《 それがフレデリック・スタール Frederick Starr である。
このスタールこそ、一九○四年(明治三十七年)の初来日以来大の親日家となり、幕末の北方探検家松浦武四郎に ついて論文を書いた日本を含め世界中で最初の人だったのである。 》 116頁上段
《 武四郎は結局は幕府役人のアイヌ系に対する冷酷な処置に我慢できず役職を退く。その後、東京の彼の家は一種の 知的なセンターとなった。 》 119頁上段
《 このあとスタールは武四郎の「一畳敷の書斎」について述べる。木片勧進で集めた由緒ある木でつくったこの書斎で 武四郎は晩年を過ごし、清貧に甘んじつつ明治二十一年に没した。 》 119頁下段
日本中の遺木を組み合わせて作られた「一畳敷の書斎」の南窓の扉は静岡県三島神社を出処とすると123頁の図にある。
《 「何らの心配無しに永久に遺存されるだらう」とこの時点(大正十年)で魯庵は楽観的であった。たしかに永久に 遺存されたが、同じ場所においてではなかった。
この建物は世人の記憶から長い間消えていた。 》 121頁下段
《 昭和十五年、一畳敷は山田の手から中島飛行機の中島久平の所有に帰した。そして戦後、昭和二十五年にその敷地の 一部が新設の国際基督教大学(ICU)に売却された。その部分に一畳敷が含まれていた。この過程で一畳敷は人々の 記憶から消え、一時その所在は不明になった。昭和五十四年ICUは一畳敷を含む泰山荘を修復、五十五年に茶会を催した。
こうして、最初に創建した松浦武四郎が死んでも一畳敷は、武四郎の旅を引き継いで南麻布から代々木上原、そして 三鷹市大沢へ移動を続け、彼方に富士山を望む地に落ち着いたのである。 》 125頁
《 こうした日記の面白さは、日記という登場人物の偶然的な登場が許される形式のゆえに、多くの人を結びつける 意外な人物が登場することである。それは松浦武四郎関連の記事である。竹清[三村竹清(みむら・ちくせい)]も 若い頃武四郎の薫陶を受けていたことがあるようだから、武四郎に関連する事項を書き留めるのに不思議はない。 先に見た明治四十三年十月二十一日の末尾に次のようにある。(中略)武四郎か全国の古建造物に用ひたる古材をあつめて 建てし 例之小座敷を見て居りし大槻如電翁曰 松浦のは全国から寄せたのぢや無い まき上げたのサ 傍の某氏曰 そりやさうでせう 同じ学統ニ属する先生の仰あるのでは間違ひない云々 電翁唖然
大槻如電については後述しよう。 》 183-184頁
《 2016年度 泰山荘の特別公開について 》 国際基督教大学
http://subsite.icu.ac.jp/yuasa_museum/taizanso_web/2016koukai.html
http://morinoyohaku.seesaa.net/upload/detail/ftp/ichijojiki_uchi-thumbnail2.jpg.html
《 スタールの遺骨はやはり富士山須走口の勝景の地に埋葬されている。 》 133頁下段
《 人はよくルース・ベネディクトの『菊と刀』をもって日本研究の嚆矢と言うが、そのときスタールを思い出すことは ほとんどない。ベネディクトは客観的方法を駆使して日本人研究を行ったが、しょせん日本人をモルモットとしてしか ていなかった。私の言いたいのは、アメリカばかりでなく戦後日本の人類学もが徹底して無視したスタールの 日本研究の方が、大正時代の日本人の心、血脈を的確に捉えていたということである。 》 137頁上段
《 魯庵は一人の人物の死とともに文化および時代にとって不可欠の部分が少しずつ失われていくことを惜しんだ のであった。魯庵が感じ取ったのは、時代によっては一人の人物の死による、その人物が背負っていた代わりのきなかい 何ものかの消失であった。 》 152頁上段
昼前、自転車で一級河川境川の狩野川接続部まで南下、川沿いに遡上。工場や住宅の裏側で見られない箇所を確認。 くねくねと曲がっていく川筋。よくもまあこれだけ曲がったものだ。一号線を越え、旧東海道を越え、三島駅西側の起点へ。 徒歩三時間以内で踏破できる見通し。曇り空でろくに汗もかかず、やれやれ。
午後、久しぶりにブックオフ三島徳倉店へ自転車で行く。アンナ・カヴァン『あなたは誰?』文遊社2015年初版帯付、 乾くるみ『セブン』ハルキ文庫2015年初版、西澤保彦『赤い糸の呻き』創元推理文庫2014年初版、矢崎存美『ぶたぶたの 甘いもの』光文社文庫2015年初版、計432円。
ネットの見聞。
《 全ては社長の趣味から始まった 三重県の製薬会社内にある「BANKYOフィギュア博物館」がすごい 》 ねとらぼ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1609/17/news008.html
《 SFコンテスト、今回これが鉄板だなと思いながら臨んだ選考の場で、鉄板どころかつまらないという意見が起こったり、 いやこれはないでしょ……と思ったやつが、なんだかわかるという評価になったり、これ実に惜しいよねと思ったやつが ほとんど空気扱いだったりで、人の評価は様々だと思い知りました。 》 小川一水
https://twitter.com/ogawaissui/status/778416752128516096
ネットの拾いもの。
《 イマドキの傷薬についてググったら湿潤云々ばかりなのはいいとして、「消毒は絶対にしてはいけません」 「ガーゼは絶対に貼ってはいけません」「傷口は絶対乾かさないように」って、その絶対やっちゃいけないことばかりで50年、 傷に対応してきた身としてはなんかだんだん腹立ってきたんですけど。 》 大矢博子
https://twitter.com/ohyeah1101/status/778422508512956420