『主権者のいない国』三(閑人亭日録)

 白井聡『主権者のいない国』講談社2021年初版、「第二章 現代の構造─新自由主義反知性主義」を読んだ。凄い洞察力、分析力だ。付箋はやはり林立。天皇制と転向、 反知性主義など、じつに優れた論考だが、引用は省く。

《 政治がかくもあからさまに反知性主義に自らの権力基盤を見定めたことの意味が、考えられなければならない。 》 118頁

《 今日、安倍政権支持者に典型的に見て取れる態度は、合理的な信頼ではなく、軽信・盲信であり、それは当然崇拝に接近する。他方、治者の側は、統治者を自分で 自分の首を進んで絞める愚昧な群衆として扱い、そこからたっぷり搾り取ろうというスタンスに変化する。 》 119頁

《 「日本社会は同調圧力が強い」とは、非常にしばしば指摘されてきた事柄であるが、一体われわれは何に同調させられるのか。その核心にあるのは、「敵対性の否認」に ほかなるまい。 》 145頁

《 要するに、この国には「社会」がない。社会において本来、その構成員のあいだで潜在的・顕在的に利害や価値観の敵対関係が存在することが前提されなかえれば ならない。しかし、日本人の標準的な社会観にはこの前提が存在しない。 》 145頁

《 見てきたように、日本的な「敵対性の否認」もまた、今日の反知性主義の世界的文脈に見て取れる「否定的なものの否認」の一種に数えられる。近代主義の立場から すれば、社会はその社会に内在する敵対性を正面から認め、それを引き受けることによって、一段高次の共同体へと生成することができるし、そうしなければならない。 それが、「否定的なもののもとへの滞留」を通じた弁証法的生成の論理である。ところが、すでに見てきたように、ネオリベ資本主義の要請から啓蒙主義のプロジェクトは 公然と放棄され、制度的学問の体系は、「否定的なものの否認」に貫かれるようになる。してみれば、反知性主義の日本的伝統・その特異性は、こうした世界的傾向を 先取りしたものであるとも言える。全く誇らしくもないが。 》 146-147頁

《 成熟の拒否、すなわち否定性を媒介とした成長を拒否する所作が「クール・ジャパン」、「カワイイ」カルチャーとして輸出商品になりうるという文脈もここにある だろう。それは、世界史の文脈において近代化を強制され、その近代化がどこまでも表層のものにとどまり、その表層性こそをナショナル・アイデンティティにしてしまった 日本の、グローバルな近代化に対する復讐であるとも言える。例えば、村上隆はそのような文脈をはっきり自覚して、自らの作品を芸術史の文脈に乗せた。 》 147頁

 ネット、うろうろ。

《 静岡県内変異株 三島・遺伝研でゲノム解析 発生状況、早期把握へ【新型コロナ】 》 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/892891.html?lbl=855

《 私たちは何を見せられているのでしょう?
  総理大臣は、五輪開催の要件について答えず、環境相は妄想の数字をCO2削減目標にする。どちらも、実社会において決して許されない所業のはず。 政府のすることは治外法権になってしまったのか?どうして咎めることができない? 》 Koichi Kawakami, 川上浩一
https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1386000164918153223

《 一体、菅政権と五輪組織委は何を考えてるのか。

  オリンピックのために、看護師500人を5日以上派遣をと要請した文書を、#しんぶん赤旗 が入手。
  コロナ病床が逼迫し、マンパワーが足りず、医療崩壊に直面してる医療界に、よくこんな要求ができるな。 》 カクサン部長
https://twitter.com/kakusanbuchoo/status/1386096759454109696

《 というか直近で、いつ普通に日本に戻れるか心配になってきた。
  自国民が普通に帰れるかどうかを心配する状況で、オリンピック開催とか?頭どうかしてない? 》 m-take
https://twitter.com/takeonomado/status/1385711658329427970

《 今回の発令は「三度目の正直でなく二度あることは三度ある」に転ぶと思う。確実に。菅さんが五輪を強行することで政権を維持し、選挙に臨むことしか考えてないから だ。追い詰められ、貧苦に喘ぐ国民のことなんざまるで考えちゃいないのだ。謝罪するフリはするけど誠意を微塵も感じないのはそのせいだ。 》 立川談四楼
https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1386164041882562561

《 ロック・ミュージシャン山崎春美の、反原発・反オリンピックを叫ぶ必死の声調は、核実験で殺された幾万の原住民たちを呼び寄せた。そう、俺たちは死者のメディア ……。経産省前、「日本祈禱團・JKS47士」の抗議法会も5年目の春を迎えた。《幾億の無告の民よ蹶起せよ!悪しき者らに鉄槌くだせ》 》 福島泰樹
https://twitter.com/yasukizekkyo/status/1385755459894710272