『日本文学盛衰史』

 高橋源一郎日本文学盛衰史講談社2001年初版を読んだ。あの石川啄木が渋谷のブルセラショップのアルバイト店長!  なんと軽佻浮薄(褒め言葉)、折り紙展開図のような大風呂敷(褒め言葉)の、なんてすっ飛んだ小説だろう。まさしく 文学の冒険

《 十一日、日曜日、桜は満開になった。二百万東京市民がすべてをわすれて花見をする日であった。 》 41頁

 きょうは十二日。三嶋大社へ友だちと花見に。最高の花見日和。それは措いて。明治後半の文士文人がぞくぞく登場。北村透谷と島崎藤村

《  藤村は透谷が耳にヘッドフォンをつけていることに気づくと、窓際まで這っていった。
  「北村さん!」
   透谷は目を開けるとニコッと笑った。そしてヘッドフォンをとるとそのまま藤村の耳に当てた。力強い、だが同時にやる瀬ないヴォーカルが藤村の耳を満たした。
  「ジャニス・ジョプリンさ。島崎、これがほんとの詩だぜ。ジャニス、ジミ・ヘンドリックスジム・モリスン鈴木いづみ、おれの好きなやつはどいつもこいつもどうして早死にするのかねえ。島崎、お前は早死にするな。負けるんじゃねえよ」 》 57頁

 明治後半と1990年代後半が縦横に交錯する。

《 この田山花袋という人は退屈な小説を他人に読ませるのが趣味だったのだろうか。これなら『失楽園』の方がセックスシーンがあるだけマシではないか。 》 190頁

  アダルトビデオのカメラマンにあきれられる田山花袋はにわかAV監督を務める。その顛末はあまりにバカバカしく、上品な私は引用できませぬ。興味ある方は『蒲団'98・女子大生の生本番』の章をお読みくださいませ。

《 金田一は山本太一郎の書いた地図を持って、啄木が店長をやっているというブルセラショップを訪ねた。 》 231頁

 以下略。高橋源一郎は語る。

《 一九九八年秋も終わろうとするある日の深夜、漱石夏目金之助先生と差し向かいで話せる機会を持つ者は幸いである、とは思っていても、やはりビビるね。 》 321頁

《 「あんたずっとスランプだろ。他の作家がどう噂してるか知ってる? 『鴎外はもう終わった』『鴎外か、そんなやつもいたな』『鴎外? 誰それ?』『鴎外、公害、問題外』」
 「もしかして、喧嘩売ってる? 》 415頁

 ネット、いろいろ。

《 そしてさらに、書きなおし、焦点を動かし、組み立てを変え、その素材のすべてを、新たに考案した、物語を入れる 有機的な形式に押し込むのに一年かかった。その編集の過程で、場面は混ざりあったり、カギで留められたりした」 》  藤原編集室
 https://twitter.com/fujiwara_ed/status/851950217666732032

 『日本文学盛衰史』の成立過程を語っているよう。

《 かつて好きだった作家でも輝きを失って見えるときはある。もちろんその逆もある。そんなとき、自分の才能に対する受容器の衰えなのか、それとも作家が衰えてしまったのか。様々なことが考えられるだろう。大事なことはただ一つ、作品は輝きを失わないということだ。天才の作品という評価はずっと残る。 》 杉江松恋
 https://twitter.com/from41tohomania/status/851314757097242624

《 近代市民社会論は「合理的に思考して自己利益を持続的に最大化する解を選ぶ人間」をベースにした体系でしたが、現代の市民たちは「自己利益が今この場で可視化される解を選ぶ」ことにしたようです。「長い目で見て」とか「間尺に合わない」とか言う人を政官界でも財界でもひさしく見たことがない。 》 内田樹
 https://twitter.com/levinassien/status/851930340163633152

《 本屋大賞がらみのいろんなツイートをすべて吹き飛ばした「本屋大賞を土屋大鳳に空目」というツイのインパクトたるや。 》 大矢博子
 https://twitter.com/ohyeah1101/status/851808359166693377

《 「彼女の作った料理がすごくまずかった時の紳士な対処法」選手権の結果を発表します

  最優秀賞
  「絶対に俺以外に食べさせるな」

  金賞
  「食べずにそのままとっておきたいぐらいだ」

  高齢の住職賞   「うまさ控えめだね!」 》 坊主
 https://twitter.com/bozu_108/status/851352742555656192