里見龍樹『不穏な熱帯』六(閑人亭日録)

 里見龍樹『不穏な熱帯  人間〈以前〉と〈以後〉の人類学』河出書房新社二○二二年一一月三○日初版発行、「第四章 イメージとしての島々」を読んだ。不穏な姿が現れてくる。

《 私自身のこれまでの民族誌も含め、多くの人類学的研究は、たとえばアシの島々のような景観を「物覚えのよい景観」とみなし、人々の社会的・歴史的な活動の痕跡をそこに読み取ろうとしてきた。先にトーマスに見たような歴史的人類学のアプローチもこれと同様である、これに対し、右の民族誌でハリスンが想定しているのは、より複雑な関係である。すなわち、セピック地方に見られる景観とは、人々が自らの社会的・歴史的痕跡を意図的に消失させる結果現れる、「自然/社会」や「自然・歴史」という通常の二分法を──そればかりか、次章で視るような、「自然=文化」という現代的な一元論をも──逃れrるような景観にほかならない。右で見たような水路や持ちは、河川の氾濫や草木の繁茂といった人間〈以前〉の現象に根差しつつ、それと同時に人々が環境に手を加えるのをやめることによって立ち現れる、ある意味で人間〈以前〉の「自然」としてある。このようなハリスンの洞察にはたしかに、第二章で見たようにいわゆる存在論的転回が問題にした「自然/文化」の近代的二分法、さらには、「すべてが自然的かつ社会的なハイブリッドである」とする関係論的な一元論をも超えて、メラネシアにおける「歴史」と「自然」を非 - 近代的な仕方で考える手がかりがあるように思われる。
  さらに、ハリスンの描くセピック地方における自然環境との独特な関わり、具体的には右で見た水路や道といった両義的な形象は、ストラザーンの言う「イメージ」、すなわち社会的・文化的な文脈化からの切断や脱落を具現する形として理解されうる。(引用者・略)他方、すでに見たようにストラザーン自身、メラネシアの地形や景観が、社会的・文化的文脈化を逃れる「イメージ」として体験されうることを指摘しており、その限りにおいて、セピック地方における両義的な地理的形象は、彼女の言う「イメージ」にたしかに合致する。 》 252-253頁

《 それらの島々は、もともと人の手で築かれている以上、「手付かずの自然」ではないが、かといって、以下の第三部で論じるように、「自然的」かつ「社会的・文化的」なハイブリッドなどとして理解されうるものでもない。それらはむしろ、セピック地方の水路や道と同じように、島々を結ぶ広義の交換という「社会的」なネットワークやその歴史からたえず脱落する無関係の形象、あるいはストラザーンの言う「イメージ」として、アシの人々と人類学者の前に不穏な姿を現しているのである。 》 254頁

《 バエの木が倒れるという出来事は、この人々が知るかぎり、一○○年あまりと推定されるフォウイアン島の歴史の中ではじめてのことであり、次章以下で見るように、このきわめて不穏な出来事は人々の間に多大な動揺を引き起こした。
  フォウイアン島の倒木は、アシの人々の前に、そしてまたフィールドワーク中の私の前に、いかなる文脈に位置付ければよいのか不明の、禍々しく得体の知れない対象として横たわっていた。 》 258頁

 ネット、うろうろ。

《 今日もメトロポリタン美術館で仕事してました。
  エトルリアの宝飾品、BC5世紀頃。この0.2mmくらいの粒度での加工精度には圧倒される。まだローマは共和性が始まったばかりで、先進都市国家エトルリアから見たら「蛮族」はローマの方だった時代。 》 m-take
https://twitter.com/takeonomado/status/1627159832296886272

《 ブリコラージュから作品制作まで、造り手たちは造っているものが自ら考え、成りたいように成っていく動きに呑みこまれる。これは主体が拡張であり、現実の拡張である。この主体の変容が起きている作品には、どんなにコンパクトであっても揺さぶられる。逆に、計画通りの作品は、大作であっても虚しい。 》 中島 智
https://twitter.com/nakashima001/status/1627158541839765504

《 このまま行くと貧困老人は負担額の増えた医療を受けにくくなり、電気代節約のため夏冬の過酷な気候にも勝てないので、自然と高齢者の生存率が下がっていくのではないだろうか。そうなりそうなのを放置することで事実上見捨てているのだから、社会全体でゆっくり殺していっているとも言える。 》 大野左紀子
https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1627455403314540545

《 マイナンバーカード事業の入札実態が8割超も「無競争」という異常事態に陥っていると判明。2兆円超が注ぎ込まれているマイナポイント事業においても、五輪汚職事件で悪名高い「電通」が巨額のCM事業を連続して受注するなどしている。カード押し付けに躍起となる自民党政府との癒着構造の追及が不可欠。 》 異邦人
https://twitter.com/Narodovlastiye/status/1627451342657835008

《 五輪汚職・談合事件によって「電通」の入札資格を停止する自治体が相次いでいる中で、自民党政府が巨費を注ぎ込んで垂れ流している「マイナポイント」のCM事業は、相も変わらず「電通」が連続して受注しており、今も平然と新しいCMが流されている。ここまで来ると自民党政府も立派な「共犯者」だろう。 》 異邦人
https://twitter.com/Narodovlastiye/status/1627459414692331520

《 元自衛艦隊司令官が語る 身の丈超えた「安保大転換」/滝野隆浩・社会部専門編集委員 》 毎日新聞
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20230207/pol/00m/010/011000c