『日本文学史序説 上』三

 加藤周一『日本文学史序説 上』ちくま学芸文庫2009年8刷、「第三章 『源氏物語』と『今昔物語』の時代」を読んだ。

《 仏教の大衆化と大衆の仏教化は区別しなければならない。一○世紀から一ニ世紀末まで日本でおこったことは、 前者であって、後者ではなかった。 》 187頁

《 勅撰集の選者に女は一人もいなかったし、今日知られている歌論の著者に女は一人もいなかった。歌は宮廷文化に 組みこまれ、宮廷文化の中心は男である(中略)。和泉式部がありえたのは、文学の制度化の故にではなく、制度化にも 拘らずであり、宮廷文化が女房文化だったからではなく、まさに女房がその中心にいなかったからである。歌によって 身を立てた時代に、女の歌人たちは、歌によって自己を表現しようとした。 》 201頁

《 女の場合は、大いにちがう。女房として宮廷の内部に入っても、行政機構には参画せず、外部とはつながりがなく、 女の世界は宮廷を超えず、殊に女房社会の仲間そのものを超えなかった。 》 229頁

 11日の『 UMALALI 』を思う。決して豊かではない生活が、ベリーズのウェブサイトからうかがわれる。訪問しても このCDのような歌声には、ハバナのようには出合えないだろう。生活の範囲は狭小であっても、彼女たちの歌はじつに 豊かで深い。聴くたびに感涙。これはなんだろう。男にはない、女性の本来的な力だろう。ただ頭を垂れるのみ。こんな CDは初めてだ。訪問して女性たちをただ眺めていたい気もする。苦難を受け入れ包容するオバサンたち。

《 『源氏物語』の文体は、作者・読者・登場人物が、極度に閉鎖的な小社会に完全に組みこまれていた条件のもとに おいてのみ、成立し、日本語による表現の可能性の一つを──しかし決してその全部ではない──、おそらく極限まで 追求したものである。 》 242頁

《 『源氏物語』をして必然的に大長編小説たらしめたものは、何であったか。私見によれば、それは、時の流れの 現実感、すべての人間の活動と喜怒哀楽を相対化せずには措かないところの時間の実在感、あるいは人生の一回生という 人間の条件の感情的表現であった。 》 245-246頁

《 いずれの場合にも、こういう男たちは、一人の女の姿のなかに、もう一人の女の表情を重ねて眺め、過ぎ去った恋の 余情と始まろうとする情事の予感をない交ぜ、過去と未来とを一時の感情に凝縮させることで、かえって、年月の流れを あざやかに浮び上らせている。 》 248頁

 自らを顧みて苦笑。いかんいかん。

《 (『今昔物語』がたとえば一九世紀末の福沢諭吉に影響したわけではないが、『今昔物語』にあらわれ、「狂言」に うけつがれ、川柳雑俳にもみえた偶像破壊の精神が、もしあらかじめなかったとしたら、福沢が神棚を踏みつけて祟りが ああるかないかを試すことができたかどうか疑わしいだろう。もちろん大衆は「極テ愚」であった。しかしそればかりでは なく、その「愚」を見破って乗り超える勇気も、大衆のなかにひそんでいたのである)。 》 267-268頁

 慧眼だ。

 ネットの見聞。

《 近代日本と自由 ―科学と戦争をめぐって― 》 山本義隆科学史研究者)
 http://www.kyoto-seika.ac.jp/about/files/2017/02/161021_oms_9th_transcription.pdf

 山本義隆の奥さんは画家の山本美智代さん。彼女の後輩が味戸ケイコさん。山本さんが味戸さんの初個展(1985年)を世話した。 山本さんとは面識があり、多摩美術大学の山岳部で味戸さんの先輩とは後日知った。以前にも書いたが、新宿紀伊国屋画廊での 山本さんの個展で、中井英夫氏から言われて彼女の新画集『銀鏡』三彩社1976年422番一万円を買った。財布には千円のみ。 帰りの切符は買ってあったからほっ。寄せられた詩や文には中井英夫をはじめ、瀧口修造寺山修司金子兜太高柳重信、 山中智恵子、佐佐木幸綱矢川澄子吉岡実らその時代を象徴する錚々たる詩人、俳人歌人らが並ぶ。なんと豪勢な。編者は 常住郷太郎。彼が編集兼発行した雑誌『南北』最終号1969年、裏表紙には前作になる『山本美智代 印刷画集 銀鍍金 (ぎんめっき)』の広告。執筆者には稲垣足穂、加藤郁乎、種村季弘塚本邦雄白石かずこ田中小実昌富岡多恵子高橋睦郎ら、またまた錚々たる人たち。この二冊は、昭和四十年代の文筆家の新宿梁山泊だ。

《 国民の税金を投入し実施した公務。その記録は国民の共有財産だ。それを政権や利害当事者だけの自己判断で隠すことは 民主主義に反する。立派な行いのはずのPKOを自ら闇に封じ込めるなら、そこに封印したい何かがあるに決まっている。 即刻開示すべきだ。 》 清水 潔
 https://twitter.com/NOSUKE0607/status/831313215116029954

《 この尾崎氏の言葉の正しさは昭和と平成の歴史が裏付けている。1935年の天皇機関説事件と国体明徴運動で戦闘的国家が 形成されて、わずか10年でこの国は破滅の淵に瀕したが、敗戦後70年の平和はこの国に歴史上最大とも言える繁栄をもたらした。  》 山崎 雅弘
 https://twitter.com/mas__yamazaki/status/831124469099868160

 ネットの拾いもの。

《 「オシャレ」な格好して貧困問題を語るおばあさんw こういう身勝手な年寄りが一番困るんだよな。 》 木下斉
 https://twitter.com/shoutengai/status/831085055191584769

《 しかしそう言う経緯は一切目に入らずジパングの臣民は「トランプ大統領閣下とツーカーでゴルフなさったおらだづの 晋三センセエは本当に傑物だありがたくて目が潰れるだ」と大喜びなのであった 》 瀬川深
 https://twitter.com/segawashin/status/831301222741188608

《 「AVを法規制すれば、結婚率が上がって人口が増える」って、戦後に聞いた台詞の中で、トップクラスに馬鹿だな。 》  高橋けんじ
 https://twitter.com/Q47SM9/status/829656006883840000

《 君の話にはメリットがない(シャンプーだけに) 》