うつうつひでお日記 その後

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で三冊。伊坂幸太郎ゴールデンスランバー』新潮社2010年20刷、泡坂妻夫『煙の殺意』創元推理文庫2010年再版、須賀敦子トリエステの坂道』新潮文庫1999年6刷、計315円。『トリエステの坂道』は、狐『野蛮な図書目録』で紹介されていた。

《 もしも今、この書き手が、書くことをやめてしまったなら、日本語表現の領域の一角で何かがひっそりと消えてしまうことだろう。当座は気がつかなくとも、あとでその稀有なこと、大切なこと、いとおしいことが分かるような何かが失われることだろう。連作エッセイ集『トリエステの坂道』の著者、須賀敦子はそう思わせる書き手の一人である。(引用者:略)その手堅く明晰でありながら読者の身体感覚までさわさわそよがせるような文章は、とても他の何かで代替させられるようなものではない。》

 古い石畳をハイヒールでコツコツと凛とした音を立てながら、静かに歩むような文章だと、以前思った。

 昨夜、NHKBSプレミアムでスペインのフラメンコ歌手を視聴。父親の伝統的なしゃがれ声に対し、娘は清い声の持ち主。歌うフラメンコもまるで違う。視聴後、不世出の女性フラメンコ歌手ラ・ニーニャ・デ・ロス・ペイネス La Nina de los Peines (1890-1969)のLPレコード『ペテネーラの伝説』ディスク・フジヤマ1989年を聴く。

《 録音はいずれも1930年以前と推定され、伴奏ギタリストは若き日のニーニョ・リカルド(1904-1972)を主に、》

 これはしびれる。この組み合わせは最高だ。ニーニョ・リカルド Nino Ricard は、最も惹かれるフラメンコ・ギタリスト。その演奏は「深淵を秘めた万華鏡」と言われる。

 吾妻ひでおうつうつひでお日記 その後』角川書店2008年初版を読んだ。彼の描く美少女はやたらツボにはまるけど、日記も同じ。たった一行《 日記付けてなかった。》も、なぜか病みつきになる面白さ。彼はマンガ以外に小説をけっこう読んでいる。

《 東野圭吾「赤い指」読了○。佳作。》
《 田中哲弥大久保町の決闘」読了△。田中さんのは「やみなべの陰謀」「ミッションスクール」が傑作だった。》
《 嶽本野ばら「変身」読了○。傑作。恐ろしい女性の本性がリアルに描かれていて爆笑。》
《 海野碧「水上のパッサカリア」読了○。主人公、ヒロインのキャラクターが深く描けている。》
《 マイクル・コナリー「終決者たち」上・下読了○。なんか主人公が事件を解決しにくくしてる気もするが、ボッシュだからいいや。》
《 ジェフリー・ディーヴァー「ウォッチメイカー」読了◎。判っていながらディーヴァーの罠に引っかかってしまう。後味も良い。》
《 木内一裕「水の中の犬」読了◎。傑作! ハードボイルドで哀愁がある。》

 木内一裕、知らない。探す楽しみが増えた。

《 HPの絵を描く。いつもリアルな色っぽさと、デフォルメした可愛さの狭間で悩む。》

 吾妻ひでおでもそんな悩みがあったとは。ネットで古本を見ていたら『オリンポスのポロリ(全2巻)』。「ポロリ」とはまあ。『オリンポスのポロン』だよ。

 それにしても、安藤信哉展は好評。一昨日来館された女性が娘さんを連れてきた。仕方なくついてきた娘さんは、絵に目を瞠り、俄かに活発になり、すごい、友だちに教えなくては、と。