。 》 23頁

 画家でも同じだ。団体の中で政治的に動いて権威を得た画家はいつしか忘れられる。 謙虚な画家は没後再発見され、評価が上がり、広まってゆく。一例が小原古邨だ。

《 ですから今ぼくが言った、読者の協力といふことを批評について見れば、作品は 批評家の協力を得てはじめて完成するといふことになる。 》 25頁

 薄田泣菫の随筆を高く評価して、その一文を紹介。

《 ぼくは、これほど生き生きした鴎外の一筆がきの肖像を、ほかに知らない。
  森氏はかう言って声高く笑つた。その声には、どこか馬の上で笑ふやうな 軍人式なところがあつた。 》 39-40頁

《 ぼくは折口信夫のよい読者ではない。将来もよい読者にはなれないだらうといふ 気がする。 》 50頁

 批評家の河上徹太郎について。

《 拙い説明を補ふために対照をあげれば、小林秀雄は袴をつけてづかづかはいつて来る。 この歩き方が捨てがたいことはもちろんだが、ぼくは河上のそれのほうが風情があつて 好きだつた。何か、無理がないやうに感じられたと言つてもよい。 》 55頁

 森鴎外折口信夫小林秀雄。私の関心の周縁にいる文人たち。

《 ぼくたちの日本文学が、古くなるまい、新しくならうと必死になつて願いひつづけながら、 どんなに多くの貴重なものを捨ててしまつたか、考へてみると恐しいくらゐなのだ。 》  66頁

 先だってまで開催の『美少女の美術史』静岡県立美術館と千葉市美術館で催された 『鏑木清方と江戸の風情』を思う。後者について高階秀爾は書いている。

《 この江戸以来の豊富な遺産の継承者という視点から改めて清方芸術を捉え直した 意欲的企画である。 》 毎日新聞9月18日夕刊

 二十世紀の日本美術を考えるうえで、前衛芸術運動等を主軸に据えるのはなく、美少女や 江戸以来の豊富な遺産を継承している作品をこそ視野に入れるべきではないか、と思う。 小原古邨、川瀬巴水、高橋松亭ら伝統木版画絵師、宇野亜喜良谷内六郎イラストレーター をも視野に入れた、もうひとつの美術史。

 小原古邨、高橋松亭、1945年に死去。
 川瀬巴水、1957年に死去。
 宇野亜喜良、1957年、カルピスを退社、フリーランスのデザイナーとなる。
 谷内六郎、1956年から『週刊新潮』の表紙絵を担当。
 鏑木清方、1972年に死去。
 味戸ケイコ、1973年講談社『年鑑日本のイラストレーション'72』でやなせたかしが注目。 季刊『詩とメルヘン』に採用。

 この年鑑、収録作家が豪勢。赤瀬川原平から和田誠まで。上げ潮の勢いを感じる。 1972年といえば、坪内祐三『一九七二 「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」』。

《 ところが日本では、第一次大戦後の文学革命は流産に終り、文学風土の革命は失敗し、 私小説自然主義を核として成り立つ日本「純文学」は生き残った。(中略)そして 一群の若い作家たちは、第二次大戦の後、それに対して露骨な挑戦を試みようとしたのである。 それが日本の戦後派だつた。 》 79頁

 大正時代の日本画の挑戦。14日の紹介記事。

《 大正期を頂点として、日本画はどんどん駄目になりました。 》 宮本和英
 http://togetter.com/li/744496

《 ぼくはやはり、現代史とは書くものではなく、生きるものであると考へてゐる。 歴史叙述に必要なだけの距離はまだ与えられてゐない。 》 83頁

 ネットのうなずき。

《 映画に限らず農産物でもプロダクツでも、その核となる志に対して お金を払わなくてはいかん。そうでなくては負けて行ってしまう。 》 羽田野直子

 ネットの見聞。

《 弘南堂書店が個人全集をずらり。漱石も鴎外も荷風も芥川も茂吉も、旧版だが、 めちゃくちゃ安い。10万も出せば、近代文学の名だたる作家の全集がほとんど 揃うのではないか。 》 岡崎武志

 全集を揃えて全部を読もうという人はどれくらいかな。私ではないことは言える。

《 アナイス・ニンの小鳥たち自家装丁本ですが、三浦しをんの堂々とエロ本を 買いたいみたいな解説はすぐに外すべきと判断し、糊ひくときの下紙として 使い捨てました。いらないよね^^ 》 多岐螺歩

 新潮文庫を見ると、解説は215-216頁一枚だ。切り取ってもなんら問題はない。

《 スネッピーで踊ろう! 》
 http://my.shadowcity.jp/2014/11/post-6043.html#more

  海道はじめ・スナッキーガールズ『スナッキーで踊ろう』をひねった題だが、 You Tube にこれまであるとは。
 http://www.youtube.com/watch?v=sXv5xa5jMiM

 スナッキーガールズは、吉沢京子風吹ジュン、小山ルミ。『マリア四郎  もだえ』もあるわ。二曲を収録したCDは無論持っている。『幻の名盤解放歌集* 日本コロムビア編』1992年の発売。

 ネットの拾いもの。

《 「アベコベノミクス」 》

《 ノミネート されて気がつく 流行語 》