一日空いたけど、「長いお別れ」から。
「結婚して五年になるとしたら、結婚したときは三十七でした。女についてたいていのことは知っている年齢です。たいていのことといったのは、女について何もかも知りつくしている人間はいないからです」14章
私なんざあ五十六になるのに中学生並みだ。美女に出会うと言葉が詰まる。
「一度私をやとおうとしたが、私は彼の申し出を承諾するほど困っていなかった。いやな野郎と思われるには百九十の方法があって、カーンはそれをみんな知っていた。」15章
私は十くらいしか知らないわ。
「あなたはいままで、私に指一本ふれなかったわ。妙な眼で見たこともなかったし、意味ありげなこともいわなかったし、手でいたずらもしなかったし──何もしなかったわ。つむじまがりで、皮肉で、意地わるで、冷たいひとだと思っていたわ」
「そのとおりですよ。──ときどきはね。」49章
私なんざあどきどきでふれられませんです、はい。ふれれば火傷します、私が。