『今日のアニミズム』再読・六(閑人亭日録)

 奥野克己・清水高志『今日のアニミズム以文社2021年11月30日 初版第1刷発行、奥野克己・清水高志「第六章 対談 II 」を読んだ。じつに面白い、と言ってはオイオイと突っ込まれそうだが、興奮した。まだまだよくわからないことはいくつもある。いかんせん付箋が林立。こんなに多く貼ったのは初めて。ほんの少し引用。今回、大事な個所は引用しなかった。やったら長くなるので。

《 清水 近代に入ると、起成因や機械論、つまりものの組み立て方を重視する世界観が台頭してきて、マテリアリズムの文脈に一と多の問題も吸収されてしまった。とはいえ、近代になってこのようにマテリアリズム自体が優勢な世界観になったとき、そちらに一方的に還元してしまうと自由や精神がなくなるのではないかということが問題として浮上してきた。人類の精神史からすると、そこで、主体と対象という二元論を意図的にねじ込んできたわけですね。主体と対象で言えば、精神は、自分という主体を認識対象にできるわけで、それは二重性なのだということをドイツ観念論は色んなかたちで考えていた。二重性なのですが、主体は対象を漸次含みうるので対象から抜け出している。そこから精神の自由を担保しようと思ったわけです。
  根本の問題は、一と多だと思います。東洋でも西洋でもそうですが、それを解決するために違う二元論をねじ込んだ。その二元論が解決されそうな別の二元論を主軸に据えて、そこに一と多の問題を足したわけです。 》 291-292頁

《 清水 それをどうしたらいいかと考えたときに、最初の二元論、一と多という二項対立に戻ろうということです。戻って、それを解決するためにはどちらかに還元するのではなく、両極が両極を包摂し合うような、相互包摂的なモデルを考えなければならない。ただ、もちろん一と多を抽象的に考えているだけでは駄目です。 》 293頁

《 奥野 善は急げと言うのでやったらやたらうまくいった。すぐにやらなくてよかった、急がば廻れというではないか、というふうに。二項的なもの、二つ並列するようなやり方を、私たち日本人は持っている。 》 301-302頁

《 清水 仏教では「離二辺の中道」とも言いますが、「断見」、「常見」どちらにの極にもいかない、またそういう非還元を色んな二項対立について、それら全体を眺めながら多極的に語っていくのが大事なんですよね。 》 302頁

《 清水 先日岩田慶治の『木が人になり、人が木になる』という本を読み返していたのですが、その冒頭で、彼が朝方に京都の自宅近くを散歩していると、早朝でバスが一台も止まっていないバスプールがあった。(引用者・略)これでピンときました。「ものの充ちた場所」としての曼陀羅的世界というのは、幻視しないといけない。そこにいろんなアクターが来て生きているところを思い描かないといけない。自分がなかに入る、というのもひとつの考え方ですが、そのその空っぽのところの内に自分が関わるものも自然も入れることができて、それを内からも外からも感じられる、そういう意味での幻視が大切だったのです。それはもはや滅んだものでも、いまだ到来していないものでもいい。(引用者・略)ある空間が生きてくるというのはそういうことで、ある空間を生かす、あるいは生きたものとしての空間を感じる感性というのが、やはりアニミズムなのではないかと思います。そこにアニミズムの根本があるし、人間が生きた情念の世界、人間が死とともにある生に意味を与えるということ自体も、それと深く関わっている。 》 314-315頁

《 清水 だから、アニミズムというのは未来を幻視する感受性とともにあって、それは人間にとっても本質的なものですし、未来を見ることでもあるというふうに私は思っています。 》 316頁

 奥野克己・清水高志『今日のアニミズム以文社、再読終了。また読みそうだな。

 きょうも、にわか雨、にわか雨、土砂降り。こんな天気は珍しい。


2023年8月 6日(日)『今日のアニミズム』再読・五(閑人亭日録)
 奥野克己・清水高志『今日のアニミズム以文社2021年11月30日 初版第1刷発行、清水高志「第五章 アニミズム原論──《相依性》と情念の哲学」を読んだ。やはり、わかったようで、やっぱりよくわからない。気になる箇所を引用しても、それだけでは、何だかなあ。結びから。

《 アニミズムの大地において、すべてはすでに予感されている。このうえ何を言い足したら良いのだろうか。始まりもなく、終わりもない世界を語るこの思索は、文字通り尽きることがない。私たちはここで、ようやくその輪郭と驚くべき思惟の軌跡をかいま見た。──そんな風に言うことができるだろう。 》 256-257頁

 以前読んだレーン・ウィラースレフ『ソウル・ハンターズ』亜紀書房が多く引用されていて、これはよくわかり面白かった。

 広島原爆忌。合掌。
 天気が目まぐるしく変わる。不意の雨を知らぬかのように、悠然と歩いていく人。通り雨に濡れるのも一興、かな。
 ジャズ・ピアニスト、ドン・フリードマン Don Friedman のLPレコード『Cirle Waltz』1962年録音、B面の「So in Love」を聴く。
 https://www.youtube.com/watch?v=wT-6ZdSxMtQ