『応答、しつづけよ。』二(閑人亭日録)

 ティム・インゴルド『応答、しつづけよ。』亜紀書房 2023年6月2日 初版第1刷発行、「森の話」を少し読んだ。

《 木材用に幹を切った後、根と切り株に火をつけます。火をつけると、何が出てくるのでしょうか? 褐色のタールです。タールを煮て水分を排除すると、何が得られるのでしょうか? 黒いタールです。 》 66頁

《 コールタールがタールの抽出物であるように、黒は光の抽出物です。それは光を消した後に残る本質(エッセンス)です。逆に言えば、素材に火をつけることは、その色を薄めることです。 》 66頁

《 しかしいったん火が消えれば、すべての色は黒に戻ってしまいます。コールタールの黒は、無ではなく無限の密度の指標であり、そこから、色が私たちの視覚の発火装置の中に爆発するのです。すべての色はコールタールから注がれます。そしてすべての色は、最終的にコールタールに戻るのです。 》 66頁

 味戸ケイコさんの初期の絵の黒を想起。

 昨日受けとったチラシ「三島ゆかりの作家展」を眺めていて、ふと気づいた。出品作家の久原大河クンと白砂勝敏さんは、1973年生まれだ。久原クンは佐賀県生まれで三島市日本大学国際関係学部を卒業。白砂さんは、隣の長泉町生まれで、田方農業高校卒業。二人とも美術は独学。似ているわあ。二十年ほど前に頼まれて書いた久原クンの個展の推薦文「才難は、この若者に降りかかった」を転載。
 http://web.thn.jp/kbi/taiga.htm

才難は、この若者に降りかかった


                    K美術館館長 ノーテンキ越沼
   (蜜柑のタイガー、いや未完の大河、ちょっとちがうな、未完の待機、
    ええい、転換面倒だ、未刊の大器。・・・やっぱりチィガウゥ)
   天災は忘れる前にやってきますが、天才は忘れたころにそこにいますです、はい。
このコンピュータ万歳のときに、金と女ニまるで円のない若者のアナクロ手描きの
アナログチラシに、すっげぇーおっもしれぇ!と、この高尚な私にはとても似合わない
言葉を博士たのが、このタイガーいや久原大河。日本近代文明がすっかり忘れ
知待ったビンボーを和風で楽しむ痩せ我慢からのヨイトマケ間際、オットコドッコイ
冷や汗と一緒に捻り出された宿題図面のお手上げ状態の素晴らしさを五郎次郎っと
ご覧あれ。最早、最中最中と笑うしかない極楽絵巻のただ中を、ただで見られる
天上天下唯一無比、単独のトップランナーの、インターネットよりも早く、CNN
よりも素早く、まさしく21世紀の最初の目撃者に、あなたは成る!さあさあさあ、
早いもの価値だよ!流行はこれからやって来る。

        (注:K美術館は実在します。館長はそのかぎりではありません)

注釈
 上記誤変換拙文は、久原大河君が在学(日本大学国際関係学部)した静岡県
三島市での梅津和時さんのバンドのライヴ(2月3日)で彼から手渡された初個展の
案内葉書を見て、私の別人格が突如登場して、1時間足らずで悪戯書きしたものです。
私、本人格は、久原大河君のチラシを、井川遥以上米倉涼子未満(ほのぼの~
トップギア)の実に愉快になる、珍重に価するレトロ系アートと、高く買っております。
まあ、見て損はありません。よろしく。
                             2002年2月3日節分
                           越沼正(K美術館館長)



 福岡に住んでいる久原くん、いまでは三人の子持ち。

 友だちと源兵衛川最上流部へ涼みに行く。ひろせ橋から上流を眺めると、人、人、人。思い思いに楽しんでいる。橋のすぐそばの石垣にヒメツルソバ。友だちが川に入っている女子高生に声を掛けて、その二本を抜いてもらう。手渡されたヒメツルソバの説明をし、手にもって帰宅。こういう時のお願いは女性に限る。おじさん(おじいさん)では無理じゃ。そういえば昨日午後、見知らぬ中年のご夫婦が来訪。去年のきのう、娘がお世話になりました、と高価な洋菓子の箱、二箱を持参される。友だちはかすかに覚えているだけだったが、俳優の大泉洋が頼朝行列で我が家の前にやってきたとき、ぎっしり並んでいた観衆の中で、若い女性がすっと倒れたの見て、介抱した。友だちにペットボトルを持ってきたもらった。しばらくして快方に向かった。そのことのお礼だった。当たり前のことをしただけ・・・だけど。その洋菓子がとても高価なものだと、いきさつと菓子の写真をフェイスブックにあげた友だちは、知った。たしかに美味しい。
 午後九時、歩行者天国解除。祭りは大盛況裡に終えた。面白かった。