『 日本人の心の歴史 補遺 』

 唐木順三『日本人の心の歴史 補遺』筑摩書房1972年初版前半を読む。中世、近世の特色が あらためて理解できる。おさらいのゆな復習のような。そして本編で触れられなかった 和泉式部、といえばこの歌。

《  あらざらん此の世の外の思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな  》

《 和泉式部といふ女は、ひと夜ひと夜に、一年一年に、己が生命を燃し盡くす。それが 彼女の「在る」或ひは「有る」といふ證明である。即ち生の存在証明である。 》  「和泉式部の季節」39頁

《 言葉にすれば尋常になつてしまふ憂悶を抱いて、尋常人と次元の違ふ処に在つて、しかも 情事といふ尋常事の中に身を燃して、その燃焼において孤獨な自己の存在を證明しながら、 それを言葉によつて歌にするといふところに彼女はゐた。 》 「和泉式部の季節」40頁

 和泉式部、すごい人だったのか。

《 彼女は清少納言ととも交わりのあつたことが二人の間の贈答歌によつても知られるが、 清少納言とは非常に違ふ。 》 「和泉式部の季節」41頁

 永福門院(一二七一〜一三四二)の七十二年の生涯は、いやはや多難。

《 十八歳にして御即位早々の伏見天皇中宮になられた。天皇、門院ともどもの歌の師は 京極為兼である。門院は七十二歳をもつて没せられたが、その間に、皇位継承をめぐつての 持明院統伏見天皇はこの統)と大覚寺統の争ひ、それにひきつづいての南北両朝の対立、 また日野資朝等のいはゆる正中の變、楠木や新田の倒幕、建武中興、吉野遷幸等、さまざまな 動乱があひついで起つてゐる。 》 「白と影──永福門院のこと──」73頁

《 伏見天皇の在位は十一年間であるが、先皇の後深草、龜山、後宇多の三帝はなほ上皇 或ひは法皇として御在世である。単一の宮廷といふものは既になく、両統また先帝先先帝は、 おのおのがおのおのの利害また権勢欲をもつて動き、そこへ幕府の介入もあつて、勢力関係は 複雑であつた。大義も動けば陰謀も動く。忠臣も逆臣も、逆臣も忠臣も、忠となつたり逆と なつたりして動く。 》 「白と影──永福門院のこと──」76頁

《  眞萩ちる庭の秋風身にしみて夕日の影ぞかべに消え行く  》

 上記永福門院の歌に前川佐美雄の短歌を連想。

《  夕焼のにじむ白壁に声絶えてほろびうせたるものの爪あと  》

 沼津市芹沢光治良記念館へ友だちの車に同乗して行く。明日からの「沼津の未来の巨匠たち」 展の準備を手伝う。函南町の仏の里美術館で展示した子どもたちの絵の巡回展示。帰りがけに ブックオフ沼津南店へ寄る。愛川晶『うまや怪談』原書房2009年初版帯付、フェルディナント・ フォン・シーラッハ『犯罪』東京創元社2011年6刷帯付、計216円。

 ネットの拾いもの。

《 国会の熱い話題はAIIBとドローンらしい。 》