『空海論/仏教論』三(閑人亭日録)

 清水高志空海論/仏教論』以文社2023年4月20日 初版第1刷発行、 後半の「第二部 『吽字義(うんじぎ)考』」を少し読んだ。

《 先にわたしは、空海古代日本における独創的な思想家であったと述べたが、著作によってみずからの世界観を構造的に説き起こした日本人は、彼が始めてであって、彼の以後も長く途絶えたと言っても過言ではないだろう。 》 128頁

《 釈迦仏教から密教までの仏教の展開は、縁起や離二辺の中道の思想を幾度も再解釈するなかで生まれてきたものであると本書では見なしている。それは古代の哲学であるとともに、西洋的な世界観から今日突き当たった限界を超える視座を持つものでもある。 》 129頁

《 つまり、吽字を構成する四つの文字は、1「因縁」と、2否定辞と、3「損減」と、4「増益」の四つの字相から成っているというのである。 》 136頁

《 十二支縁起には、それによって情念の増大の局面が順に辿られる順観と、それらが逆に辿られる逆観(還滅門 げんめつもん)がある。これらはいずれもループする構造であり、互いに反対向きに辿られるが、このうち後者はまさに、「Aがないから非Aがない…」「非AがないからAがない…」というかたちで、原因を「A」にも「非A」にも帰さないという意味で、第四レンマの構造そのものを明らかにするものである。これは『中論』による縁起説の解釈から出て、のちの大乗仏教に最大の影響を与えた「A」と「非A」との「相依性(そうえしょう)」と呼ばれる関係だが、縁起説そのものをこのように構造化して捉え、その構造を生みだすためどの項にも、その原因が帰されないことが示されるとき、そうしたメタ的な言明においてのみ、ようやく第四レンマは語られる。 》 143頁

《 「相依性」の構造の発見とともに、縁起を生みだすとされたそれぞれの項には、それだけでは自性(じしょう)がないとされた。「相依性」の関係においてあらゆるものは成立しており、無自性であることから、その後の大乗仏教の全体を特色づける「空」という概念が導かれるのである。 》 144-145頁

 猛暑日。午前、友だちが新聞折込の広告に惹かれて隣町のホームセンター、サントムーン柿田川へ行くのに随行。行きのバスはその先の病院へ通う人たちで満車。一時間ほどささやかな買いものを愉しんで正午前のバスに乗車。いつもは混んでいるのに、ガラガラ。駐車場もすいている。バカ暑いから出て来ないんだ。読書も進まん。ま、これは難解だから。