握って見てるだけ

 昨夜、深沢幸雄氏から恵まれた盃を手にして……これは鑑賞用だと気づき、酒を入れるのを止めた。飲み遺しの赤ワインをグラスに入れてその灯りを通して鮮やかな赤と盃を見較べる。右手にワイングラス。左手に盃。盃の口縁はワイングラスとほぼ同じ大きさ。カッコよさそうと思って両手に持ったけど不便。盃だけをを持つ。時代劇で見られるように、親指と人差し指中指で側面を握り、薬指小指で高台を支える。指が半筒形の盃にぴったり密着する。握り具合がじつにいい。厚く掛けられた木賊(とくさ)色の釉薬が深く沁みる。これほど握り心地のよい盃は初めて。感動ものだ。もう一つの塩笥(しおげ)形盃は灰白色の釉薬がこれも厚く掛けられていて、これはこれで握り心地が別格。これが好きと、昨日見た来館者は感想を述べていた。高台も土も双方よく考え抜かれた用い方をされていて、見れば見るほどその奥深さに感服。赤ワイン一杯で酔いと覚醒がいっぺんに来た。
 昼前に礼状を認め投函。

 午後は源兵衛川の月例清掃へ。桜吹雪のもと五人で気持ちよい汗少し。ザリガニ、ヤゴなど。

 ブックオフ長泉店で二冊。歌野晶午「魔王城殺人事件」講談社2004年初版、奥田英朗「サウスバウンド」角川書店2005年4刷帯付、計210円。