『生誕の災厄』(閑人亭日録)

 反出生主義とかいう言葉を最近目にするので、E・M・シオラン『生誕の災厄』紀伊国屋書店1976年初版を久しぶりに手にする。付箋が一つ貼ってある。

《 美徳よりも、悪徳を抱いて生きるほうが屈託がなくてよい。悪徳は本来、気安いものであって、助けあいを旨とし、相互に寛容をもって対している。一方、美徳はと いうと、まことに嫉妬ぶかく、たがいに競(せ)りあい、何ごとにつけても共存の不可能、相互排除という実情をさらしてしまう。 》 36頁

 冒頭の言葉。

《  午前三時だ。私はいまのこの一秒を聴きとり、つぎにまた別の一秒を聴きとり、毎分のバランスシートを作製する。
  どうしてこんな始末になったのだ? ──生れてきたからだ。
  ある特殊な様相をした不眠の夜こそが、生誕をめぐる争論に火をつけるのである。 》 6頁

《 私は何もしていない。そのことは承認しよう。だが私は時間が過ぎゆくのを眺めている。──時間を埋めようとするのよりは高級なはずである。 》 8頁

《 あらゆる罪を犯した。父親となる罪だけは除いて。 》 10頁

《 楽園はよほど我慢のならぬところだったのだ。そうでなければ、最初の人間は楽園に安住したはずである。この世はというと、どうやら輪をかけて我慢のならぬところで あるらしい。なぜなら、人びとはかつての楽園を哀惜し、別種の楽園を未来にあてこんだりしているのだから。では、何を為し、どこへ行けばいいのだ? 何もしないこと、 どこへも行かぬこと、それに尽きる。 》 21頁

《 誰にも打ち明けるすべのないことを告白する──ただそのためにのみ、書物は書かれるべきだ。 》 39頁

《 何もわざわざ自殺するには及ばない。人間はいつも遅きに失してから自殺するのだ。 》 46頁

《 どんな意見も、どのような見解も、欠損だらけの、不満足なものたるを免れない。哲学においては。いや何であれ同じことだ、独創性なるものは不完全な定義づけという ことに帰着する。 》 47頁

 明日読むとまた違った箇所が気になるだろう。以前読んだように、あちこち飛び飛びに読むのがいいのかもしれない。それにしてもスカッとする。なんだろう。

 ネット、うろうろ。

《 フット・ペインティングの画家・白髪一雄展みた。・・・マネ『オランピア』、デュシャン『泉』、ロバート・スミッソン「ランドアート」、どれも30歳の作だが、 白髪一雄がフット・ペインティングを始めたのも30歳。なぜか、新しい現代アートは30歳で創始される。白髪一雄、あなたもか! 》 布施英利(ふせ ひでと)
  https://twitter.com/fusehideto/status/1219954401818734593

 味戸ケイコ(1943年生)。1973年 雑誌『終末から』筑摩書房、第3号から1974年第9号終刊号まで表紙を担当。この表紙絵にぞっこん。味戸さん、あなたもか!

《 とにかくピースを一つ置けば、相対的に他のピースの位置が限定されてきて、ものができ始める。どう置こうかなと考えてピースを持ったままの状態はある程度必要だが、 特段の理由なく実際に置く段階へ移るべし。そのタイミングに理由はない。 》 千葉雅也
  https://twitter.com/masayachiba/status/1220275051561246720

《 ちゃんと頭から説明しよう説明しようとしてる文章はたいていダサくなる。それを崩すのが「ゴダる」こと。 》 千葉雅也
  https://twitter.com/masayachiba/status/1219992964195180544

《 近代的な意味においては絵もそうだったと思う。それを崩すのが「セザる」こと。 》 Takuma Ishikawa
  https://twitter.com/ishitakuma/status/1220331955763343362

《 ハンス・ウルリッヒ・オブリスト インタビュー:美術館、そしてキュレーターの役割について /菅原伸也 》 TOKYO ART BEAT
  http://www.tokyoartbeat.com/tablog/entries.ja/2020/01/hans_ulrich_obrist_interview.html

《 【第五七六話】 眠り 》 深谷かほる『夜廻り猫』
  http://www.moae.jp/comic/yomawarineco/631

《 「国産が一番安全だ」と妄信する日本人の大誤解/竹下 正哲 》 livedoorNEWS
  https://news.livedoor.com/article/detail/17694147/

《  安倍総理のマジな功績

  ・日本はまだ成長できるとされた希望的観測をこの7年で完全に打ち破ることができた

  ・後世の歴史家が日本衰退の理由に悩まずに済む

  ・こうすれば国が傾くという最高の反面教師国になれた

  ・中国の近場に安価な観光立国をつくった

  ・島根の人口を1人増やした後に元に戻した 》 愛国心の足りないなまけ者
  https://twitter.com/tacowasabi0141/status/1220314169557188613

《 骨や翼を組み合わせたような建築のワールド・トレード・センター駅。 》 櫛野展正@クシノテラス
  https://twitter.com/kushinon/status/1219957023015677953