『空間へ』四/小泉喜美子(閑人亭日録)

 磯崎新『空間へ』美術出版社1979年8版(1971年初版)を少し読み進める。以下気になった箇所を少し。

《 空間は物理的形態ではなく、それが人間の行為と関係したときにはじめて存在するという認識は、必然的にフィジカル・パターンとアクティヴィティ・パターンの 対応関係の分析へ導くであろう。その統合の操作が、すなわち都市デザインとなるのである。 》 「都市デザインの方法」 118頁

《 われわれは、ここでもはや実体そのものを取り扱っているのではなく、その表象と状況を、いわば認知しえた仮象だけが相手になる、という場所にふみこんでいることを明記しておかねばなるまい。同じく都市空間とよばれても、ここでは決して形態をもったものとはなりがたい。むしろシンボルの分布濃度といったほうが適切なくらいである。 》 「都市デザインの方法」 120頁

《 かくして都市空間は場に存在する記号の濃度とながれによって表現されることになる。 》 「都市デザインの方法」 127頁

《 都市は視覚化されたものだけでなく、不可視のものが充満していると考えなおしてみると、都市を方法として再編成できると同時に、具体的なイメージにも直接的に下降することが可能になるのではないか。 》 「都市デザインの方法」 127-128頁

《 揺れ動いて固定しないイメージを《見えない都市》とよんでもいい。 》 「都市デザインの方法」 128頁

 イタロ・カルヴィーノマルコ・ポーロの見えない都市』河出書房新社1977年初版を連想。やや、既読だった。記憶にない。都市ならぬ歳か。

《 ぼくにはヨーロッパの建築空間は、内部の空間に外光をひきこむ技法の展開の歴史ではなかったかと思えるときがある。 》 「闇の空間」 154-155頁

《 日本の建築空間を「闇の一元論」とよぶことは可能だろう。 》 「闇の空間」 159頁

《 すなわち、人間のノーマルな知覚の対象となる三次元的な実体の空間をその中心の軸にすえるとすれば、一方の極に「闇」のイメージにつらなる深層心理学的・ 魔術的・象徴的な空間の系列があり、他の極に「虚」のイメージにつらなる、記号的・抽象的・多次元的な空間の系列があるということになる。 》  「闇の空間」 164頁

 「闇の空間」の短い章は、私にさまざなま発想を呼び寄せる。読了後、じっくり再読したい。

 つりたくにこさんの思い出。月刊雑誌『ガロ』青林堂でつりたさんが闘病中であることを知り、励ましの手紙を出した。そして京都深草のご自宅へお見舞いに上がった。 お手製のトンカツをご馳走になってしまった。それからも手紙を出した。そして1986年の師走、寒い晩に前触れもなくご主人が来訪。駐車している車には猫。それで理解。つりたくにこさんは亡くなった。一年半前に亡くなったけど、君からの手紙に逝去を知らせることができず、墓前に上げた、と。夜空を見上げた。涙は頬を伝った。
 手元には会葬御礼。あれから三十年余。作家は死してもいい作品は遺り後世に評価される。そして原画は海外の美術館でも展示される(二年先だが)。

 同じ1985年にはミステリ作家小泉喜美子さんが亡くなった。生前お目にかかったのは一度きりだけど、小泉さんから電話や私信は何度も。本も。逝去を新聞で知った。 ご母堂から終の棲家(マンション)を案内された。形見分けに数冊の所蔵本をいただいた。その彼女の著作が没後三十年の2016年以降八冊も文庫で出版。いい作品は 時代を超える。
  『血の季節』宝島社文庫 2016/8/18
  『殺人はお好き?』宝島社文庫 2017/2/10
  『痛みかたみ妬み』中公文庫 2017/3/25
  『殺さずにはいられない』 中公文庫 2017/8/25
  『月下の蘭/殺人はちょっと面倒』創元推理文庫 2018/2/23
  『女は帯も謎もとく』光文社文庫 2018/4/12
  『殺人は女の仕事』光文社文庫 2019/1/10
  『ミステリー作家の休日』光文社文庫 2019/9/11

 調べ物で季刊『銀花』文化出版局の古い号を見ていたら『第二十一号 春』1975年、176頁に「一九七四年の限定本ベストテン」なる記事。第四位に『沖に立つ虹』 堀口大學著、限定三百部、吾八ぷれす刊。先だって書いたが、『銀花』の紹介で欲しかったけど高くて手が出なかった。最近古本で安く入手。82番。

 ネット、うろうろ。

《 吾妻ひでお(本名:吾妻日出夫)、かねてから食道がん治療中でしたが、2019年10月13日未明、都内の病院で永眠いたしました。享年69歳。 ここに謹んでご報告申し上げます。合わせて永年の読者の皆様のご支援と励ましのお言葉に改めて御礼申し上げます。 》 吾妻ひでお
  https://twitter.com/azuma_hideo/status/1186149786287632385

《 吾妻について、いろんなところからコメントを求められている。セミリタイア状態が長かったが、吾妻を忘れないでいてくれてありがたい。 》 いしかわじゅん
  https://twitter.com/ishikawajun/status/1186193910265073666

《 スペインの中部~北東部の農地をドローンで撮影した写真集。 http://bit.ly/2VVOecx スペインの近代絵画の三大巨匠であるピカソ・ミロ・ダリの抽象画を 連想させる。複雑な地形の場所で、土壌と水分が多い凹所などでオリーブや麦を栽培していることを反映。撮影者はハンガリーの Milan Radisics 氏。 》  Oguchi T/小口 高
  https://twitter.com/ogugeo/status/1185481671547609088

《  ナチスの隆盛について、
  「ナチがユダヤ人差別なのは知っていたが、社会的ストレスのガス抜きのため『たまには』いいかと思ってナチ党に投票した。後で、まさかあそこまで迫害政策が エスカレートするとは思っていなかった」
  という当時の市民の回顧は、どの時代、どの社会にも通じる、怖い話だと思う。 》 マライ・メントライン@職業はドイツ人
  https://twitter.com/marei_de_pon/status/1185350685459484673

《 宮田亮平、佐渡に伝わる彫金技術を家業で受け継いでいるのか。。そういや自分明治天皇の佩剣かなんか作ってた橋本一至が先祖にいたみたいだけど、 もう少しましなの作ってたぞ。。 》 清水高志
  https://twitter.com/omnivalence/status/1186252420529049603

《 テレビ中継見ててまず目に飛び込んでくるのは皇后の台座のほうが小さいということだよね。天皇は日本国の象徴であり、天皇は男系男子であるわけだから、 日本国では男子のほうが女子より社会的地位が大きいという家父長制由来思想が、これ以上ない形でクリアーに視覚化されたというふうに見えるね。 》 森岡正博
  https://twitter.com/Sukuitohananika/status/1186519544556220416

《 もともとこの即位礼では明治以前では皇后は横に立ち並びませんでした。これは明治以降、西欧の君主制との「互換性」を重視して、西欧にならったものです。 しかし、一方で明治憲法体制では女帝の存在を否定しました(前近代までは8人の女性が天皇になっています)。 》 住友陽文
  https://twitter.com/akisumitomo/status/1186522481114267649

《 案の定、朝からNHKがずっと特別番組を流している。雨音すら聞こえない渋谷のスタジオで「奉祝」気分を盛り上げようとする空気と、 その画面の周辺でずっと流れ続ける被災地での災害情報。そのあまりの対照ぶりに違和感を覚える視聴者は少なくないはずだ。 》 原武史
  https://twitter.com/haratetchan/status/1186432265393328129

《 「昭恵は決してドレスコード違反ではない!」という閣議決定が出そうだなw 》

『空間へ』三/つりたくにこ(閑人亭日録)

 磯崎新『空間へ』美術出版社1979年8版(1971年初版)を少し読み進める。以下気になった箇所を。

《 広告的建築である場合、かえってディテールの実験は大胆にできる。ディテール的、あるいはアクロバティックな形態も充分に広告的効果をあげうるからだが、 そこから腹にこたえるような緊張感あふれるデザインがでてこないこともまた事実であり、いまのところ結果的に広告に利用されるか否かにかかわらず、もっぱら広告的な 要素に背をむけて拒否しつづけた作品の方が、充分にすぐれた結果をうんでいることもまた事実なのだ。 》 「広告的建築のためのアドバータイジング」 72頁

《 等質空間を仮定することは、いわば図書館の場合その成長性と変動性を単純に理解し、それらが内包する成長と変動の《方向性》への判断を放棄したときに発するので ある。等質空間は成長と変動に絶対的に対応しようとした結果発見された概念だともいえる。そのなかでは成長と変動は自由自在である。自由自在だということは、つめて いうと百パーセントの完璧性をもつことなく、すべての用途間の最大公約数をさがすことになってしまうのだ。《方向性》への判断放棄は、建築を動態的に把握する きっかけを失ってしまう。 》 「プロセス・プランニング論」 88頁

《 かくして、ひとつの段階(あるいは規模)のもとでは背後にかくされていた機能が、規模の増大につれてつぎの段階を決定的なものにしていく場合が十分に予想される のである。この性格を私はかつて発展段階の分析にあたって発生的要因と呼んだのだが、生物学的用語との関連を考えると創発的形質(EMERGENT)としてもいい。 創発的形質という概念のなかには単調な進化でなく、突発的でドラスティックな展開がなされるという意味がこめられている。すなわち成長は連続していないのだ。 》  「プロセス・プランニング論」 94頁

 別の意味で気になった箇所。

《 建築の全体像が閉じてしまい、変動に耐えられなく結果を生ずるのはこういう転倒が行われた時である。それらの建築もいったん出現すると漸次的に変動を始めるのだ 。しかしながら閉じたプランは美学的にも閉じてしまう。もはや終末のあとの硬直をうむのだ。幸いにこの設計ではそういうやり方をとらざるをえなかった。 》  「プロセス・プランニング論」 91-92頁

 ”幸いに・・・やり方をとらざるをえなかった”。意味のつながりがよくわからん。”幸いに・・・やり方をとらなかった”ならわかるが。理解力がないか。

 午後、拙文「管見 よそ人三島見聞記」で使った本をかばんに入れてボイスキュー(FMみしま・かんなみ)の小坂真智子さんへ届ける。重い~。
  https://k-bijutukan.hatenablog.com/entry/2019/09/25/185405
  http://777fm.com/personality/2015/05/post-7.html
 夕食を終えて再び本へ、の時に電話。『ガロ』で活躍した故つりたくにこさんのご主人から。久闊を叙し、話はつりたくにこ作品集『フライト』青林工藝舎2010年へ。 な、なんとイタリア版が出版された! 青林工藝舎版を元にして二回りほど大きな立派な本! それを来月末あたりに持ってきてくれる! さらに続いて、来年には スペイン版、アメリカ版が出るそうな。いいものはいい、復活する。バンザイ! さらにいい話は続くが、きょうはこれまで。
  http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1388.html
  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A4%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%AB%E3%81%93

 ネット、うろうろ。

《 日本一のハロウィン・パレード in みしまが盛大に開催! 》 エブリワンRアカデミー
  http://www.els-1.com/activity_report/527/

《 吾妻さんが遂に亡くなったというんだが、少年誌のギャグ漫画家だった彼にSFのパロディ描かせたのも、ロリコン漫画描かせたのもおいらです。 》 ネットゲリラ
  http://my.shadowcity.jp/2019/10/post-16506.html

 愛好する漫画家だった。棚には単行本12冊、文庫本7冊。新井素子との共著『ひでおと素子の愛の交換日記』『続…』『新…』も。合掌。

《 象徴天皇制のあり方探る 原武史氏・ルオフ氏対談 》 日本経済新聞
  https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51213430R21C19A0000000/

《 空疎な言葉を紡ぎ、教養もなく、身内贔屓で、外交で手玉に取られ、幼児性の逆ギレを起こす「代表」が、「象徴」の真摯な姿勢、聡明さ、公平さ、外交における 敬意と名望、泰然たる風格を際立たせるために据えられているのだとしたら? ユリアン、敵は相当にしたたかと言っていい。>偽ヤン 》 猟奇の鉄人
  https://twitter.com/kashibaTIM/status/1185650465532329984

《 第4の矢ウソノミクス 》

《 日本はあまり法治国家じゃないし、コネと利権だらけだよね。若いころは日本はどうのこうのいいながら進んだ国だと思ってたので、 震災後ようやくその現実に気がつくようになってきたよ。不明を恥じてます。 》 東浩紀
  https://twitter.com/hazuma/status/1185787328897245190

《 NY住み始めたときは「ああ自分はなんてぬるま湯のような平和ボケで幸せな場所で生きて来たんだろう」と思ったけど、こないだ日本に帰ったら日本の方が空気感が 殺伐としてて、NYの方がはるかにのどかだと感じる。震災以降確実に変わって来ている気がする 》 Sembo / センボー
  https://twitter.com/1000b/status/1185410855212666880

《 いまの政治に対抗して、社民主義的でノーブル?な「良い国」を作るのは人間の成り行きとしてもう無理ではないかと思いつつある。人間の色々なタガが 外れてしまった。それはドゥルーズガタリなら脱領土化と呼ぶ運動だが、それはさらに激化するし、それを抑圧するものとしての社民はもう無理だと思う。 》  千葉雅也
  https://twitter.com/masayachiba/status/1185885724094001154

《 当然、いまの政治を追認するわけではない。課題は、いまの状況にダメ!と叱って「抑圧」するのではない、国家やグローバル経済活動の別の未来を考えること なのだと思う。かつて「共産主義」ととりあえず呼ばれていた未知の状態が、いま改めて問題になっているのだと思う。 》 千葉雅也
  https://twitter.com/masayachiba/status/1185885727420084225

《 ネトフリでときどき村西とおる監督の実話をもとにしたドラマ「全裸監督」を見てるのだが、妻がなぜかしょっちゅう間違えて「全裸警察」と言う。 そんな番組はないっていうのに。あったら見たいが。 》 高野秀行
  https://twitter.com/daruma1021/status/1185809353032355841

『空間へ』ニ(閑人亭日録)

 磯崎新『空間へ』美術出版社1979年8版(1971年初版)を少し読み進める。

《 私たちには固定化し動かし難い空間は必要がない。《うごき》《かさなりあい》《からみあい》《のび》ていくような空間こそが、求められるべきである。 》  「現代都市における空間の性格」 60頁

 哲学の最新の動向を先取りしているような。例えば清水高志の下記のツイートにどこか関わってくるような(門外漢の)予感(勘違いだろと言われそう)。

《 十二支縁起の逆観、還滅門の発想は、そもそもこうしたバイナリーな対にたいして「Aがなければ非Aもない」という発想を採ることだ。このとき、 作用体は部分的状況ではなくなる。つまり相互に間接的に包摂、被包摂がneitherで世界があるという、一即多、多即一の宇宙の開示、そうしたものとしての自己の 》  清水高志
  https://twitter.com/omnivalence/status/1185187831964041216

《 目覚めとなる。情念の問題、その超克からこうした世界へと向かおうとすることもできる。 》 清水高志
  https://twitter.com/omnivalence/status/1185187833989910530

 椹木野衣『震美術論』美術出版社2017年初版、「溺れる世界と「ソラリスの島」」の章を再読。磯崎新の建築思想が論及されている。思考にぐっと食い込んでくる。

《 西新宿はいまでこそ超高層ビル群とツインタワーの東京都庁舎で知られるが、それを設計した丹下健三は、かつて磯崎ら若い建築家・都市計画家たちを率い、 「お祭り広場」を含む「大阪万博」の根幹である「シンボルゾーン」を統括した張本人でもあった。その西新宿がいま、広場なき超高層という「墓標」の群れになって しまったことを考えると、たいへん皮肉な結果であると言える。 》 339頁

 この章は『空間へ』を読了後、もう一度よく読む必要がある。

 朝、昨日見つけたヒメツルソバ十株ほどを抜く。ついでに三島梅花藻の里へ寄る。この前あるのを見ていたけど、いざ見渡すとずいぶんある。土のう袋にぎっしり 詰め、予備のゴミ袋にもびっしり詰める。なんとか収まる。やれやれ。汗~。シャワー。大通りは午前11時からのハロウィーンの準備が進む。ヘンな姿恰好の 大人たちこどもたちがぞろぞろ歩いてゆく。
 一休み後友だちに頼まれた某幼稚園の運動会を参観。正午に終了。
 大通りはハロウィーンの装いでまあ賑やか、混雑。みんなどうだい!という扮装。誰もが楽しんでいる。大通り700メートルがお祭り広場に。
 知人から頼まれて友だちと三島梅花藻の里で車に同乗。静岡市へドライブ。午後五時過ぎ帰宅。コーヒーを淹れる。きょう初めてのコーヒー。旨い。

 ネット、うろうろ。

《  Norio Iriguchiさんの許可を得て、facebookから転載します。お読みください。

  「ごめんなさい。すべてウソでした。中止いたします。」

  ”「この時期の東京は...理想的な気候である」ウソでした。”
  ”「アンダー・コントロール」ウソでした。”
  ”「日本の五輪委員会(JOC)会長も」贈賄容疑”
  etc.  》 Koichi Kawakami
  https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1185433780317609985

《 東京の良さをアピールする五輪じゃなくて不便さをアピールする大会になりそうだな 》

『空間へ』(閑人亭日録)

 一昨日、東京の林立する超高層建築群を見上げて違和感を覚えた。磯崎新『空間へ』美術出版社1979年8版(1971年初版)を開く。冒頭から惹き込まれる。

《 都市破壊業

  あなたはこの奇妙なビジネスを笑ってはいけない。この会社は大真面目で存在している。この東京のどまんなかに、そう空中にただよいながら、この都市にいきる あなたの生活の裂け目にしのびこもうとしているのだ。 》

《 現代の建築の現象をリアルにみつめそれを肉体化しようとしている作家たちにとっては、不定形性こそがデザインの基本的な要素である。しかしながら、不定形に 終始するかぎり、都市的なひろがりのなかに建築がでていくことは不可能である。むしろこの不定形性に内在するシステムが発見されていくときに、はじめて現代の都市に ふさわしい方法が確立されるのである。 》 「現代都市における建築の概念」 35頁

《 おそらく、いまのままいくと、高架のフリーウェイは、スパゲッティをまきちらしたように都市をつつみ込んでしまうだろう。すでにこれは否定できぬ事実となって 進行しつつある。 》 「現代都市における建築の概念」 37頁

《 都市の全体からみて、個々の建築はその存在理由をそれぞれ認める必要がある。それは建築のもつ機能が都市のなかで充分に発揮できるための最低の条件である。 これは決してモニュメンタルでなければならぬということではない。ぼくはそれをその建築固有のシンボルだと呼んでいる。 》 「現代都市における建築の概念」 43頁

 一昨日、東京駅八重洲口~中央通りを歩いて周囲の建築物を眺めた。「建築固有のシンボル」とは言い得て妙だ。

《 彼の発見の重要性は、キャンバスに対して視点が定まることなく、いやキャンバスの外枠さえはずして、しかもひとつの強烈な空間の存在の可能性を実証したことで ある。ルネサンスの単一の焦点をもつ空間から、その空間を解体しながら再構成を試みつづけてきた近代絵画は(この問題は建築の空間についても十分に適用できると 考えられる)やはり、キャンバスに立ちむかうひとつの作者の視点を失うことはなかった。キャンバスの外側にそれを視ているひとつの主体の位置がかならずあった。 しかしながら、ポロックの空間にはむしろその固定した主体の位置がない。その主体はキャンバスの上をはいずりまわり、つみ重なり、無数の空間に分解され、 からみあい、多様化したパノラマとなり、ひとつの宇宙のなかに解消している。

  私たちにとって、このような空間の意識は、ごくスムースに現実の都市空間のなかから感じとることができる。 》 「現代都市における空間の性格」 53頁

 ジャクソン・ポロックのドリッピング絵画について、管見では最も魅力的な論述だ。

 午後、小雨の中、流水量の増した源兵衛川を一本松まで下って上る。一本松付近でヒメツルソバ数株を見つける。後日抜く。水源の小浜池は11日に13センチ。 きのうは71センチ。いい風景だ。足を伸ばして白滝公園へ。公園の半ばの欅が根こそぎ倒れている。根の張り方が弱かったようだ。道路向かいの芝岡浅間神社へ。 芝岡神社の前の大木の幹が半ばで枝を抉り取られている。茂った枝が神社前に横倒しに。

 ネット、うろうろ。

《 取らぬ狸の経済効果ばっかり言い立てないでオリンピックによる経済的損失も公表してほしい。 》 藤原編集室
  https://twitter.com/fujiwara_ed/status/1185354803213299713

《 匝瑳・山武など一部道路が冠水 》 NHK 首都圏 NEWS WEB
  https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20191019/1000038895.html

 匝瑳・山武=そうさ・さんむ。読めなかった。

《 半藤一利山県有朋』 》 松岡正剛の千夜千冊
  https://1000ya.isis.ne.jp/1722.html

 明治史を学びなおした気分。

《 こんなことを認めたら、それこそロシアマネーや反共的宗教組織などに代表される様な特定の団体、組織からの国内政治への影響力が増すだけではないか。 しかもそれが表に出てこない。確かめようがない/日本政府が閣議決定、政治家への仮想通貨・個人献金は「規制対象外」 》 ガイチ
  https://twitter.com/gaitifuji/status/1185206512869756928

《 デカルトナマケモノ【前編】 辻 信一 》 トイ人
  https://www.toibito.com/interview/humanities/ethnology/1211

《 対談 荒木優太さん×熊野純彦さん:困ったときの在野研究入門 第1回 》 Web あかし
  https://webmedia.akashi.co.jp/posts/2652

《 自殺した児童生徒 最多の332人 昭和63年度以降で 》 NHK NEWS WEB
  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191017/k10012136541000.html

《 もう学校というハードを作り、先生を個別に揃えるスタンドアロンタイプの教育形式が古すぎるんですよね。人手不足の時代にはダメなやり方だし、 地方ほど不利になる。もっと学校のあり方を根本から変えなきゃならんが、一番それに対応できないのは大人たち。子供たちは過去に縛られた大人の犠牲になる。 》  木下斉
  https://twitter.com/shoutengai/status/1185004384633012225

《 「俺はかわらぬカレー好き」と「俺は河原の枯れすすき」は似てる。 》 いかふえ
  https://twitter.com/ikafue/status/1185106581391699968

『昭和批評大系 5 昭和40年代』(閑人亭日録)

 先だってバカ安で入手した『昭和批評大系 5 昭和40年代』番町書房1978年初版函帯付の月報、磯田光一「昭和四十年代私観」で正鵠を射ていると感じた箇所。

《 前置きが長くなったが、こういう視角から昭和四十年代をふりかえるならば、一九六十年代に準備されたナショナリズムが、一つは経済ナショナリズムとなって 高度成長を生み出し、そこから洩れたものが土着的ナショナリズムとなって噴出したという経路がみえてくるはずである。前者がたとえ近代化路線と呼ばれようと、 その根底にはアメリカと対等になりたいという潜在感情があったであろうし、また、経済大国化の過程で不可避に侵されていった故郷の土が、心情的ナショナリズムの 基盤をなしたと考えられる。 》

《 作品が作品として固有の世界をもつことは当然としても、戦後三十年余の推移を思うと、若い世代にニ◯~三◯年前のことを伝えるには、どうしても時代の雰囲気を ある程度復元しないと、うまく解ってもらえないのではないかと思った。 》

 ということは、バブルの狂乱など平成生まれにはウソだろうってことになるのかな。大久保典夫「全五巻をおえて」から。

《 この全四巻のうち、昭和十年代が最初に出たのでもわかるように、当初われわれは二十年代までの批評史の再評価を志していて、三十年代はあまり念頭になかった。 ところが、三十年代がもっとも需要がおおかったのである。そのため、ということもないが、昭和五十年を過ぎたならば、四十年代を整理してそこで全五巻として完結 させたいという欲望がいつごろからか生まれた。しかし、これはずいぶん危険な仕事で、批判もおおいだろうと当時から覚悟していた。(中略)昭和五十年代の続刊は まったく考えられない。 》

 1968年1月にまず『第二巻 昭和10年代』が出、続いて3月に『 第三巻 昭和20年代』、5月に『第一巻 昭和初年代』、8月に『第四巻 昭和30年代』が出た。 これら四冊は新刊で購入。十年後に『昭和40年代』が出ていたとは全く知らなかった。ネットで偶然発見。他の本と三冊まとめてなんと百円。ウソみたいな値段で入手。 世の中の価値観は、私とは天と地のように離れているようだ。とろころで1968年発売の四冊は、一冊1800円。1978年の第五巻は4200円。物価高騰の十年か。

 ネット、うろうろ。

《 もし私が突然死ぬことがあったら、娘と夫には、うちにある本は全て古本屋に売るように言ってあります。かなりの貴重書もありますが、 研究機関に譲ることはしない。日本の研究機関はきちんと持っていてくれない上に公共の資産にしてくれないので、信用できないから、古本屋の方が適切な人に届く。 》  masako toda
  https://twitter.com/kumamuta/status/1184249550157959168

 私の所蔵している美術品は死後、美術業者へ引き取ってもらうよう周囲に言ってある。地方美術館への寄贈は考えていない。死蔵になりかねない。

《 美容院に「絶対に行きたい絶景・秘境の旅」という本があったので手に取ったら、ウルルだのウユニ塩湖だのが載っててガッカリ。絶景・秘境と言えば すっかりこういう場所を想像するようになってしまった。 》 マキエマキ@自撮り熟女
  https://twitter.com/makiemaki50/status/1185043172285657088

 右下の小路、近所のしらゆき通りかと一瞬思った。

《 芸術文化振興基金助成金交付要綱が9月27日に改正されていて、「交付決定及び通知並びに不正等による交付内定の取り消し(第8条)」に、 「その他公益性の観点から助成金の交付内定が不適当と認められる場合」が追加されている……。 》 平岡あみ
  https://twitter.com/amyhiraoka/status/1184337420847763457

《 あいトリの非交付を、起こり得る事態について説明責任を果たしてないからアウト、と言うんなら、オリンピックも、ニッポンの夏が殺人的に暑いって 事前に言ってなかったんだから当然アウトですよね。 》 佐々木敦
  https://twitter.com/sasakiatsushi/status/1184810117075595264

《 東京オリンピックは、この時期の東京が「アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」と説明して招致したものなのに、 暑いからという理由で北海道に移したりしたら、あの説明がウソだったということを全面的に認めるということだよね。 》 よしだ まさし
  https://twitter.com/garakutahuuun/status/1184655479470903296

《 スポーツに全く関心のない、いち札幌市民として言っておきますけど、オリンピック競技の受け入れとか普通に迷惑ですよ。税金も使うことになるだろうし、 テロ対策の名目で警察だらけになるし。気軽に「他の競技も札幌で」とか言わないでください。

  地方は東京の尻拭いのためにあるわけじゃないんですよ 》 ヤジも言えないこんな世の中じゃ…デモ!(ヤジポイ)
  https://twitter.com/yajipoi0810/status/1184654631957196802

《 「日本は嘘をつく」が晴れて国際的コンセンサスに。オリンピックとは無関係な局面に於いても、凄まじいダメージが待っているような気がしてならない。 》  津原泰水=やすみ
  https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1184681289787437056

『エトセトラ』ニ(閑人亭日録)

 加藤郁乎『エトセトラ』薔薇十字社1973年初版、3章を再読。第3章の緒言と冒頭その他。

《  笑いは涙よりもさらに神々しい、
  その上、さらに掴まえにくい。
                バタイユ 》

《 電話が鳴っていた。もしもし、そうです、違います、を繰り返すのはやりきれないが、今世紀一杯くらいはどこにどういようともこの妙に馴れ馴れしい家畜の鈴の音に憐れみを催さないではいられないだろう。 》 166頁

《 目指すホテルはタマ川に面していて、というよりは川のなかに身を投げだした恰好でで、仕方なしに建っていた。 》 171頁

《 いや、私が何でもござれのジーヴズ執事のような預言者めいた老人であるならばいざ知らず、ヌムールなどは、まだまだ青臭い比較文学の索引づくりか手内職の 詩人稼業にすぎないのだから、このまま進めばクラリッサをお菊やお梅の身の上よりもしあわせにできる保証はどこにもないのである。 》 204頁

 固定電話、多摩川べりの建物、ジーヴズ執事、世紀を超えて透視しているよう。

《 この種の話は、『ガルガンチュア 』や『トリストラム・シャンディ』がそうであるように、いくらでも書き延ばすことのできる融通性に満ち充ちているし、 セックスに終りというものがあったら一大事ともなるポルノグラフィにも似て、切りがないのである。 》 234頁

 団鬼六の大長編『花と蛇』『肉の顔役(正・続)』とか。

《 クラリッサはクレーヴに、バター茶用にふさわしい星間物質で作った茶碗を、ヌムールには二日酔いに効く宇宙ニンジンなどを約束したりする催涙喜劇を、 筆を抑えながら書くこと。 》 236頁

 この「茶碗」、この場面が映像化されたら北一明の耀変茶碗が相応しい。それにしても『エトセトラ』、わからん人には何が面白の?だろうな。大人の童話だから。

 朝、新幹線で東京駅へ。八重洲口に出てギャルリー・東京ユマニテの佐竹邦子展へ。東京駅へのもどり道で「TOKYO2021 災害の国」を見、東京駅北口自由通路を抜けて 丸の内側へ出る。駅前の広々した風景をしばし眺めやり、駅前の丸善へ。うわあ、本が一杯。当たり前だけど、心が躍る。ワクワク。三階は欲しい本だらけ。参った。 國分功一郎原子力時代における哲学』晶文社2019年初版帯付を買う。東京ステーションギャラリー岸田劉生展を見る。往復の新幹線から見る多摩川の河川敷は、 泥色一色だった。午後二時半過ぎ帰宅。しばらくして雨。
  http://g-tokyohumanite.com/exhibitions/2019/1015bis.html
  https://www.tokyo2021.jp/bizyututen/
  http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201908_kishida.html

 ネット、うろうろ。

《 台風19号に寸断された高速道路網や新幹線網を見て思うこと。これらの建設により自然に多大な負荷をかけてきた。そのしっぺ返しのようにも思える。 どれだけ自然を破壊し水系にどんな影響を与えるかわからない南アルプスを貫通するようなリニアの建設はやめてほしい、と思うのは非科学的でしょうか? 》  Koichi Kawakami
  https://twitter.com/koichi_kawakami/status/1184637827805401088

《 日本の血税で整備した水道インフラをフラン不企業に売国することを約束する麻生大臣。それを陰で操る竹中平蔵。イギリスを始め多くの国々で失敗した水道事業 だから、残るはカモは日本だけ。英国会計監査委は「PFI事業(民営化詐欺)で30兆円の国民負担」が増えると試算。 》 Nobuo Okamoto
  https://twitter.com/okamotonobuo/status/1184058031203483648

《 大村知事に同意します。本当に政府が主張するように補助金申請に手続き上の瑕疵があったなら、何故堂々と議事録を作成し、それを公開しないのか、 そして何故多くの良識ある人たちが、政府と言う公的な機関の運営がこの様な形でなされている事に異議を唱えないのかと思います。 》 米山 隆一
  https://twitter.com/RyuichiYoneyama/status/1184327783800922120

《 ①全力を尽くす
  ②先手先手で対策を打つ
  ③生命最優先で

  で、早くおうちに帰って
  ラグビーを見る。 》 温泉親父
  https://twitter.com/fedoronsen/status/1183936698599690242

《 天皇即位の恩赦で消費税増税が取り消しになったりしねえの? 》 ナスカの痴情ェ
  https://twitter.com/synfunk/status/1184059132099190784

『エトセトラ』(閑人亭日録)

 加藤郁乎『エトセトラ』薔薇十字社1973年初版、全3章のうち1章、2章を再読。第1章の緒言と冒頭その他。

《  あらゆる日々のなかで最も無駄になった日は、
  われわれが笑うことのなかった日である。
                     シャンフォール 》

《 現実に先立ってゆく思い出のなかを、尾を頭にして進む渡り鳥のひと群れが眺められた。彼女たちは明らかに未来方向から立ち戻ってきて、いま、過去的現在の 罠の方へ逆進化しつつあるのだ。そして、はるかな連峰の果てに沈んだ筈の太陽がまたしても姿を現してきて、あたり一帯を芝居気たっぷりな明るさのアンコールで 湧き返らそうと企んでいる。この土地では太陽でさえもが素直に沈み兼ねて、万物流転の約束をおもちゃ扱いにしているのだった。 》 7頁

《 眼からウロコがとれたといって喜んでいる手合いがいるが、眼から岩塩がとれる者もいれば、星の破片である隕石さえ取り出す者もいるのである。 》 36頁

《 空気に八つ当たりする適当な理由もないので、自慰線上のアリアを出たとこ勝負で掻き鳴らすしかないのである。なまじいな空気と逆説なかりせば、スキ焼が 焦げつくまでに自分の生涯を楽々と語り終えてしまう筈の、あの自然主義文学の偉大なる私がよみがえってくるかもしれないのである。 》 39頁

《 「見上げたもんだね、小説のマイナー性に気がつかない奴は薄馬鹿だが、マイナーな小説を発見できないのは本格的な馬鹿だからね。」 》 63頁

 第2章の緒言。

《 笑って肥れ   サミュエル・ジョンソン 》 82頁

《 「千歳世を厭えば、去りて上僊し彼の白雲に乗りて、帝都に至る、莊子さまはこうもおっしゃっておいでですね。あなたさまの観念連合には美しい飛躍ばかりじゃ なくて、敢えて筋を通そうとしない、抑えた勇気とでも称すべき胡坐をかいたニル・アドミラリの物質化現象さえ、おありなのですな。老生、残りのだく足的生涯は、 このような器量を備えられたお方に無条件で誇大的に捧げたい……と」 》 106頁

 この件は老馬サダキチの発言。12日の日録を参照。

《 私たちはとある洋風旗亭の前に辿り着いた。そこは、ナンジャと呼ばれるにふさわしいニルヴァーナの局所か関所のごとき店である。 》 128頁

《 ところで棒立ちになったままの客たちのあいだに挟まってひとりだけ、振り向きもしない地球儀のようにぴたりと坐っている白髪の老紳士がいるので、手眼鏡を作って 眺めると、おお誰あろう、やっぱりこのひとはデペイズマンの詩人のシューゾー氏であった。 》 130頁

《 「お初にお眼にかかります。サダキチと申しますヒン書生にございます。ご著書はかねてより拝見仕っておりましたが、咫尺の間にお眼にかかれまして光栄に 存じます」 》 131頁

 このあたりには瀧口修造や仏文学者の齋藤磯雄ら当時の錚々たる人たちが出てくる。ナンジャはナジャという店。咫尺(しせき)を初めて知った。ということは、 以前は読み飛ばしていた。サダキチのモデルはサダキチ・アルトマン(1867-1944)だと思う。机上には太田三郎『叛逆の芸術家  世界のボヘミアン=サダキチの生涯』 東京美術1972年初版。新刊で購入。

《 1867年(慶応2年)長崎で日本人を母、ドイツ人を父として生まれた。(中略)1890~1910年代ニューヨーク、グレニッジ・ヴィレッジでボヘミアン芸術家の王者と して著述および奇行・自由恋愛の生活を送る。(以下略) 》 カバー裏。

 微苦笑から大笑まで笑いの大陳列の綺語奇想博学大人の童話、といえばいいかな。以前読んだ時にはまだ青二才で、可笑しさ面白さの半分もわかっていなかった。 この歳になって大いにワカル、大いに沸く。引用紹介したい箇所が多すぎる。

 ネット、うろうろ。

《 今回の台風19号で東日本はふたたび、きわめて広範囲に渡って、とてつもないダメージを受けた。回復には相当の時間を要するだろう。 もう元には戻らないかもしれかい。今はまだ全貌が見えていないだけだ。 》 椹木 野衣 Noi Sawaragi
  https://twitter.com/noieu/status/1183585482938019847

《 3・11炉心融解を予言した医師が警鐘 台風に続く「噴火と地震」 /一志 治夫 》 現代ビジネス
  https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67239

《 平安期の文学、だいたい男女の仲の事書いてるんだけど、絶対本番は描写しないで「夜明けり」とかで誤魔化してるんだよな
  先生は「それが平安文学の奥ゆかしさです」って言ってたけど、俺は本番の描写は有料コンテンツだっただけじゃないかって最近思ってるんだ 》  ミステリオタな井戸本
  https://twitter.com/mmiki_q3mys/status/1184079300552613890

《 ありがとうもごめんなさいもいらない恩赦 》 綿野恵太
  https://twitter.com/edoyaneko800/status/1184397626919149573