『応答、しつづけよ。』(閑人亭日録)

 きのう、あげるのを忘れていた。

 ティム・インゴルド『応答、しつづけよ。』亜紀書房 2023年6月2日 初版第1刷発行、「招待」を読んだ。ワクワクする。

《 筆記体で書かれた手書きの言葉は、切れ目なくつながっていく文字の線の重さと屈曲それ自体が感情を伝えます。これは、言葉が言い表せるものを超えていきますが、言葉は、私たちが言葉に付した意味によってではなく、線それ自体の表現力のおかげで、それを語るのです。 》 17頁

《 今では、このように手紙を書くことはほとんどなくなってしまって、電話や電子メールという手軽なコミュニケーションに取って代わられています。それに伴って、手紙を書く時の気づかいや自発性といったものが失われてしまいました。 》 18頁

《 気づかいと自発性をふたたび結びつけようとするのは、たんなるノスタルジーだと言う人がいるかもしれません。しかし私はそうは思いません。 》 19頁

《 しかし、多くの人が称賛する「デジタル革命」は、ほぼ確実に、おそらく今世紀中に自滅します。気候変動という緊急事態に直面している世界では、それもまた明らかに持続不可能なのです。 》 20頁

《 精神を自然の一部として、自然の働きを説明しようとする科学の主張は、自らの権威を、自らが説明しようとしている自然の上位に自らをすでに据えてしまっている精神の特権的な観点から導き出してきている以上、確かにどこか二枚舌的なものがあります。それゆえに、あらゆる種についても、それ自身の本質など存在しないと言うにもかかわらず、科学は、人間には例外的な何かがあると仮定すること、つまり自然界の上に人間を持ち上げる何かがあると仮定することから逃れることができないのです。 》 22-23頁

《 モノを物語として理解して初めて、私たちはモノと応答し(コレスポンド)始めることができます。 》 26頁

《 彼らのスタンスは、あるのではなく、なるというスタンスです。それらに応答する(コレスポンド)には、哲学者が言うように、存在論オントロジー)から発生論(オントジェニー)への移行が必要です。 》 26頁

《 彼らの違いは、最初の時点から与えられていて、その後も残りつづけます。したがって、相互作用(インタラクション)とは、間(ビトウィーン)の関係なのです。しかし、応答(コレスポンデンス)は、相手と連れ立って(アロング)進んでいくのです。 》 29頁

《 応答(コレスポンド)とは、永続的に生が展開していいったり生成したりする中で、同時に合流したり、互いを差別化したりする方法のことです。相互作用から応答への移行は、存在と事物の間に起こること から、存在と事物は間であることへの根本的な再転換を伴うものです。 》 29頁

《 真の学者は皆、アマチュアであると私は信じています。 》 33頁

《 厳密さには、事実上、正反対の二種類があるように思えます。一つは客観的事実の不屈の世界を記録し、計測し、統合することに精密さを求めるものであり、もう一つは、意識的な気づきと生き生きとした素材との間の継続的な関係において実践的な気づかいと注意を求めるものです。前者ではなく、後者にこそ、応答(コレスポンド)の厳密さがあります。 》 37頁

 参った。こんな嬉しい文章に出合うとは。

 昼前、刷り上がったA4版のチラシ「三島ゆかりの作家展 三嶋大社宝物館ギャラリー 2023年11月29日~12月3日」を受けとる。いい出来。
 午後四時半過ぎ、タレントのあばれるくんが源頼朝に扮した頼朝行列が通る。雨のため二時間近く遅れた。が、傘をさして待つ人はどんどん膨れ上がってくる。なに、この人出。降りしきる雨を浴びて愛嬌を振りまき、子どもたちに大うけ。芸能人だねえ。物見高いは人の常、というが、いやあ、これまたなかなか見られない光景だ。