再読『「敗者」の精神史』八(閑人亭日録)

 山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版の再読を進める。「14 幕臣の静岡──明治初頭の知的陰影」を読んだ。

《 敗者の身の処し方は勝者と異なって、自然・人間・文化に対して、もうひとつの視点を形づくっていくというところにあるはずであった。旧幕府の或る部分には、 そうしたオルタナティヴを追求する動きがあった。静岡移住の旧幕臣の知的部分の層は、以下に見る如く厚いものであったのである。 》 507頁下段

 知的部分の層、なんだなあ。知っている名前がいくつも出てくる。それが違った側面から語られる。

《 今日各分野の学問が目ざしている学問の形は、事実のヒエラルキーにある。一定のパラダイムの中で、或る一群の事実に上下関係と因果関係を持たせて事実間の階層秩序 を特定するというのは、近代の実験を基礎にした科学である。それに対して江戸期以前の知識は、因果関係より、曼陀羅的な配置を重んずるものであった。従って物質及び 生物においては本草学または博物学が、事的世界においては随筆的な形態をとることが多かった。 》 535-536頁

《 山中共古はむしろこのような系譜の学者のグループに属していたと考えてよい。従って共古が友としたのは市井の学者、芸術家であった。 》 536頁上段~下段

《 ここに柳田(国男)の学問政治を克明に一人ずつ説くのも興なしとしないが、紙数がそれを許さない。しかし、共古と南方熊楠だけは、さすがの柳田をもって しても排除不可能な存在であったようだ。 》 536-537頁

《 薩長閥を中心に原型が形成された、近代日本の単一階層分化社会による学歴・政治・経済の堅い組織が行きづまりを見せている今日、薩長閥的官僚機構から排除されるか 、一歩外へ出た人士が形成したネットワークは、人は何をもって他人と繋がるかという点で示唆するものが極めて大きいと言わねばならないだろう。 》 540頁下段

 この前の文で「好縁社会」(ネットワークとも言う)という言葉を見せている。ネット社会になって、現在進行形だろう。その巨大な形が「コミック・マーケット」か。

 「結びに替えて」を読んだ。

《 シカゴ大学で人類学を教えていたフレデリック・スターは、松浦武四郎のごとく、一風変わった人物として知られていた(ヘンリー・スミス)。 》 550頁上段

《  スターの日本熱は病膏肓に入り、次のように訪日を繰り返す。
  《四十三年にシベリアを経て、倫敦(ロンドン)の日英博覧会、ブラツセルスの万国博覧会に寄り途をしてシカゴに帰つたが、その翌年の四十四年三月にまた第三回の 来朝。 》 552頁上段~下段

 明治四十三年の日英博覧会。あの審美書院の田島志一が気を吐き、大いに売りまくった博覧会だ。「【田島志一と審美書院】山崎純夫」から。

《 古画縷々記は、田島志一の古社寺の国宝や個人の蔵品を展観して材料蒐集の旅の記録であるが、その(六)に「目下出版中の東洋美術大観は来年の日英博覧会に出品して 大いに東洋美術の為に気焔を吐こうというので其の全部出版を急速力で進めて居る」(中略)このような図書が出品された日英博覧会は、「美術之日本」によると 「倫敦に於ける審美書院の大成功」とあり 名誉大賞を受賞したようだ。自営出品の売店の浮世絵葉書、カレンダー、一枚絵は売りつくしたとある。  同行の編集員の相見繁一は、追加を送るべく帰朝している。 》 
  http://web.kyoto-inet.or.jp/people/artbooks/kusa13.html

《 本書で説いて来たのは、日本近代の公的な世界の建設のかたわらに、公的世界のヒエラルヒーを避けて、自発的な繋がりで、別の日本、もう一つの日本、見えない日本を つくりあげて来た人がいたということである。(中略)しかし、一度、眺望あるいはその手がかりが得られれば、二十一世紀に日本が生き残るために見習わなければならない のは、これら「敗者の視点」で日本近代を見つめて生きた人々であることが明らかになる。 》 555頁上段

 山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版、再読終了。出版から四半世紀。上記の提案は喫緊のことと思うが。

 例年より遅れて真冬の服を取りだす。今冬は新しく買うものはないな。これじゃ景気は冷え込むわあ。

 ネット、うろうろ。

《 ブラック企業川柳2019結果発表 》 ブラック企業被害対策弁護団
  http://black-taisaku-bengodan.jp/burasen2019/

《 逆に言えば、内閣府の職員が全員口裏を合わせて「文書は捨て、記憶はないからわからない」と横並びでバカ揃いのふりをする異常事態は、そうでもしなければ 誤魔化せないほど重大な事実が、廃棄された行政文書と「消えたふり」をする記憶に存在するということ。内閣総理大臣が一発で職を失うインパクト。 》 山崎 雅弘
  https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1209774807190884353

《 こういうヤラセに唯々諾々と従ってきたのが大手メディアの記者たち。モンスターに餌をやって巨大化させ、憲政史上例を見ないほど傲慢で、憲政史上例を見ないほど 夫婦で権力を私物化する権力者を育てた。いい加減に誰か内部から声を挙げたらどうか。いつまで国民をだますのか。 》 山崎 雅弘
  https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1209778108867309568

《 これですね 》 惑星時代 リターンズ
  https://twitter.com/Kazc0t0v8ii8/status/1209720220396351488

《 不倫を見る会を早急に 》