『 炎の造形』『造形と総合美』

 先月末に引用した岡本太郎の以下の文。

《 光琳芸術の相反する対極はたがいにすこしも譲歩していない。この非妥協は矛盾に極度の緊張をあたえます。  》

 これらの文章から北一明への連想が働いた。あらためて北一明『炎の造形 焼きもの新入門』 海山堂1985年初版を再読。

《 私は、たしかに、厳しすぎるくらい厳しく自己を律していますので、常に自己の作品に 不満や矛盾がみえてくるのです。一般的に、矛盾がみえなくなるとき、別の言葉でいえば、 自己満足したとき、そこには”創る”という進行形から”停止”という終焉がやってくるのです。 》  10頁

《 ここで一番重要なことは、自分の美的基準を最高水準のものによって原点にすえようとする 努力です。たとえば、近代美術館などで、最近の売れっ子作家の絵や彫刻をごらんになるよりも、 大美術館や博物館で、百年以上を経た、少なくとも歴史の洗礼を受けたことのある作品を ごらんになることをおすすめします。 》 12頁

《 今日、現代という微視的な目と、歴史的にみるという巨視的な目との美的両眼によって、 過去とか伝統を一度洗い直してみるということ、それが、焼きものをとおして私が創りだそうと 苦労してきたすべてであるわけです。 》 12頁

《 古き良き時代の作品に対しては、素直に理解をよせ、さらにそれをこえた次元での創作と 作品発表をなすのが私達の使命だといえましょう。ある時代を追慕することは、その人の自由で 勝手ですが、それにおぼれてその時代が歴史の中で一番すぐれていると独善的に思い込むほど おろかなことはないとおもいます。 》 42頁

《 焼きものの重要なポイントは、炎の主導権を握るということです。 》 43頁

《 焼成温度が何度までは形がくずれずにもつかということになると、即断できませんので、 けっきょく努力をおしまずに焼いてみることが一番確かな判別方法であることにかわりありません。 必ず最終的には何段階かの温度によって焼いてみなければ、その土の性状、性質はわかりません。   》 『造形と総合美』51頁

 1985年に海山堂から同時に出版された『炎の造形』と『造形と総合美』は写真も素晴らしく、 北一明を知るのに最適の二冊だと思う。一昨日引用した岡本太郎の文の実例がここにある。

《 だが表現が明快だからといって内容も単純なのだと考えたら、もちろん大まちがいです。 》  岡本太郎

 ネットの見聞。

《 今日は泡坂妻夫さんの命日ではないか。今月河出書房新社から出る文藝別冊『総特集 泡坂妻夫』 のアンケート「わたしの好きな泡坂作品ベスト3」に答えさせていただきました。ワタシのベスト3は 「幻影城」時代の亜愛一郎物から「ホロボの神」「意外な遺骸」「G線上の鼬」。他の方の結果が楽しみ。  》 鳥飼否宇

《 第36回「吉川英治文学新人賞」候補作一覧(受賞作発表は3月3日)
  『まるまるの毬』(西條奈加講談社
  『男ともだち』(千早茜文藝春秋
  『警察回りの夏』(堂場瞬一集英社
  『絶叫』(葉真中顕/光文社)
  『誉れの赤』(吉川永青/講談社  》

 本を持っていない人ばかり。世界は広い。

《 テロに屈しない態度とは、やられたらやり返すと威勢のいいことを言うのではない。 武力ですぐに解決できないという現実を見据え、テロリストにひかれる人間を減らしていく 迂遠な作業を、迂遠と分かりつつ、粘り強く続けていく態度だと思う。 》 山口二郎

 ネットの拾いもの。

《 恵方飲み 》