再読『「挫折」の昭和史』二(閑人亭日録)

 山口昌男『「挫折」の昭和史』岩波書店1995年初版を再読。「2 戦争と”知識人” 名取洋之助から富塚清へ」を読んだ。

《 木村(伊兵衛)は一九◯一年、東京下谷の生まれである(下谷といえば私には唐十郎の『下谷万年町』という作品が想起されるが、『へるめす』編集同人中村雄二郎下谷の生まれである)。 》 41頁上段~下段

 中村雄二郎も再読候補。

《 名取は戦後、岩波写真文庫の編集に携わり、『麦積山石窟』や『ロマネスク』などの写真集を出しており、グラフィックな要素の欠けていた岩波書店に、こうした 要素を導入するきっかけを作り出した。日本工房と袂を分った「中央工房」の流れが戦後の平凡社に向ったのとは対蹠的なのが面白い。 》 47頁下段

 半世紀近く前、平凡社の『月刊百科』裏表紙で中国の「麦積山石窟」の写真に心を撃ち抜かれ、未だに行けぬ彼の地を夢見ている。
  http://senbonzakura.skr.jp/12tabi/81asia/china2017-18seian/bakusekisan/bakuseki01.html

《 しかし、私のことを知っていたからこの娘さんが驚いた顔をしたなどと考えるほど私は自惚れていない。そのあたりは中沢新一と違う。 》 55頁下段

 中沢新一四方田犬彦『歳月の鉛』工作舎2009年初版でもボロクソに書かれていた。彼の信奉者が知人にいるので引用しなかった。296頁に山口昌男のこと。

《 山口昌男の王権論によれば、社会の中央に象徴的に位置する王は、必然的に周縁の存在を排除する。この貶められた領域にみずから赴き、道化の身振りを通して周縁を 中央へと逆に回収していくのが、王子の機能とされる。スサノオからヤマトタケルまでの神話の系譜。 》

 近代資本主義体制の凄い点は、敵対する勢力をも自らの体制に組み込んでしまうところだが、安倍政権はそんな深謀遠慮も懐の深さも持ち合わせていない。

《 (昭和二十年)六月三十日、富塚は山形県に講演に赴いた機会を利用して、初めて石原莞爾と会っている。石原からの申しこみによるものであった。石原は、東条英機 を気の小さい男で、批判的な人物を皆遠ざけてしまったと批判した。 》 71頁上段

《 いずれにしても航空戦力の科学的根拠と実情を知るべく、石原が富塚に接近したことは間違いないであろう。 》 71頁下段

 富塚清は東大の航空原動機教室の教官。

《 (一九八八年七月)二十七日夜、共同通信のために多木浩二氏や天野祐吉氏と「戦争とグラフィズム」という座談会を行なった。この席で、東方社や名取のことが 話題になった。東方社や名取の活動が国内よりも国外を意識していたために、戦争を越えたグラフィック・アートの国際的コミュニケーションの環の中で活動したこと、 及び、戦争協力と見えるものが、実は芸術の自己実現の手段として戦争遂行の状況にかかわりを持つにいたったということが確認された。つまり、これらの人たちは、 昭和モダニズム、二◯年代アヴァンギャルディズムの成果を充分に吸収して、力を出しはじめたときに、戦争という逆の祝祭状況の波に捕えられてしまった。そこで、 波のりのごとく、遂行母体の宣伝というメディアに対する無知と自信不足を逆用して、乗り切ったということが言えるのではないか、というのである。
  同じことは、富塚清についても言える。 》 72頁下段-73頁上段

《  富塚においても挫折と見えるものが、実は挫折させた側の敗北の構造を露呈する結果につながっている。
  こうした人々に焦点をあててみると、戦後何度か論じられた戦争と芸術家・知識人とのかかわりの問題に、これまで我々の視野に入ってこなかった光源が見えてくる ことになりはしないだろうか。これまでのこの種の論議は常に勝者か敗者かの二者択一の視点から行なわれる傾向があった。そして、政治、イデオロギーの線を中心に見る 傾向があった。それ故「転向」をめぐる議論も、主流にありながら獄中何十年とかイデオロギーを固守したという我慢くらべのレベルにとどまる傾向にあった。二◯年代の 知の行方が、こうした論議の中に含まれることはまるでなかったのである。 》 73頁下段

 「転向」をめぐる論議は、胡散臭く感じて遠ざかっていた。だよなあ。

《 日本においては、昭和初年の都市民の夢、モダニズムの栄光と悲惨、プラグマティックな合理主義が実現されようとし、変形を加えられる過程として、戦前昭和の 精神史が解読されることが切に望まれる時期にさしかかっている。 》 74頁上段

 ネット、うろうろ。

《 bookaholic認定2019年度国内ミステリー・ベスト10発表! 》 book@holic
  http://www.bookaholic.jp/post-5653/

 国内国外とも未所持、未読。

《 素晴らしい作品である。が、しかし再読したくない作品は確かにある。西澤保彦『黄金色の祈り』笹沢佐保『崩壊の夜』パット・マガー『四人の女』 結城昌治「小指のサリー」筒井康隆「乗越駅の刑罰」等々^ ^ 》 松川慎
  https://twitter.com/lonllywolf/status/1202568049988997120

 すべて未読、未所持。

《 第一次世界大戦開戦からは100年あまり経ったが、なんと、この近代戦争が始まってから僅か100年間で、地球の化石燃料の半分を人間が掘削し、 消費してしまったのだというからビックリ!屍の上に屍を重ねて千万年単位の年月で生成された尊い化石を、つまらないことで浪費し、さらに屍を重ねる人類の愚行を、 無酸素事変で亡くなられた有機物ご一同は許して下さるだろうか?/ 無酸素事変 》 風間サチコの窓外の黒化粧
  http://kazamasachiko.com/?p=8889

《  アフガニスタンでは大統領(先頭の黒のジャケット)自らが、中村さんの柩を担ぎ、最大限の敬意を込め、中村さんを見送った!!

  日本ではどう出迎えた? 》 昭和おやじ 【安倍政権を打倒せよ】
  https://twitter.com/syouwaoyaji/status/1203605477411577857

《 まだ今の内閣を支持し続ける理由って、何かあるのでしょうか? 「他の内閣よりよさそう」なはずがない。今の首相より首相に相応しい政治家が一人もいないなら、 そもそも、この国は終わりだろう。そうじゃないでしょう。 》 平野啓一郎
  https://twitter.com/hiranok/status/1203670294231019521

《  競馬=農林水産省
  競艇国交省
  競輪=経産省
  オートレース経産省
  toto=文科省
  宝くじ=総務省
  パチンコ=警察

  日本では、思いつく博打、だいたい役所の管轄になってる。 》