『形象と時間』二(閑人亭日録)


 谷川渥(たにがわ・あつし)『形象と時間──美的時間論序論』講談社学術文庫1998年初版、後半の「第二部」、「VII 記号の時間」を読んだ。つづく 「VIII 像の差異──影像・写真・絵画」を読んだ。

《 言葉は通常の意味からその響きへまず「退行」することによって詩語となる。印刷された文字群がなにか特定の意味を伝達する前に、あるいは伝達するとともに、 文字群それ自体がなにかの形を表象することによって、それは「カリグラフィー」となる。日常品はその機能的意味を剥奪されることによって、美的観照の対象と なりうる。 》 149頁

《 それでは、絵画を絵画たらしめているのは、いったいどんな事態だろうか。 》166頁

《 しかし、絵画がひとつの視像(ヴィジョン)としてわれわれにもたらしてくれる可能的なものが、現実的なものに変貌する僥倖の瞬間というものが確かにある。 ターナーがロンドンを描くようになって以来、ロンドンい霧が発生した、とはオスカー・ワイルドの至言であるが、これはまさに可能的なものとしての画像が、 人々の知覚において現実的なものへとなり変わった次第を示している。つまり、人々は現実世界をターナーの絵のように見始めたというわけである。 》 167頁

《  人々の知覚を方向づけ世界を新しい相貌のもとに見せ始めることのできた絵画は、その「指向性」を、影像のように現在でもなく、写真のように過去にでもなく、 いわば未来にもっていたということになる。
  このことは絵画一般について、そしてとりわけ非具象絵画についても、同じようにいえるだろうか。 》 168頁

《 とはいえ、抽象絵画の指向する非現実的対象が現実的なものになりかわる瞬間というのも、確かにありうるのだ。(中略)たとえば顕微鏡のなかのミクロの世界の うちに……。人間の想像力が機械のあたえてくれる映像と一致を示すばかりか、それに追いつかなくなるときが到来することすら考えられないわけではないのだ。 絵画の呈示する視像(ヴィジョン)を、なんらかの機械技術の媒介によるか否かはともかくとして、われわれがこの現実世界のうちに再確認するような場合には、 芸術は創造というよりはむしろ発見であるといわねばならないだろう。そのとき、絵画の指向する「未来」は、いつかどこかで見たことのあるものとして、われわれに とって「過去」に属するものと思われよう。 》 169-170頁

《 さて、いずれにしてもわれわれは画像の指向性の領域を、影像の「現在」、写真の「過去」に対して、原理的に「未来」と画定したわけである。 》 170頁

《 しかし、画像が可能的なものをあらわし、それゆえに「未来」を指向性としてもつことが原理的にいえるとすれば、われわれは視点を変えることによって、あえて 絵画それ自体をひとつの「原像」とみなし、観照者によって把握される個々の視像をいわばその「模像」とみなすこともできないわけではあるまい。このように考えられる とすれば、ここで「原像」と「模像」とは一対多の対応関係にあるということになろう。 》 171頁

《 こうして、原像─模像というプラトン的二元論の呪縛から解放された絵画は、われわれの眼差しのもとにひとつの新しい「世界」を開くのである。 》 171頁

 この章の論理展開には舌を巻いた。脱帽。上の引用を再掲。1日に紹介した内田樹の言葉を思い出す。

《 そのとき、絵画の指向する「未来」は、いつかどこかで見たことのあるものとして、われわれにとって「過去」に属するものと思われよう。 》

《 ほんとうに新しいものは「新しいけど、懐かしい」という印象をもたらします。/えらてんさんとの対談本の「まえがき」 》 内田樹
  http://blog.tatsuru.com/2019/12/01_0927.html

 「IX 馬のエクリチュール」を読んだ。きょうはここまで。

 今朝はK美術館の夢をみた。閉館後の夜に何人かの人がやってきた。開ける。味戸ケイコさん、北一明の作品が並ぶ展示室・・・。69歳になってから古い夢= とうに亡くなった人が出る夢をよくみる。それまでは全くなかったこと。人生、ロクなことはなかったが、気持ちがやっと少し落ち着いてきたからか。いや、歳のせいか。
  http://web.thn.jp/kbi/

 ネット、うろうろ。

《  昨日見た夢

  腐敗政治家から実際に腐臭が漂い出す。余りの臭さに国会や議員宿舎で香が焚き込められ、閣議決定まで行われる。五感の鋭いSPたちが音を上げ、 それまで嗅覚の鈍さ故にSPからは外されていた「精鋭」たちが集められる。
  そして、国会が大爆発する。誰もガス漏れに気が付かなかったのだ。 》 猟奇の鉄人
  https://twitter.com/kashibaTIM/status/1201595022812098568

《  ブログに新記事をアップしました。
  フクイチのタンク内汚染水は、11月の4週間で約8000t増加し、119万1千tとなりました。
  計画上の貯留容量上限125万tまで、あと5.9万tです。過去1年間の月間平均増加量6000tに基づいて計算すると、上限まで、あと10ヶ月です。 》  春橋哲史(福島第一原発事故は継続中)
  https://twitter.com/haruhasiSF/status/1201635308351000576

《  何度でも申し上げますが「公文書」を改竄や破棄したと言う事は「外交文書」でもやりかねないと思われてしまうのです。 国際社会からの信頼を失墜させたその責任は極めて大きく重いものです。

  その事の大きさを分かってらっしゃらない方が政権方はもちろんのこと、国民の皆さんにも多いように思います。 》 月に祈りを
  https://twitter.com/moonright1231/status/1201522702885896192

《 8回も「大いに反省する」と語りながら、疑問の核心には答えませんでした。安倍首相は2日の参院本会議で、ジャパンライフ元会長の招待の経緯は記録がないから 分からない、懇親会の明細はホテルが拒んでいるから出せないと #桜を見る会 #ジャパンライフ 》 東京新聞政治部
  https://twitter.com/tokyoseijibu/status/1201640994845777920

《 もし何ら問題ないのなら、「桜を見る会」出席者リストの復元&ホテルの明細書の再発行をすれば、「いつまでも追及してくる野党やメディア」を蹴散らすことが できるはずなのに、なぜ、復元できないとの結論を強気で語るのだろう。 》 武田砂鉄
  https://twitter.com/takedasatetsu/status/1201450662208262144

《 シンクライアントのメインシステムにバックアップデータが残っているのは世界の常識なんだけど、それを全否定している安倍のせいで、 またまた日本はいい恥晒し! もう安倍は嘘つきの域を超えてイカレ野郎のレベルと世界中にバレたかも? 》 ゆりかりん
  https://twitter.com/yurikalin/status/1201411946811023362

《 生まれてから好景気を一度も経験した事がない 》