『死霊 七章《最後の審判》』三(閑人亭日録)

《  おお、「自己存在」!
   さて、いま、ここに、ようやく在ることになったその「自己存在」こそは、長い長い驚くべきほど長い「物質連鎖」の過酷な分離と結合のなかで積みに積みあげられつづけてきた重い重い「存在の苦悩」にその何かを絶えず圧しつぶされながら、なお、そこにいま在ることになったのだ。おお、暗黒のなかの大暗黒の果てからついに到達したところの「自己存在」! そして、いいかな、より怖ろしいことは、「何が私であるのか」という真の問いは、まぎれもなくここからこそはじまるのだ! 》 79-80頁

《  おお、俺自身の「全体」! 》 80頁

《 「あっは、これこそが俺自身なのか!」
   と、思わず俺は夢のなかで叫んだ。
  「そうさ、これがお前つまり俺の携えつづけている俺自身さ……。」 》 84頁
 俺と俺自身の問答が延々と続く。そして。

《 おお、永劫の「存在の罠」にかかった哀れな自殺者よ。 》 108頁

《 おお、自殺者よ! 私こそはほかならぬ怖ろしい酷薄残虐無残な私自身の部分であること発見したお前は、私が私自身であることは、「生の悲哀」の上でも「存在の苦悩」の中でもなく、ひたすら「自己存在すること不快」のなかに押し潰されてのみあることをこそ知った筈だ。おお、無自覚無能な「自己存在者」でありつづけてはならない。 》 108-109頁

《 おお、俺は俺であって、俺でなく、自にして他、そして、個存在であって、しかもまた、全存在なのだ。つまり、いいかな、単独者で他者で全体者であるものこそが、いま、お前達の前にいるのだ。 》 109頁