『曇徴筆法隆寺金堂壁畫』(閑人亭日録)

 編輯兼發行者 田島志一 發行所日本佛教眞美協會『真美大観 第二册』明治三十二(1899)年十二月十五日發行の最初の図版『曇徴筆法隆寺金堂壁畫』は多色摺木版画。色がずいぶん剥落しているけれども、じつに高貴で美しい。絶妙な体躯の捻りが生動感を際立てている。凄い腕前だ。その解説「金堂壁畫(着色) 傳高麗僧曇徴筆」後半。

《 此に掲ぐる繪畫は金堂内東南隅の白壁に描ける如意輪観世音(観世音のことは廬山寺及び東寺の観音に就て見るべし)の像にして、朝鮮の僧曇徴の筆なりといふ、曇徴は推古帝の十八年(西暦六一〇年)に僧法定と共に高麗王より我朝廷へ貢進せられたりし人にて、特(ひと)り佛教に精通せしのみならず、亦儒學に達し、諸般の技藝に長じ、且つ彩畫に巧みなりしよしにて、法隆寺堂宇内部の荘飾未だ完成せざるに當りて來着し、直ちに其偉大なる手腕を金堂の壁上に揮ひたるものなるべし、此壁畫の特に外人の目を惹くことは、ドクトル、アンデルソン氏の言によりても之を知るべし、曰く、此畫は其時代(乃ち西暦第七世紀の始)以後の佛畫家の作に比して、勝るとも決して劣ることなし、其意匠設色酷だ伊太利古大家の作に類するものありと、曇徴この金堂の壁畫を描いて、南都の春日派其他の畫工に絶好の模範を授けたるのみならず、又紙墨及び碾磑(てんがい)の製造法を邦人に教へたる恩人なり 》

 ネットではこの絵画は見つからなかった。
 体躯の捻りだが、『見返り美人図』では上記のような魅力はない。  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%8B%E8%BF%94%E3%82%8A%E7%BE%8E%E4%BA%BA%E5%9B%B3