『現代芸術の地平』再読四(閑人亭日録)

 市川浩『現代芸術の地平』岩波書店1985年初版、「II 2 感性の拡大のために──感覚についての二章」を再読。

《 それにたいして後期印象派は、ものの固有色を否定することによって、感覚の非有縁化への一歩をふみだした。ものの見え方は光の加減によってかわり、見る人の 感情によってもかわる。さらにこれを押しすすめれば、色はものから独立して中立(ニュートラル)になる。色とものとの関係は任意であり、慣習的なむすびつきも 否定される。とすれば色はもはやものとむすびつく必要さえないであろう。色は独立して画面を構成することができる。形についても同様である。 》 70-71頁

《 もし記号の有縁性が、記号と記号外のものとの自然的な、あるいは慣習的なつながりを意味するとすれば、記号の非有縁化は、記号自身をしか示さない記号にまで 至るであろう。記号はものとなる。色は色自身をしか示さず、形態は形態自身をしか示さない。感覚は「何か」の感覚であること、あるいは「彼方」の感覚であることの 魅惑を、ではなく、感覚それ自身であることの喜びを発見する。この方向に現代芸術の一つの傾向と問題性があることは容易に見てとれよう。 》 71頁

《 新しい感覚的意味が確立するとき、そこに或る新鮮な感覚的質があらわれると同時に、古い感覚的質が失われるのである。そして新しい感覚的質はふたたび慣習化する ことよって生命力を失ってゆく。 》 72頁

《 有縁性をもたない感覚の仮説的な追及は、印象派がその端緒を切り開いたように、われわれを世界との癒着的な関係から解放し、新たな世界像を生み出す。その反面 この方向の純粋化が、世界とのつながりが失われたデラシネの袋小路へわれわれをみちびく可能性があることも事実である。 》 76頁

 「II 3 可能的世界による発見──想像から知覚へ」を再読。

《 芸術は、われわれが実用という限定から解放され、自由な仕方で世界とかかわり、可能的世界での受肉を実現する形式である。したがって芸術のうちに、〈世界の表現〉 と〈主観性の表現〉と〈表現形式そのものの内的秩序〉という三つの極へむかうヴェクトルがみとめられるのは当然であろう。 》 80-81頁

《 これはまた芸術家が、芸術言語の三つの機能、すなわち対象を〈示す〉機能と、自己の主観性を〈表わす〉機能と、受け手の反応を〈喚びおこす〉機能のうち、 どの機能を重視したかということとも関係している。 》 81頁

《 つまり芸術的模倣は、虚構であることによって現実をはなれ、理念的存在として現実にはありえないような一つの完結した宇宙を形づくる。 》 84頁

《 芸術家は外的な対象、あるいは内的なイメージにさそわれて、作品を創り出すのであるが、創りはじめるやいなや、かれは自分の作品によって逆に触発され、 いざなわれる。(中略)芸術家は、対象と自己の主観性と作品の内的秩序という三つのヴェクトルに身をゆだねつつ、制作の行為のなかでそれらを生き、現実世界に 対峙しうる充実した虚構空間を創造する。 》 87頁

《 すぐれた作品は、素材が悲惨であり、受け手を暗澹たる気分につきおとす場合にも、また人間が疎外され、世界との直接的なかかわりを失った荒涼を描く場合さえも、 やはり一種の幸福感をあたえる。だからさきにのべた虚構と現実との間のズレや〈あそび〉は、芸術作品があたえる悦びを可能にする不可欠の条件ではあるが、消極的な条件 だといわねばならない。それが積極的な意味をもつのは、ズレやあそびが、人間と世界とのかかわりを、さまざまの可能な形態へと、さらにはほとんど不可能な形態にまで 拡張し、われわれの麻痺した生をめざめさせるときである。 》 87-88頁

《 そうだとすれば、われわれは作品の意味をどこにもとめればいいのだろうか。ある人たちは作品がその時代にもった意味へ、そして究極的には作者の意図へ さかのぼろうとする。他の人は作品が現代においてもつ意味へ、そして究極的には作品が私にとってもつ意味へ還元しようとする。このいずれが正しいかを客観的に 決定することはできない。なぜならこの二つの態度は、結局のところ言語自身がもつ両義性に由来するからである。 》 88頁

《 創作の出発点は現実にあり、探求ないし創造のはてに作品があるのではない。むしろはじめに作品が仮構され、探求ないし創造のはてに現実が発見されるのである。 〈知覚から想像的世界へ〉ではなく、〈想像から知覚的世界の発見へ〉というこの転倒した形式は、知覚が歴史と状況のうちにあまりにも深く根を下ろし、がんじがらめに しばられていることを意識せざるをえない現代では、むしろ発見的でさえあるだろう。 》 89頁

《 すべての芸術理念が崩壊した現代こそ、素直にこの驚きから出発することができる。 》 90頁

 昨日につづき今日も異論をはさむ余地がない。付け加える言葉もない。異論があれば読んでみたい。

 きょうの気温。午前7時53分11.0℃。午後2時23分5.4℃。朝から午後にかけて下がりっぱなし。足元が寒いはずだ。懐は・・・当然寒い。で、こたつこもり。

 ネット、うろうろ。

《 人類を滅ぼしたのはただの風邪でした。 #一行小説 》 鯨統一郎
  https://twitter.com/kujira1016/status/1238395717158236160

《 フランスも来週から保育園から小中高大まで休校になるけれど、それに伴って休業する親の損失分は女性男性問わず国から補償される。 なので休校を知った友人たちも落ち着いた反応。同じ時代を生きてるとは思えない。 》 Atsuko TAMADA  https://twitter.com/atsukotamada/status/1238236889590751233

《 WHOトップ、安倍首相を称賛 資金拠出に謝意 》 JIJI.COM
  https://www.jiji.com/jc/article?k=2020031400249&g=int

《 東京五輪の胴元であるIOCが「WHOの勧告に従う」と言った直後に、自国民から搾り取った税金から安倍首相が大金をWHOに贈呈した事実を受け、WHOトップが 媚びへつらうようなリップサービス。分かり易すぎる腐敗の構造に反吐が出る。国内では市民が安倍政権の自粛要請攻撃で生活苦に陥っているのに。 》 異邦人  https://twitter.com/Narodovlastiye/status/1238643387965693953

《 年金を株に突っ込んだりと国民にとっては意味不明な行動が多かった安部内閣ですが今回溶けた15兆円は誰かの懐は確実に暖かくしたのです。 まともに考えたら安倍晋三という人物は「国益を無視してどこかの誰かに金を流す」手先として大活躍し日本を見事に滅ぼしたと言えます。どこかは外資でしょうね。 》  mamayamn
  https://twitter.com/myan62/status/1238281040994529280

《 インチキして一生懸命カサアゲした株価がどんどん下がっていくな。カサアゲノミクス崩壊。 》 明石順平
  https://twitter.com/junpeiakashi/status/1238274121940602880