元日(閑人亭日録)

 元旦。新鮮な気分で目覚め。昨日とはえらい違い。なんだろう。明るい陽射し。
 午後、美術雑誌『國華』129号國華社と『國華』153号國華社明治35(1902)年2月15日發行を開く。129号には伊藤若冲『鶏圖』白黒写真版、153号には同じく伊藤若冲『花鳥圖』彩色木版画が掲載されている。後者の「挿圖解説」後半。

《 若冲は初め狩野氏を學び、後ち元明の古蹟を慕し、兼ねて光琳の筆意を酌み、且つ専ら意を司晨の鶏に注ぎ、其の形状を窮め、之を描寫すること多年、然る後周く草木の英、羽毛蟲魚の品に及び、其の貌を悉くし、其の神を會し、遂に卓然一家の妙を見はしゝ人なり、故に此の圖の結構、布置、著想、筆致等に、多少光琳の風あり、飮啄飛鴨の姿態、白雪の皚皚たる、菊花の繚亂たる光景、眞に迫りて而も形似の弊なく、一種優雅の趣湛々たる、偶然ならざるを知るべし、眞に是れ若冲畢生の大作たり。 》

 こういう文章は書けない。かように評価されていた伊藤若冲だが、その後半世紀以上も美術界から忘却されていたとは。なぜだろう。まあ、河鍋暁斎もそうだが。小原古邨も、か。北一明も、かな。
 携帯電話に緊急地震速報。天災は忘れぬうちにやってくる。