休館日

 午前十時過ぎ、知人からの電話で起こされる。いい夢をみていたのに残念。葛原妙子歌集『鷹の井戸』白玉書房1977年を読んだ。

《 人のこゑ絶ゆる日なかの流れぐも天涯をゆくうすみづごろも 》

《 燭台にらふそく立てるゆふまぐれ針葉の森天に泛きゐつ 》

《 晦冥となりしゆふぐれ一本のわが髪にくるうすばかげろふ 》

《 雑木のおくがにほそき陽の差して金と銀の木木犀は立つ 》

《 北窓に夜空晴れたり濃密にわだかまりたる死火山の群 》

 七百首以上ある厚い歌集の後半部には選出する短歌が見当たらなかった。書庫や書籍を歌った短歌もあるが、引用するまでもないだろう。本をたくさんもつ者の悩みは同じ。