『風一つ』(閑人亭日録)

 冷たい雨の一日。ぼんやりと過ごす。病院では無為にすごすことがつらかったが、自宅ではそんなことはない。狭い書庫で三方を本に囲まれて背文字を読んでいるだけでこころが和む。・・・しかし、探している本が見つからない。小体なライト・ヴァースのアンソロジー本。第一集はあるけれど、つづく二集、三集がない。お手上げ。ライト・ヴァースを軽業詩と訳したのは詩人の藤富保男だったな。藤富保男詩集『風一つ』思潮社一九七四年八月一日発行を棚から抜く。開く。どれも短い詩。「44」。

《  道がまがりくねっている
   ことは自然におかしい
   しぼんだ頭をかかえて
   丸い風の中を
   突っぱしった   》