塚本邦雄(閑人亭日録)

 寝覚めに塚本邦雄の短歌
  ほほゑみに肖てはるかなれ霜月の火事の中なるピアノ一臺
  (肖て=にて~似て」)
 が浮かんだ。そしてもう一首
  瞋りこそこの世に遺す花としてたてがみに夜の霜ふれるかな
  (瞋り=いかり~怒り)
 が浮かんだ。忘れがたい名歌。これらの歌に出合ったときはまだ、味戸ケイコさんがデビューしていなかった。デビューは昭和四十七年。半世紀後、”ほほゑみに肖て”は、味戸さんの絵につながると気づく。つづきはいずれ。
 半世紀あまり前の夏、秋田県八幡平大沼のユースホステル(山小屋)に滞在した。そのとき携帯した本が、新刊の『塚本邦雄歌集』白玉書房昭和四十五年十二月二十五日第一刷発行 定價三五〇〇圓。若い日の座右の書。背は色褪せ、小口は薄汚れている。
 参照:「塚本邦雄第六歌集『感幻樂』」を読む(詩歌誌面)
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